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実は「1ドル360円」時代よりも日本円は「円安」状態!?

「金融市場」には、大きく分けて「株」と「債券」と「外国為替」の3つが存在します。「株式市場」と「債券市場」には、僕たちのような投資家が参加しています。

「外国為替市場」には、投資家以外にも、投資を目的としたものではなく、海外から商品を購入したり、日本の商品を海外に売ったり中小大の各社企業や、海外旅行に出かける個人、そして基本は銀行間取引ですので、各銀行が市場に参加しています。銀行間では昼夜問わず為替の取引をしているので、「24時間エニタイム取引」。「株」や「債券」のような、取引時間というものもありません。

例えば、僕たちが生まれ育った日本の通貨「日本円」。どこかの誰かが日本円を買いたい。どこかの誰かが日本円を売りたい。別の国の通貨を売って日本円を買いたい人たちが多ければ、自ずと日本円の価値が上がって行くし。日本円を売って、別の国の通貨を買いたい人たちが多ければ、自ずと日本円の価値が下がって行く。

米ドルや他の通貨もしかり。これが、「24時間エニタイム取引」されているのが為替市場です。そして今僕たちは、「1ドル150円」という「円安ドル高」のご時世にいます。ドルを買い求めたい人が増え続け、日本円を売りたい人が増え続けた結果、このような「1ドル150円」にドルに比べて円の方が安くなったわけです。

そんな中で、これに歯止めをかける手段としては。「神の手」的な、「財務省」の号令と「日本銀行」の実行による「為替介入」という方法があります。しかし、実は、「日本円を安くするための為替介入」と「日本円を高くするための為替介入」では、仕組みは根本的に異なります。

かつてのような、「円高トレンド」で、日本円を売って安くしようとする際は、日本円を借りてきて、そのまま為替市場で日本円を売却してドルを買うことができます。僕たちが取り組んでいる「銀行融資でお金を創る」にも近しいところがありますが。「借りてきたお金」は、いくらでも調達可能です。

一方で、今のような「円安」トレンドで、日本円を買って高くしようとした際は、ルールが異なります。この場合は、日本政府が持っている「米ドル」の実弾でしか、日本円を買うことができない。

大体150兆円分くらいしか米ドルを持っていないので、その「実弾数」を世界各国の思惑を持った御方々に見透かされて、日本円を購入しようとした瞬間に、ピンポイントの「円売り攻撃」を一斉にしかけられるという危険性もある。だから、「円安トレンド」を止めるための為替介入というのには、かなり慎重になる必要があるようです。


1ドル360円時代よりも実質的に円安

今の「1ドル150円」と同様に、過去に1990年にも「1ドル150円」時代があり。2022年の時の「1ドル150円」タッチの時に約32年ブリ・・・というお話がありましたが。日本円が実質的に強いのか?弱いのか?

円の本質的な実力値を図る「日本円の実質実効為替レート」では、(国際決済銀行「BIS」調べ)「1ドル=360円」の超円安だった1970年以来のなんと53年ぶりの低水準になってしまっています。日本円の実質実効為替レート(グラフ) https://kitasociety.com/share/240303.jpg

日本も日常的に、様々な国とその通貨の国・銀行・企業・個人と為替の取引をしていますが。「日本円の実質実効為替レート」はドルやユーロなどさまざまな外国通貨と比べた日本円の実力を示し、内外の物価格差を考慮した対外的な購買力を表しています。名目為替レートを貿易額に応じてウエート付けし、物価変動分を除いて算出されています。

日本が世界に誇った「メーカー大国時代」であれば、「実質実効為替レート」は、日本メーカーが生産した商品の、輸出競争力の向上につながりますが。既に今日時点では、海外への生産拠点移転も進んだ後、さらに、小麦、スマートフォン含めた多くの必需品的なモノやサービスまでをも、海外製になって来ている今では。「輸入コスト増」を意味します。

「輸入企業」にとっては、収益悪化の要因につながって、商品への価格転嫁が進むことで、物価上昇による実質賃金の低下を通じて、家計を圧迫する要因にもなります。そして今は、繰り返しますが1ドル360円だった時代よりも「実質的に円安」「過去最低水準」であると、言えるわけなのです。かなり深刻な状態であります。

「1ドル360円」時代より「ハワイが高い!」

例えば、僕も生まれたばかりの頃、両親に連れられて、家族初めての海外旅行として「ハワイ旅行」に行ったのが、記憶にはありませんが、写真には残っていますが。当時は、民間人の海外旅行が認められたばかりで。「1ドル360円」という、超円安ドル高の中で、ハワイでホテルに泊まったり、食事をしたり、お買い物をしていたことになりますが。

あれから45年以上経過した今日、僕はこうしてハワイにいますが。今では「1ドル150円」で、当時の「1ドル360円」から見れば、数字上は「円高」に見えますが。実際に現地でお金を使う時に、「1ドル360円」時代よりも、「1ドル150円」時代の今の方が、全てのモノ・サービスが高く感じてしまうということです。

「確かに高い!」日本円に換算してみると、食べても、飲んでも、遊んでも、全てが「高い!」。日本円がドンドン弱くなって行くということは、海外でお金を使いたく無くなるし、そもそも海外旅行にも行きたくなくなってしまいます。たまたまの時期的なものかもしれませんが、今回も羽田発〜ホノルル行きの便に乗りましたが。日本人観光客は少ないし、空席も多かったです。

「ハワイ高い!」この恐怖心は、日本人のハワイ渡航にかなりのブレーキをかけているのを感じます。本来であれば、「米国の物価」が上昇し、「日本の物価」が横ばいであれば、外国人が安い日本に旅行に行きたくなりますし。海外の人たちが、日本メーカーの商品を安く買えるので、海外に一斉に商品が流れる。

日本からの輸出も増える。自ずと「円高」に流れていくはずなのですが。今の問題は、「実質実効為替レート」ベースで「1ドル360円」時代よりも、歴史的な「円安」の日本という、状況にも関わらず。「アレ、誰も日本円を買いに来ない・・・」という状況に陥ってしまっているのです。

「構造的な問題」による「円安」

この背景にあるのは、日本メーカーが2011年以降に、一斉に海外に生産拠点を移し始めたことも大きな要因として挙げられるようです。「東日本大震災」をキッカケに、この流れが加速したようです。僕も2010年末まで、日本の東証一部上場のメーカーの海外駐在員として働いていましたが。確かに、その前後に、新たに海外に生産拠点を増やす的な話があがっていました。

そして、これは僕が在籍中でしたが、僕が商品を販売していた中国本土でも、海外の輸入にはとても厳しく、結局中国市場で本格的に商売するには、中国本土の現地生産ではないとダメ的な制度が一斉に始まって、その頃は、中国現地生産→中国本土出荷という新しいスキームを構築していました。

こうした流れは、中国本土にとどまらず、米国・欧州各国も、自国保護的な動きが本格的にスタートして、「我々の国で商売するなら、 我々の国に生産拠点を移しなさい!」という状態が経済大国を中心に世界各国に広がりました。そうすると、日本国内で生産した商品を海外に輸出・・・という流れが弱くなった。

今では、「ケイタ式」国内仕入・海外輸出など、僕たち中小零細な個人商店系が、日本の商品を個別配送で海外に発送している規模の輸出が目立つくらいです。大手メーカーほど、「生産拠点を販売現地に」という流れを崩せないので、せっかくの「円安」が活かせない状態です。さらに、日本は「東南アジア」などの、ブルーワーカーを移民として大量に受け入れたりはしません。

いざ、日本円が安い「日本で大量生産」を実行しようとしても、人手が全く足りない状態です。さらに追い打ちをかけているのが、「日本のサービス収支」です。Google、Amazon、Apple、Microsoft、Netflix・・・これらの米国テック企業のサービスを使っているのは、ココにいる全員に身に覚えがあると思います(ドキっ)。

毎月何かのサービスにお金を使っている予算の大多数を米国産のサービスにお金を払い続けていると思います。この「米サービス」に、日本国民全員がお金を払い続けている、その規模も年々膨らんできてしまっています。この「サービス収支」の国家レベルの赤字は、残念ながら「外国人のインバウンド旅行客」が日本に来て、お金を使っただけでは、帳消しにできない状態になってしまっています。

日本の伝家の宝刀だった、モノづくりは諸外国に出してしまい。サービス、食料品、エネルギー、全て輸入に頼っている。この流れに抵抗貢献してくれるのが唯一「インバウンドの外国人観光客」。そして、ゼロ金利政策が続いた日本は、対ドルでは「短期金利差」もかなり開いている状態。

これでは、「日本円の実質実効為替レート」ベースの「円安」は、止めることはできないのではないでしょうか?「構造的な問題」こうした状況下で、本当に日本で日本円のお給料をもらい続け、日本円で預貯金することを続けて良いのか?今一度、真剣に考えてもらいたいと思います。

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