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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#87

佐佐木 政治

おゝ神よ すべての存在に落ちた言葉
何億という細胞の中の一つに 
さらに何億という「  」を詰め込んだ数は
命の夕映えとなってぼくらの皮膚の下を照らす
そして夜明けは ぼくらの皮膚からはじまる 
内と外への別離の儀式セレモニー

まるで地球のリングの一点を 
西と東へ向かって歩み出すまえの
一者がはらむ最も遠い距離 
そして又一者は 旅と方角が消滅している豊かな終末

一者は同じ場所で二つの時間を持つ 
一者は同じ場所で無数の時間を持つ
一者は同じ時間の中で二つの場所を踏む 
一者は同じ時間の中で無数の場所を踏む

そして又 どんな言葉も 古代の地層から発掘されるのだ
創造という言葉はなくて ただ発見という言葉だけが
ぼくらにふさわしい鏡の前で


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<  




亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。