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採用では何を大事にするか? -壺中人事塾での学びシリーズ

9月から参加している壺中人事塾、3ヶ月間の学び期間の半分が過ぎ折り返しました。この1ヶ月半、一番大きく変化を感じているのは自分の学び方について。1ヶ月半前まで私は本当にお恥ずかしながら本が読めなくて(小説は大好きだけど仕事のための勉強ができない・・・w)、集中力が続かない自分がとっても嫌いでした。今は勉強のための本も読めるようになったし、またその内容を使ってアウトプットする機会も増えました。こうしてnoteを書いたり、タイミングよくセミナーに登壇させていただくご縁をいただいたり。1ヶ月半前の自分も十分忙しかったはずだけど、勉強をせずに何をしていたんだろう、ちょっと思い出せません。

さて塾の学びを毎週書いてきたこのシリーズ、今回のテーマは採用です。

会社というものが産声をあげた後、一番最初に出てくる人事課題は採用ではないでしょうか。また、自分で採用する側を担当したことはなくても、採用「される側」を経験したことは会社員なら全員ある。しかも私個人としても、採用は15年ほどの社会人人生の中で7年くらい、ほぼ半分を占めるテーマで、特に思い入れの強い領域でもあります。

そんなわけで塾生のみなさんもこのテーマはすでに持論のある方が多くて、講義でのディスカッションはとっても盛り上がりました。noteを書くにあたっても、ネタが多すぎて、何をどのように書こうかなかなか決められないという幸せな悩みに数日間頭を抱えておりました。ぎゅっとまとめて、お届けしてみたいと思います!

採用の計画をどう立てるか?

壺中人事塾のテキスト「図解 人材マネジメント入門」の採用の章の最初のイシューは、採用計画をどうつくるか、ということです。ここでは、採用計画の前に、そもそも「要員計画」をつくろう、という話から始まります。

要員計画とは「一定期間において必要な人員を確保するための計画」のこと。でも必要な人員を確保するための計画といっても、採用計画とイコールではありません。人員確保の手段は採用以外にも、配置転換、育成、外部委託もあるからです(曽和利光「人事と採用のセオリー」P120-121より)。これらの打ち手の優先順位を決め、その中で採用という手段でいつまでにどれくらいの人員を確保するのか、これが採用計画になります。

要員計画については私もリクルート時代は作ったことがありませんでした。というのもここはリクルートでいうと経営企画の部門が主に担当していて、採用部門は経営企画と連携して採用計画をつくる立場にありました。というわけでお恥ずかしながら7年ほども採用担当だったのに自分が実務として要員計画をつくったことがなかったので、このnoteを書くにあたって、まずここのインプットを増やしてみることにしました。

「図解 人材マネジメント入門」でも、この要員計画については、株式会社人材研究所 代表 曽和利光さんの書籍「人事と採用のセオリー」に詳しいと紹介されており、同書と、曽和さんが登壇されたイベントのレポートがとても参考になりました。

これらの内容を総合すると、要員計画をたて、そこから採用計画を立てる際の考え方は以下のように整理されています。

  1. 組織に必要となる人のタイプ、レベルとその構成比、つまり「人材ポートフォリオ」を決める

  2. 各セグメントの人材が現状どのくらい在籍するかを概算。現状と、理想とのギャップを把握する

  3. そのギャップを埋めるための施策、つまり「人材フロー」を決める。新しい人をどのチャネルからどれくらい入れ(採用)、どのように組織内で動かし(配置)、どのようにどれくらい出すか(代謝)を決める。

上記のような流れの中で、人材フロー戦略、つまり新卒採用率、中途採用率などの目標値を設定すると、具体的な採用目標数、求める人物像、採用対象者の動機付け、などが半ば自動的に決まる、とあります。そしてこの人材ポートフォリオと人材フローは人事の一貫性を実現する手段であり、人事と採用のコアである、とも(曽和利光「人事と採用のセオリー」P23-27)。

さて、ここまでのステップを踏んで採用計画を立てることができている会社は世の中にどれほどあるのだろう・・という気がしますね。でもこのような議論があってこそ、事業と人事・採用施策がしっかりと接続されるのだろうと強く感じます。

外せない採用要件/面接で重視することの話

今回の講義で扱われた問いの中で特に印象的だったのが、
・あなたの会社で外せない採用要件は何ですか?
・あなたの会社では面接で何を重視していますか?

この2つでした。

1つ目の、外せない採用要件について塾生から出ていた観点は
・課題設定力
・コミュニケーション能力
・よく働くこと(結果を出すためにハードワークを厭わない)
など色々と分かれましたが、一番多くの人で意見が一致していた観点があります。

それは「誠実さ」。その日講義にいた参加者の半数ほどがこのワードを挙げていました。私自身も、いま人事コンサルタントとして最も工数をかけてご支援している企業のバリューにこの言葉が入っていることもあり、ここは外せないものとして挙げました。

ドラッカーも、「マネジメント【エッセンシャル版】: 基本と原則」の中で"Integrity"という概念を紹介していて、「真摯さ」と訳されています。ドラッカーはこのIntegrityがない人を採用してしまうと組織が壊れると述べているそうです。

そして上記で挙げた問いの2つ目、面接で何を重視するかについて。ここも、
・自分より優秀な人を採ること
・言語情報以外の直観
・1人で決めず、多数の社員で会うこと
など色々ある中で、その場の議論で特に盛り上がったのが
「候補者が絶対に想定していない質問をすること」
という観点。
ここは私もかなり同意です。面接のために用意してきたような杓子定規な回答ではなく、その人が本来どんな価値観を持った人なのか、それがわからなければ、カルチャーフィットも何もないと思うのです。

丸腰で面接を受ければいいと思っているわけではありません。面接の事前準備として、自分が本来どういう人間なのかを極力内省して整理するということはとても大切なことと思っているのですが、そうして整理された結果としての素直な自分像と、面接のために企業に迎合して作り上げた自分像とは、全く別物だと個人的には思っています。

なので私は面接をしていて、なんか用意してきたことばかり答える感じのする方だなあと思ったら、まっすぐそんなふうに候補者にお伝えすることもあります。
「ごめんなさい、もしかして、そのお話、面接でよく話されてますか?違ったら申し訳ありません、なんだか話慣れていらっしゃるような感じを受けたので・・・今日は事前に用意されてきたことじゃなく、今の本音のお気持ちを教えていただきたいので、そんなスタンスで今の質問にもう一度お答えいただいてもいいでしょうか?」
みたいな感じで・・・

ちなみに、こんなふうに言って嫌な顔をされたことはなくて、むしろ、ちゃんと話を聞いてくれる人だな、という印象を持っていただけることの方が多いかなと思います。終始、「あなたのことをもっときちんと知りたい、この場では何を言っても私は驚かないし大丈夫です」というあり方で面接をしているからかなと。

放課後より:経営者と採用

講義後のお楽しみの雑談タイム「放課後」も引き続き採用の話が止まらず、夜が明けるまで話せそうな勢いでしたw

放課後で一番話題になったのは、経営者が「狂気の沙汰」と言えるほど採用にコミットしている組織は本当に強い、という話。

この人と一緒に働きたいと思って5年くらい同じ人にずっとずっとアプローチしていた経営者の話や、カンファレンスで出会った理想的な候補者に「今夜話しましょう!」とすぐアプローチして「先約があるので」と断ると「何時に終わりますか」と聞かれ、そこで答えた予定時刻になったらすぐ連絡して追いかける経営者などなど・・・・

この記事の結びとして、リクルートキャリア社の社長だった水谷智之さんの話を書きます。もう大昔の話だし、リクルートキャリアはもうないから、時効かなと思って書くのですがw、水谷さんも採用には「狂気」という言葉ですら足りないと思うほどのこだわりがある方でした。

リクルートが分社化してリクルートキャリアができた時、リクルートグループ内で最も人を大事にする会社として、社員全員で新卒採用に参加する「全社員採用」を実現させようという動きがありました。当時、同社の総合職社員は1200名ほど。この1200人全員を面接に動員し、8000人の学生を面接するという構想でした。面接官・学生双方の動員数は、前年度と比較して10倍以上。一応言うと採用目標が10倍以上になったわけじゃないのに、です。水谷さん以外の経営ボードメンバーは全員反対し、役員会は紛糾。3回の起案を経て、最後は水谷さんの固い意志で決議。当時の新卒採用担当は私を含めて4人。1200人も面接官いてどうやって目線合わせするのか?そもそもそんなに大量の面接をどうやってオペレーションすればいい?通常業務のある社員をどうやって前向きに面接に来てもらう?課題が山積すぎて、しかも決議されてから面接開始まで準備期間が半年もなくて、吐きそうになりながら「今日やらないと死ぬことリスト」みたいな名前のto doリストをつくって毎日追いかけてました。あれは本当に、狂気の沙汰、だったなあ・・・

でもそのものすごく痛みを伴う変革を経て、社員の採用に対する姿勢が大きく変わったことは本当に忘れられないのです。あんなに反対していた経営ボードの皆さんも、「今日から採用面接があるので、当然ですが役員会よりも面接優先で。役員会と面接の予定が重複する人は役員会欠席しましょう」などと会話してくれていたり。「採用を事業として扱う会社で、ここまでの本気度で採用をやっていることはすごく誇りに思えるし、お客さんにもうちはここまでやってますって胸張って話せます」と言ってくださる社員もたくさんいました(ちなみに、毎日吐きそうだったけど、この取り組みは絶対に誰かの未来を変えるという確信と、圧倒的信頼で結ばれた仲間がいてくれて、気持ちはとても元気でした)。

水谷さんの狂気。すべての価値の源泉は人である、と信じる我々だからこそ、採用を会社で一番大事なこととして扱い、大事なことだからこそ社員全員でやるのだという強いリーダーシップ。私の採用担当としてのDNAにこの出来事が強く強く刻まれているように思います。


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