見出し画像

どうか勝手にお幸せに。 /恋愛小説



昔から人をなかなか好きにはならないタイプだった。


でも、熱心に連絡をしてくれる人や、
その行動に優しさを感じる人、
不器用でも一生懸命な人と時間を積み重ねることで、
いつのまにか好きになる。そんな子だった。


だから、彼を一瞬でも好きかもしれないと思ったのは、
ただの気の迷いで間違いだったと今なら思う。

でもあの時の私は、誰でもいいから側にいてほしかった。
心が弱っていた。


だから大事にもされていないのに甘い言葉に勘違いしてしまった。
振り回されてしまった。
そう思う。

今となっては心底どうでもいいので、
どうか”勝手に幸せになってくれ”って思っている。

だから連絡なんてしてこないでほしいな~なんて思いながら、
ストーリーに反応してくるDMの名前をみて、ため息をついた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

出会ったのは楽に出会える某アプリ。
メンタルが落ちていた私はただ寂しくて、メッセージや電話で構ってくれる人がほしい。
会う気はないけど構ってほしい。

そんなくそみたいな理由でやっていた。


そんな思考停止状態でやっていたからだろうか?

好みとはかけ離れている君とマッチングした。


でも見た目やプロフィール欄の内容とは反して、
丁寧な文章と適度に返してくれる頻度に私ははまっていた。

それは実際に会っても変わらなかった。


適度に連絡をくれて興味を持ってくれるかのように質問してくれた。
〇〇に今度行こう!と提案をしてくれて、
家にも頻繁に行くようになっていた。


印象は変わらなかった。



いや、違う。
変わらないなと私が思いたかっただけだ。

弱っていた私は会ってくれる彼に依存をしていた。
この人以外優しくしてくれる人はいないかもしれないと思い込んでいた。

だから見ないようにしていただけだった。


それに彼は私に一緒にいてほしいと言うから。


だから(仮)彼女くらいの気持ちでいたけれど、
それが間違いだった。


彼が私に興味を持つような行動をしたのは、
初めて会ってから約1ヶ月も経たない期間だけだった。

その後、彼から会いたいとは言われなくなり、
会いに来てくれることもなくなった。

連絡はほとんど来なくなり、週末家に呼ばれるだけだった。
どこにも出かけることはない。


基本的に誰かと連絡をとっておきたい彼が私に連絡をしない。
つまりはそういうこと。
他もいるのだとわかっていた。

それでも私は彼に縋り付き時々会いに行く生活を選択していたのだった。


そんな生活が約2ヶ月ほど過ぎたころ、
私は通院していた成果や友達の支えもあり
体調が戻りつつあった。

正常に頭も体も動くようになったことで、
私はこの都合よく使われている関係に目を向けられるようになっていた。

そしておもった。


「この人といる私、楽しそうじゃない。」


その日を境に私は自ら連絡をすることをやめた。
きた連絡にもすぐ返すことはなく会う機会をなくすようにした。

そんな行動をしていたらあっという間に
彼と私の関係を自然消滅を迎えていた。

彼のいない生活はあっという間に馴染んで、
さらには笑顔のある毎日を私にもたらしてくれた。


そう思っていたのに、その2ヶ月後の事だった。
週末の飲みのストーリーに1通のDM。

「〇〇に行きたいお店あるから、一緒にいきたい。飲もうよ」って。


こんな時でも会いたいとは口にしない彼のプライドの高さに
少し笑ってしまったが同時に少し会ってみたいと私は思った。

だって自ら手放したくせに今更どうしたんだろう?って。
ストーリーで楽しそうにする私に嫉妬でもしたんじゃないかなって。


なんていうのは言い訳で、
本当はただただ嬉しかったから私は彼に会いに行ったんだ。

だって好きだったから。


こんな時の人間の本能というのはとても愚かで
IQ2レベルの判断しかできていないと思う。
まあ、そんなものなのかもしれない。


そんなこんなで飲んでいた友達に別れを告げ、
この後行くはずだった常連の店に断りをいれたあと、
私は真っすぐと待ち合わせの場所へと向かった。


階段を駆け上がった先に見えたのは彼。


久しぶりに会う彼はやっぱり素敵だった。
今まで付き合った人とは雰囲気が異なるけれど、
それでも魅力的に私には見えた。

その後、夢中でいろいろ話した。
最近の事や仕事の事、はまっていることとか、、、、

すると彼は静かに恋愛の話をしだした。

もしかしてこの後告白される?と勘違いしてしまいそうな
内容や思いを側でただただ聞いていた私。

途中から舞い上がっていたようにも思う。



でも思いあがっていたのは私だけだった。



深夜2時。ふいになった携帯電話。
慌てて着信を消す君。

その後店に入ってきた足音が聞こえた。
そして言った。


「なんで、いきなり別れるなんていうの?」



~~~~~~~~~~~~~~~。



その後の記憶はあまりない。
気が付いた時にはお金を作の上に置いて店を飛び出していた。

追いかけてくる気配はない。


私はどうやら彼の勝手に浮気相手になっていたようだった。


腹が立った。
騙されていたことや都合よくされたこと、
なんかもういろいろ腹が立つけど

一番腹が立つ理由はたった一つ。


あんな男を好きだと思ってしまった”自分”


だからこの瞬間決別することにきめた。
さよなら、今日までの私。


さよなら、一瞬でも好きだった君。
「どうか勝手にお幸せに」



思いきり顔を拭った後、私は真っすぐと歩き出した。





この記事が参加している募集

恋愛小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?