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【コラム】なぜ国家は軍事力を持ち同盟を結ぶのか?(2024年4月12日)

『さかたのニュースまとめ』のコラムとして、『なぜ国家は軍事力を持ち同盟を結ぶのか?』をテーマに執筆した。
国家や戦争の歴史として古代や中世まで遡ることはせず、現在の状況を考えることで筆者自身、読者の理解が深まることを目的としている。

ご一読いただけると幸いである。


はじめに

刻一刻と変化する国際情勢、そして近年も紛争が頻発している。

その紛争がどういった条件で生起するのか?

非常に専門的で難解である。
そこで、浅学な筆者がよく用いる〈パワーバランス〉の考え方による説明を試みたい。

国家の関係や地理条件を容易にイメージできるよう、日本周辺のパワーバランスを考えてみる。

前提条件

戦争が起こる背景と条件

筆者の考える〈戦争が起こる背景と条件〉を以下に示す。

1.隣国同士は利害が一致しない限り敵対する。*1
2.2国間のパワーバランス*2が崩れたとき、一方が武力行使に出る(宗教戦争*3など例外もある)。

*1 特に大陸国家(ランドパワーの国)は生存圏を広げるために膨張政策(領土拡張)をとる傾向にある。
*2 同盟など協力国がある場合はその総力となる。
*3 軍事力の優劣より宗教的なイデオロギーが優先されることもある。

各国の軍事力(パワー)

パワーバランスを説明するため、各国の軍事力(パワー)を把握する必要がある。
しかし、兵員数、保有兵器、国家財政など、それらを考慮することは非常に困難である。
そこで、GFP(グローバル・ファイヤーパワー)*4が発表している世界の国別軍事力ランキングを参考にする。

*4 世界中の軍事力を調査・分析し発表している。

【2024年】世界の軍事力ランキング(GFP)
 1位 アメリカ
 2位 ロシア
 3位 中国
 4位 インド
 5位 韓国
 6位 イギリス
 7位 日本
 8位 トルコ
 9位 パキスタン
10位 イタリア
(以下略)

出典:世界の国別軍事力ランキング

軍事力(パワー)の数値化について

各国の軍事力(パワー)による序列がわかったところで、それらを相対化し数値で扱う手法をとる。

この記事では、パワーバランスを簡略化して理解するため、便宜上の数値となっている。
そのため、実質的なものではない点に注意されたい。

数値化の結果

さて、今回は「日本周辺のパワーバランスを考えてみる」が目的であるため、実際に日本を含む周辺国や同盟国の軍事力(パワー)を数値化してみる。

アメリカ(1位) → 10
ロシア(2位) → 10
中国(3位) → 10
韓国(5位) → 4
日本(7位) → 4
インドネシア(13位) → 3
オーストラリア(16位) → 3
台湾(24位) → 2
フィリピン(34位) → 1
北朝鮮(36位) → 1
マレーシア(42位) → 1

※1位〜3位を【10】、5位〜10位を【4】、11位〜20位を【3】、21位〜30位を【2】、31位〜を【1】に分類した。

次項からこれらの数値を使用し、パワーバランスの説明をする。

日本周辺で考える

〈中国による台湾侵攻〉に関するパワーバランス

近年、中国は近海、近隣国へ軍事的圧力をかけ緊張が高まっている。
特に台湾侵攻が懸念されており、さらに中国は尖閣諸島の領有を主張している。
もし中国が台湾侵攻に踏み切ることがあれば、日本も他人事ではない

以下に台湾周辺の地図を示す。

出典:東京新聞

先に定義している軍事力(パワー)を確認しておこう。
※中国、そして同国から見た敵対国を対象とする。

【中国10】【台湾2】【日本4】【アメリカ10】

中国が台湾に侵攻する際、全戦力をぎ込むわけではない
以下のように仮定しよう。

[中国3]

この場合、中国は自国の戦力(パワー)[3]を上回る反撃を受ける可能性があれば台湾を獲ることはできないため侵攻を断念するであろう。
そう考えたとき、台湾の軍事力(パワー)は【2】であり、中国は侵攻することで武力行使により台湾を獲得できる。

それではなぜ(現時点で)侵攻しないのか?

近隣国、そして強大なアメリカの存在があるからだ。

出典:産経新聞

つまり、以下であればパワーバランスがとれる。

[中国3]=【台湾2】+[アメリカ1]

中国がさらに戦力(パワー)を増強した場合は以下になる。

[中国4]=【台湾2】+[アメリカ2]

中国は台湾侵攻が確実に成功する見込みがない限りは実行に移さないであろう。
これが抑止力である。
※中国の言う武力行使に依らない「平和的統一」にも警戒しなければならない。

〈尖閣問題〉に関するパワーバランス

日本と中国も尖閣諸島の問題を抱えている。
そして、尖閣問題と台湾侵攻は同時に語られることが多い。
先ほどの地図を見ると懸念の理由がわかるであろう。

出典:東京新聞

尖閣諸島での有事では、四方を海に囲まれている日本も全戦力はぎ込めないため、以下のように仮定しよう。

[日本1]

この場合、[中国1]まではパワーバランスがとれるが、それ以上であれば武力行使を許してしまうであろう。
そういった場合に〈日米同盟〉が効力を発揮する。

[中国2]=[日本1]+[アメリカ1]

このように、同盟があることで中国の武力行使を抑止できていると言える。

出典:日経新聞

おわりに

大部分を簡略化しているため、現実にそぐわない点をお詫びしなければならない。
しかし、パワーバランスの概略としては理解いただけたであろうか。
題名の『なぜ国家は軍事力を持ち同盟を結ぶのか?』に対して「戦争を避けるため」という一つの答えが導き出される。

昨今は日本の〈反撃能力の保有〉〈統合作戦司令部の創設〉〈AUKUSへの協力〉など、軍事に関わる報道が増えている。
それらを“パワーバランスをとる”という観点で捉えることも、国防を考えるキッカケになると考えている。


X(旧Twitter):@sakata_takuro

Bluesky:@sakatatakuro.bsky.social

©️さかた拓郎

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