母たちのこと
私に母は二人いて、義母と実母です。
二人は大きな戦争の終わるころ1年違いで生まれました。
実母は膝が痛くて、思うように歩けません。
スタスタ歩けるようになりたくて手術をしましたが、結局手術前とあまり変わらない程度にしか歩けません。
難病指定されている病気にかかったのは60歳のときで、それ以来いくつかの病気をわずらいながら、生活しています。
脳梗塞もあって、そこから認知症も発症し、言葉がでにくくなり、物忘れもすすんでいます。
義母は、明晰な人で体も元気でしたが、愛犬を亡くしてから急速に物忘れがひどくなり、本人の不安も強くなっています。
電話が鳴り、「もしもし」というと、沈黙の後「○○さんですか?」と義母の声が聞こえました。
聞くと、義兄(義母にとってのもう一人の息子)の電話番号がわからなくなったとのことでした。
教えると、ついでにあなたの家の電話番号も教えてくれとのことでした。
電話をかけているのだから、番号はわかるはずですが、教えました。
記憶を失いつつある人に、周囲はそんなに優しくありません。
私も、含めて。
声を荒げることもあります。
この人たちの落ち度ではないと分かっていても。
二人とも戦後の混乱の中で幼児期、学童期を過ごし、大学に行きたかったけれど貧しさにそれを阻まれた人たちでした。
苦労に苦労を重ねてきて、最晩年、物語で言えばフィナーレを迎えた二人は、静かに耐えながら時を過ごしています。
そうやって、難しい状況を老年に迎えることも人生の中の一つの宿題なのでしょう。
宿題をがんばっている二人をなんとか支えたいと思っています。
#エッセイ #暮らし #宿題 #老い
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