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交差する糸を読者がたどる連作短編『ノウイットオール』 これは五感に呼び掛ける5色の物語。

こんにちは。
面白くて「これちょっと読んで!」と誰かに食い気味に言いたくなる新鮮な作品を読みました。久しぶりに低い声で「マジか」が飛び出した『ノウイットオール』。今回のnoteは、私の個人的なこの作品のお気に入りポイントをご紹介します。


第30回松本清張賞受賞作 森バジル著『ノウイットオール』



ジャンルおばけがお気に入り

なんと言ってもこれでしょう。今回の作品は連作短編でも珍しい多ジャンルでの展開。もはやジャンルおばけ。小説としてこの先こうなるだろうと無意識な予想をしながら読んでいたら、突如SFやファンタジーの世界に読者も登場人物と手を繋ぎ一緒に飛び込んで行くのです。しかも物語は連鎖して繋がっているから、その連鎖の糸をたどる読書体験がもれなくついてくる。『ノウイットオール』は作者の“これを書きたい”がつまった玉虫色の宝石箱でした。

今に合った表現がお気に入り

このような多ジャンルのお話であっても一貫して登場人物が2023年末らしい発言をしていてその会話のさじ加減が絶妙でした。これだけ幅広い広がりの中でも全く違和感なく読むことができるのは、作者のチカラでしょうしココが個人的に私のお気に入りポイントです。この瑞々しい時代の価値観は、きっと2023年にしか描けない瞬間をぎゅっと閉じ込めたものかもしれません。

音が聞こえるところがお気に入り

夢中で文章を読んでいたら、場面から音が何度も聞こえました。これによって立体的な読書の新しい感覚があって音は『ノウイットオール』の個性なのだと感じました。さらには色も鮮やか。これは五感に呼び掛ける5色の物語です。

他にもまだまだお気に入り

他にも過不足のない登場人物の背景描写に納得し大きく頷いたり、2回目が読みたくなるストーリーになっていて嬉しかったりとまだまだお気に入りポイントは沢山あります。様々なしかけが余韻を生むため、機会がありましたらぜひ“あなただけが知っている”体感をして余韻も感じて欲しい作品です。

さあ、行こう新しい読書体験へ。

いってらっしゃい。




お読みいただきありがとうございました。



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