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174. ユニコ 【アニメ映画】

先日「シリウスの伝説」でサンリオ映画デビューをしました。

次に観たサンリオ映画は「ユニコ」。
前にモノクロ版ですが漫画も読みました。(モノクロ版は中途半端なところで終わっていたけど、カラー版はどうなんだろうか。いずれちゃんと読みたい。)
ユニコを知らない方はこの記事を読んでいただければ概要は掴めるかと思いますが、手塚治虫の描いた「自分を大事に思ってくれる人を不思議な力で幸せにすることができるユニコーンの子供・ユニコ」の遍歴を描いたお話です。


映画1作目のプレーンユニコは、原作のエピソードを継ぎはぎして作られています。
取り上げられているのは悪魔の子と、子猫のチャオの話。
2匹とも漫画と変わらず可愛く、特にチャオの歌が実際の曲になって流れているのが個人的には嬉しい。

でも漫画とは違う部分も大いにあって、まずのっけから違います。
原作では女神の嫉妬が原因で仲良しの女の子と引き裂かれてるところから始まるのですが、映画では神様たちの「何だか気に食わん」くらいの感情で急に荒野に置き去りにされるのです。
あまりの理不尽さと神々のキャラクター性の薄さに、ユニコやユニコを連れていくよう命じられた西風の精の切なさが真に迫って感じられないのは残念でした。同時に漫画のプロットの上手さも改めて認識することとなりました。

また、本来は登場キャラクターたちは自分の世界でだけ生きていて、その世界を超えて登場することはないのですが(西風の精に運ばれてユニコだけが移動していく)、映画では悪魔の子が時空を超えて登場したり、映画向けのプロットになっていました。
チャオを館に招く男爵も、原作ではもっと陰気で残酷なブラックユーモアに富む話だった気がするので、「最終的に巨大な悪魔化して戦う」設定は見栄えを重視してのことでしょう。
映像化が難しかったのか、尺の都合か、随所に現れていた手塚治虫の遊び心がほとんど削られてしまっていたのもがっかりポイントでした。

アニメーション自体は「シリウスの伝説」同様滑らかに動くフルアニメーションを採用。シリウスの美麗で圧倒的な映像に比べると些か見劣りするものの、自然の緑が多くて全編を通して綺麗な画面でした。


2年後に作られた「ユニコ 魔法の島へ」は、恐ろしい魔法使いククルックによって生き人形にされてしまった人や動物を元に戻すべく奔走するユニコとその仲間たちの物語。
冒険・バトルを前面に押し出した、よりエンターテインメント性の強い仕上がりです。
シナリオは手塚治虫だけれど、映画用に作ったもので漫画版にはないストーリーの模様。ただし登場キャラクターの一匹であるスフィンクスの子供は原作にもいます。
※この先ネタバレ多めです!

この悪役ククルックは、幼少期に見てトラウマになったという人も多いらしく、画像検索して頂ければ分かる通りかなり怖いです。目がギョロッとしていて、体が球体のとんぼみたいな感じ……?
見た目だけでなく思考や発想も狂気的で、「怖がられ嫌がられるのが好き」とか言っているし、人々を生き人形に変える理由もサイコパス。
世界一のお城に住んでいる魔法使いになりたい
↓だから
生き人形を組み立ててお城を増築する
ですからね。

ただこの言動の裏には「かつて悪役ばかりさせられて捨てられた操り人形だった」という過去が存在し、作中ではその隠された寂しい気持ちをとっかかりにユニコが説得を試みるわけですが。
ユニコも、ユニコが共に行動している少女・チェリーも、ちょっと軽率で無鉄砲すぎるんじゃないかと、無粋なことが気になってしまいます。愛と勇気で何でもどうにかなるわけがない。ましてや相手はサイコパス……。
何というか少女漫画テイストな夢見がちな思考と、なせばなるの少年漫画的根性論が掛け合わされたような印象です。
ご都合主義なわりに、シリアス要素もそこそこあってあまり楽しめませんでした。

こちらはフルアニメーションではないようですが、映像の面白さは健在です。寧ろもろファンタジー世界だからこそ、1作目より遊びやデザイン性が高くなっています。
特にククルックがおもちゃを空中に遊ばせているシーンの美しさは、美術的な鑑賞にも耐えうる出来です。
ファンタジーに見せかけて丸太がエンジンのような動力で飛ぶとか、ファンタジーに見せかけてSFっぽさもあり科学と幻想の融合も観ていて面白かったです。

話にはあまり関係ないものの、お山の大将の猫のヘッドフォン、ちょっと試してみたいです。左右の耳当ての部分が小箱になっていて、中に小鳥と蛙が入っているんです。
それで合図をすると二匹が鳴いて、鳴き声を楽しむことができる。すぐ耳元でさえずりが聞こえたらかなりうるさそうですが、実際はどうなんでしょう。
いずれにせよ頭につけた小箱で鳥と蛙が生きている、なんてシチュエーションにはちょっぴり惹かれるものがあります。

これらの映画の前に、劇場公開されなかった短編「ユニコ 黒い雲と白い羽」があります。内容は漫画にあるストーリーで、長編映画1作目と監督も一緒なので、映画同様、漫画のダイジェスト版なのかなと推測していますが、観ていないのでなんとも。


原作でも、映画でも、最後は必ず去っていくユニコ。
ユニコの旅に終わりがあるのか、わたしはまだ知りません。

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