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孤独をテンポよく描く、村上春樹『ノルウェイの森』

「ねえワタナベ君、私のこと好き?」
「もちろん」と僕は答えた。
「じゃあ私のおねがいをふたつ聞いてくれる?」
「みっつ聞くよ」

村上春樹『ノルウェイの森』

こんなセリフを言ってみたい。

今回紹介する作品は村上春樹さんの『ノルウェイの森』です。


『ノルウェイの森』は様々な人間の生と死、孤独を描いた作品です。
救いようのない寂しさを抱えた人物たちが登場します。

社会にあまり関心を持たず、一人でいることが多い主人公、ワタナベトオル。
幼馴染で恋人だった男、キズキが亡くなり、本当は愛していないトオルをキズキの代わりにしている直子。
ピアノの才能があったが、ある日突然ピアノが弾けなくなり、結婚後、療養所を居場所にしているレイコ。
両親からの愛を十分に受けれなかったため、お腹一杯になるぐらいの愛を欲している緑。
他にも様々な人間の生と死、孤独が描かれています。

しかし、そんな作品世界とは対称的に、軽妙な文章や語り口でテンポよく物語が進みます。
最初に挙げたセリフもそうですが、他にもこんなセリフがあります。

「ここがなんだか本当の世界じゃないような気がするんだ。人々もまわりの風景もなんだか本当じゃないみたいに思える」
 緑はカウンターに片肘をついて僕の顔を見つめた。「ジム・モリスンの歌にたしかそういうのあったわよね」
「People are strange when you are a stranger」
「ピース」と緑は言った。
「ピース」と僕も言った。

村上春樹『ノルウェイの森』

この軽快でキャッチ―な文章が、作品にテンポの良さや面白さを生んでいると思います。


今回は村上春樹さんの『ノルウェイの森』を紹介しました。
もしよければ手に取ってみてはいかがでしょうか。

「ピース」




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