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『白河夜船』吉本ばなな著

初の吉本ばななさん。
ずっと気になってはいたけど 
何だかんだ手を出した事がなく
つい最近、友達からお薦めしてもらって
読んでみました。

あらすじ

いつから私はひとりでいる時、こんなに眠るようになったのだろう──。植物状態の妻を持つ恋人との恋愛を続ける中で、最愛の親友しおりが死んだ。眠りはどんどん深く長くなり、うめられない淋しさが身にせまる。ぬけられない息苦しさを「夜」に投影し、生きて愛することのせつなさを、その歓びを描いた表題作「白河夜船」の他「夜と夜の旅人」「ある体験」の“眠り三部作"。

(Amazonより引用)

眠りと死について色濃く書かれた
3つの短編集です。

といっても、重いものではなく
それぞれに自分の中の闇と向き合ったら
最後には立ち直っていく、というようなお話です。

こんな言葉で纏めてしまいたくはないけど
どういう感じかと聞かれたら、
一言、エモい小説です。

なんとなくゆったりと読んでいたい小説。
読んでいると吸い込まれるように
一緒に眠くなってきて、
ただ読み進めていくと
濃く深い夜から青白い光の朝を迎えるような感覚。


最近、江國香織さんの『落下する夕方』という
本を読んだのですが、
纏う空気感がとても似ている印象でした。


今回は3つのお話の中の1つめ。
白河夜船についてです。

第一章 白河夜船


親しい友人の自殺、植物状態の妻を持つ男性との不倫を続ける女性の心の移ろいが切ないお話。


まずなんて読むの?というところから始まり
意味があるなんて事も知らず、
また一つ言葉を覚えたことに嬉しさを覚えます。

白河夜船とは?

白河夜船(しらかわよふね)
①ぐっすり寝込んで、何が起こったか知らないことの例え
②諺:知ったかぶりをする事
昔、京都を見たふりをする人が地名の白川(または舟の通わない谷川の名とも)のことを問われ、川の名と思って、夜船で通ったから知らないと答えたという話によるといいます。
(コトバンクより引用)


本を読むときに、なんとなく
その本の雰囲気にある曲と合わせて聴くのが好きなので調べてみたら
羊文学というアーティストが歌っている『白河夜船』という曲がヒット。

聞いてみると、曲の雰囲気もとっても合うし
歌詞もなんとなくそれっぽい、、。

オルタナティヴロックでとても好きな感じでした。

まだ羊文学さんのことをしっかり知らないので
これから調べて曲も聴いていきたいと思うのですが、文学ってついてるし
この吉本ばななさんの白河夜船を題材にしてたらとてもいいなぁと勝手に繋がりを求めてしまいます。

いっそ、この人たちが出す曲
全て何かの文学、小説に繋がっていたら
凄く面白いなぁと勝手に期待笑

それくらいこの小説に合う曲なのです。
小説のいいところって、
その話を元に知らないことを感じることや学ぶことだったり体験できることだと思うんですけど、
それ以外にもどんどん派生して知らないものを知っていける可能性がありふれてるところですよね。

と、話がだいぶ脱線しましたが、
ここから先はネタバレ含みます。


この話の主人公はひたすら寝てます。
それには友人の死や植物状態の妻を持つ男との不倫を続けていることに、ずっと悩んでいるのも原因の一つです。

ひたすら寝て、どんどん眠りが深くなっていって
起きれなくなっていったり、すぐ寝てしまったり、ずーーっと眠い感覚が続いてしまう状態に。ある時目を覚まそうと公園にいくのですが、そこでも眠ってしまい夢である女性にあいます。

「今すぐ、駅に行きなさい。そして、アルバイトニュースをかうの。その中から、ごく短期間でいい、アルバイトを見つけなさい。とにかく立って、手や足を動かす仕事を。そうしなさい。別にアルバイトをすることだけをすすめてるんじゃないの。そんなことじゃなくって心が、疲れ切ってしまっているのよ。」(73〜74頁)

この台詞がとても印象的でした。
そしてこの言葉をきっかけに変わっていきます。

そして、ほんの短い期間に自分の中のいろいろなことが、いつの間にかどれ程退化しているかを思いしります。

背筋のようなもの、いつでも次のことを始められるということ、希望や期待みたいなこと…。
いつの間にか私が投げてしまっていたこと、自分でも気づかずに。(78頁)


こうして、少しずつ立て直していくのです。
アルバイトを始め、規則的な生活を行うことで。

「私の内にはいつの間にか健やかな気持ちがよみがえってきてるように思う。日常に疲れてしまった私の心が体験した小さな波、小さな蘇生の物語にすぎなくても、やっぱり人は丈夫なものだと思う。ひとり自分の中にある闇と向き合ったら、深いところでぼろぼろに傷ついて疲れはててしまったら、ふいにわけのわからない強さが立ち上がってきたのだ。」(88頁)


私も経験がありますが、
落ち込んで、やる気が出なくなって
悩んで、落ち込んで、ナイーブになって
という時期はもちろんあり、
よく分からない不安で泣いてしまったり、焦ったりとしっかり堕ちてしまいます。

ただ、美味しいものを食べ
美しいものをみて、好きなことをして
朝もしっかり起きて、しゃんとすることで
ふと、気分が晴れていることや
立ち直ることってあります。

意外と堕ちているときって
それができてなかったりするんですよね。

この話を読んだときに、
そういうことってあるよなぁって共感できて
背筋を伸ばすことって、立ち直ることって
こういう事が大事なんだなと改めて思ったお話で
凄く好きなお話でした。

自分が体験したことではないのに、ばななさんの表現の中に自分とリンクするところが不思議とあって、知らないうちにすっと引き込まれて気づくと時間がたっている。そんな本です。

そして、少しばかり、心が疲れていたけど、そんなとこからすっと物語の世界に漂わせてもらった感じ。心をすこしほぐしてもらえたような気がします。

最後に

この世にあるすべての眠りが、等しく安らかでありますように。(90頁)


補足ですが、
調べたところ2015年に安藤サクラさん主演で映画化されているようです。監督は若木信吾さん。

こちらもまた視聴してみようと思います!

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