またしても、真理に近づきすぎてしまった。
去年、NYで初めてエンパイアステートビルに昇った時に思った。

わあ。夜景、めっちゃ綺麗。

念のため、四方の窓からの景色を撮影し、ちょっと外にも出る。
ああ。うん。綺麗だ。寒いからいいや。中で。

ようし、四方を回るぞぉ！
さて、一周してしまったな。
あれ、10分くらいで終わったな？

入場料的には、元を取れたのかな……。
見逃した景色もあるかもしれないね。
仕方ない、もう一周しよう。
東西南北をしっかり見ないとね！

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ーーーさ、見終わったぞう！

あれ……？
おかしいな。
時計が全然進んでないの。
中学の時の社会の時間みたいに進んでないの。
時間だけを消費するために、そんなには興味ない記念コインを買おうか迷ってみる。
いらね。
続いて、展望台にいるカップルで一番ベタついている奴を探す。
気付いたら東西南北それぞれにいて、東の方が数が少ないから、西とバランス取るために「増えろ！」とか念じたり。
エンパイアステートビルのゆるキャラを勝手に考えたり。
塊魂っていうゲームみたいに、ボールでNYのビルを巻き込んでいったら、最初に始めるなら東西南北のどこから始めたら有利か、とかいろいろ考えながら、ゆっくり歩いたの。

それでも時計が全然進まないの。
全然なの。

子供の時に、ばあちゃんとサンシャイン来た時も同じこと思ったな。
窓ガラスに「ここから富士山見えますよ」とかの絵が描いてあるけど、「うん……」って思って、数秒くらい見るけど、まあ、それ以上はないんだよね。
富士山はどこまでも雄大で美しいんだけど、五分は持たないんだよね。
みんな展望台できっちり時間使えてるのかな。
そう思ったら、やっぱり、エンパイアステートビルでも、二週目くらいしている家族のお父さんが、ぼんやりとフロアの天井を見ながら歩いていた。

水族館は魚が動くからそれほど飽きないんだけど、展望台で「あーっ、たっぷり見たねえ」って満喫したことってないんだよなあ。

ある？