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Alinea Ep.II

限界と感じてるうちは、まだ余裕がある...


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これは毎月の労働時間。
AMチームへと移り、部門シェフとなるまでの7ヶ月間の日々。

仕込みチームへ移った直ぐ後に、1人新入りも入ってきた(僕自身も新入りだが)
AMチームリーダー・ホルヘ・自分・新入り
の4人でまわしていくこととなった、想像以上にハードな毎日だけれど覚えることが多く充実していた。

アリネアで1年もつ料理人は1%以下だった
当時、1年以上いるのは4人
総料理長 Bagale(現 退職)・料理長 Simon(現 総料理長)・部門シェフ Justin(現 Next 副料理長)・AMコミ Jorge(ホルヘ)

ホルヘは、ヒスパニックの移民系で英語があまり通じないが、オープン当初から約10年といる最長老的存在
料理はできないが、鳥を捌いたり、出汁用の骨を用意したり、言われたことを教えてあげると何でもする頼りになる男だ

90席ある大箱だが、大雪で交通網がストップする2月を除き、退職するまで連日満席だった。
当時、VIPコースは約30品〜35品
普通のコースで約20品〜23,4品ほど
全ての仕込みは100人分毎日準備する。

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毎朝AM05:00にキッチンへ入り、仕込み開始。
4人しかいないため、1人1人が請け負う持ち場の仕込み量がかなり多い。
リーダーは主に納品チェックとまかない作り
ホルヘは、鴨を週2回120羽捌いて、出汁の用意もする
その他の仕込みを僕と新入りでやっていた。
主に、ソース・ピュレ・肉や魚の掃除・テュイル類・煮込み系・パウダー・全ての持ち場のガルニチュール(付け合わせ)・野菜や果物のカット、そして雑用類。

最初の1週間は、毎日PM24:00くらいには終わり、僕はそれから残り部門シェフの横で営業を手伝ったりしていた。
帰るのはAM01:40くらいだったろうか。

翌週休み明け...
 「寝坊か?」...
リーダーが来ない。
寝坊がちだったリーダーの代わりにいつも僕が鍵を持っていたため、仕込みは問題なく時間通りに始めれたが、7:00を過ぎてもまだ来ない。

8:30ごろシェフが来て伝えると、どうやら飛んだ(逃げた)らしい
引き継ぎも何もせず...

リーダーがやっていた仕込みをどうするか、なんて聞く方がバカだったけど動揺していた僕は思わず聞いてしまい、

シェフから「So? Who’s gonna do that?(っで?誰がやるんだよ?)」っと
当たり前の事を聞くまでも無かった、僕に選択肢は無いし、元よりそのつもりなのだから
「Me chef! I do chef!」

ホルヘだけ落ち着いていた「いつもの事だよ」っと言わんばかりに薄っすら笑みを浮かべて。

新入りと2人で「オレらはやるぞ!負けねぇ!」っと気合いを入れた2週間後の休み明け...こいつも消えた

90ものプロジェクト(仕込みリスト)を毎日やっていく中、当日、部門シェフたちが店へ来る前に終わらせていなければいけない事、火口や鍋の数の問題で、午前中に終わらせておく事、営業までに必要な事、シェフから突然の指令、前もって仕込み出来る事とプライオリティを頭の中で整理していく。

AM04:45キッチンへ入り、出汁・ソースなど火にかけるものを全て仕込み始めながら、ミキサーやジューサーを全部セットし、1度に始めていく。
パルメザンチーズのテュイルは、サラマンダーを使って40秒後にひっくり返し乾燥させ、油で揚げ膨らませる。
これは、野菜や果物のポーションと同時進行でいける。
要領を得た僕は全てが順調に進んでいく。。。が、それでも間に合わない。
休憩なんてありえない、まかないすら食べる時間もない。

外国でたった1人外国人として働く以上、
「同じ失敗は2度としない」
そう肝に命じた。

ただ、この時の状況はミスを許されないとか、そういう問題ではない。
何か1つミスをしてしまうと、その日の仕込みが全て狂い間違えなく間に合わなくなってしまう。

毎日終わり、キッチンを出るのはAM03:00ごろだった。
店から自転車で8分の距離に住んでいたが、何度道端で倒れただろう...
部屋へ着くなり玄関でブッ倒れ、30分、40分くらいでまた眼を覚まし、シャワーを浴びて仕事へ向かう。

レッドブルへの貢献度はハンパなかった。
1日だけあった休みの日には3合炊きの炊飯器で炊いたご飯を一晩で食べてしまい。
それが1週間分の食事だった。

1週間1食で生活していた僕は、普段250mlのレッドブルを1日3本から5本飲み、合間に60minという栄養ドリンクとコーヒーで生きていた。

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これの60minというのがあった。

僕の身長は181cm

体重が48kgしかなかった僕は、休みの日に水など買いに外へ出ると、たまに警察にヤク中と間違われパトカーに手をつき身体チェックされたもんだ。

知っているだろうか?
本当にキツイ時は、キツイと感じる間も暇も無いことを...

それでも充実した日々を楽しんでいた。
この時の1日、1週間は6ヶ月にも1年以上にも感じるほど密度の濃い時間だった。

キャリアが長ければ良いってもんじゃない
あなたの10年が3ヶ月にも満たないなら?
スカスカの人生なんて◯◯喰らえだ

生きている実感を肌で感じ、帰宅中の誰もいない道路の真ん中で、身体の中が空っぽに感じ、音が消えていく感覚が堪らなく気持ちよかった...

To be continued...


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