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旅行や地方創生は「推しが尊い」モデル!?

こんにちは、SandS林です。
今回の「UXデザイン&ビジネスデザイン視点から見るスポーツの可能性」というテーマを、旅行や地方創生の視点で考察してみたいと思う。

かくいう僕はあまりスポーツをじっくり観戦するタイプではない。
どちらかというとハイライトやベストプレー集を好むタイプだし、野球にしろサッカーにしろ特定のチームに肩入れして応援するほどのファンだったことはない。Jリーグが発足した1992年、小学校2年生の時、単にロゴがかっこいいからという理由でジェフユナイテッド市原がなんとなく好きで、鹿島アントラーズをライバル視していたぐらい。

一方、SandS高井が鹿島アントラーズの大ファンなのだが、他にも少なからず何名かの友人は特定のチームを応援している。
僕も特定の応援するチームがあるといいなと思いつつ、なかなかきっかけがない。

個人の性格として、あまりひとつの事柄に熱中することがない、いうこともあると思うんだけど、多分特定のスポーツチームのファンになれないのは僕以外にもいると思う。これは、アーティストやアイドルグループにも当てはまる。つまり今っぽくいうと「推し」がいない状況なのである。

「推し」とは何か

さて、この「推し」がいない状況を語る以前に、そもそも「推し」とはいったい何なんだろうか。
ここは無理せず記事を引用させていただくが、電通報「令和女子の「推し」を因数分解してみた。~令和女子をファンにする五つのポイントとは~」の電通ギャルラボの辰野氏解説によると、

「好き、応援する人・モノ」=「推しメン」を意味する「推し」という言葉。今から約10年前、AKB48が一世を風びした時代から一般的に使われるようになった、もともとはオタク用語だった言葉

とある。
つまりアイドルグループを応援するファン、特にオタク文化から生まれたということである。既知の通りであるが、この推しという概念は現在多様に進化している。箱推し、推しメン、神推しなど言葉が生まれ、最近では「推ししか勝たん」とか「推しが尊すぎてつらい」という言葉がネットスラングを超えて使われるようになった。

この「推し」の心理とはいったいなんなんだろうか。
ここもあっさりと引用をしてしまおうと思うが、Adver times「ユーザーは「消費者」でなく「共体験者」 N=200から始まる推しマーケティング」の中山氏の主張によると、

“ユーザーは消費者ではなく、共体験者である”

ということである。
つまりこれはファンは一般消費者である一方、コアなファンである「推し」は「共体験者」であり、よりインタラクティブ志向であると定義できるかもしれない。
言い換えれば、ファンは分け隔てのない扱いをするのに対して、「推し」は特別扱いにしたい、して欲しいという心理である。
それを今のファンビジネスの在り方だとするなら、本稿の主題である、地方創生や旅行とスポーツの可能性を、地方のコミュニティデザインに活かせるのかを考察してみたいと思う。

「推し」が持てない僕らの心理

地方創生や旅行とスポーツの可能性の本筋に切り込む前に、そもそも「推し」がいる/いないとということについて考えてみたい。

ここまで「推し」の話をしていると「推し」がいる方がいいのではないか、と「推し」がいなことを悲観する感じもあるが、別に積極的に無理して「推し」を探す必要はないと思える。

それはどうやって「推し」ができるのか、ということを考えてみれば分かるが、いきなり「推し」になるケースもあるが、ファンから徐々に「推し」になるケースも十分考えられる。
つまり「推し」がいない僕らでも、何らか好きなものがあり、それに対して今から「推し」が持てる状態がいつ来てもおかしくない、むしろその状態を作ることが今からのコミュニティデザインの本質になるかもしれない。
言い換えれば「『推し』リザーブ」(=ライトファン)がたくさん存在する、というのがSNS社会なのかもしれない。ある日突然目に止まったinstagramerが「推し」になることだってある。

移住の体験から「推し」について考える

さて、ここから、本題である「推し」という概念を旅行や地方創生に活かせないか、ということについて考えてみる。

僕は最近、東京と京都という2拠点生活を始めた。完全に京都に移住してしまいたい気持ちもあったのだけど、今雇用されている会社が東京で、どうしても東京に住拠点を持たないといけなくて、結局2拠点生活になった。

なぜ京都に移住することになったかというと、京都に仕事があるとか、実家があるとか、友人が多いとか、そういう環境要因ではなく「単に京都が好き」という理由だけである。
最初のきっかけはコロナ禍で海外に行けない中、2020年秋になんとなく友人に誘われて京都に行ったことである。コロナ前、京都は「観光地価格」「外国人が多くて混雑」というあまりいいイメージを持っていなかったのだが、コロナで状況は一変したのは周知の事実であろう。
これだけ歴史的・文化的なコンテンツがあり、かつ混雑していない、物価も東京より抑えられる環境は、日々の、少なくとも東京の息が詰まる自宅軟禁仕事生活から解放されるだろうという期待があった。そして僕は始めて京都に訪れたとき、その時からすでに数泊延泊して東京に帰ったのであった。

そうして、僕はこの京都に住んでいる、つまり京都は僕の「推し」になったのだが、ここに至るまでにはファンである時期がある。
2020年の秋に来て以来、月1ペースでは京都に来ており、拠点を構える決意をしたのが今年の6月。8月から2拠点生活を始めており、つまりは晴れて「推し」の一部となり、共体験者となった訳である。

「推し」と旅行・地方創生

もし、この記事をどこかの地方自治体の方が読んでいたとしたら「京都だから」というかもしれない。確かに京都は歴史的・文化的にコンテンツが多く、推されるだけの理由は枚挙にいとまがない。

例えば沖縄とか北海道とか、コロナ禍の移住や複数拠点の検討先に挙がる=旅行・地方創生のインパクトになるだろう。でも、他の地域はそれをただ羨ましいと思って指を咥えていていいわけがない。

改めてここで「推し」の経済規模を考えてみたい。先述の中山氏の別記事「1人あたり消費額は約10倍!人々が熱狂する“推し”とは?」の記事によると、より「推し」の世界はニッチになってきているという。そして経済規模でいうと、今やマスカルチャーよりもニッチカルチャーの方が圧倒的に経済規模が大きいことが下図で示されている。

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あの「アナと雪の女王」のキャラクタービジネスの市場規模が50億円に対して、「ラブライブ!」はなんと439億円である。
つまり京都の移住をマスカルチャーだと考えると、よりニッチな都市でも大きな旅行・地方創生の経済的なインパクトを生み出せる可能性を感じる。それが「推し」の強さであり、ビジネスである。
この可能性をコミュニティデザイナーは見逃していいのだろうか。

スポーツは「推し」となれるか

このように都市にコンテンツさえあれば「推し」が訪れて経済的インパクトを出せるかもしれないという仮説に基づくと、その共体験者となれば移住だってあり得るだろう。必要なコンテンツは、極論すれば推されればなんでも良いはずである。

その時、スポーツは都市を推す理由になれるだろうか。
答えは多分YESだと思う。映画の聖地巡礼がブームだった昨今、例えばサッカーのスタジアムは「推し」からしたら聖地だろう。
聖地でさまざまな(共)体験ができるという理由で週末2拠点生活が始まるのではないだろうか。問題は「どんな共体験ができるか」だ。
鹿島アントラーズは副業人材を募集していたが、それを手伝うことで鹿島アントラーズを運営する共体験者となれるかもしれない(ちなみにSandS高井は応募したらしい)。

一方で、この共体験のコンテンツがないままに、「交通費や滞在費を補助するからこの都市に来て働いて欲しい」というのはお門違いである。
「推し」はお金が欲しいのではなく、お金を使いたい人たちなのである。
消滅可能性都市が今やるべきことはその補助金を「推し」ができる体験に投資することである。都市のコンテンツは急造することができない。それならばスポーツなどの今あるコンテンツ資産を共体験化することができるのではないか、を検討したい。

僕らなりのアイデア

「そんな事例どこにあるんだ」と言われると難しい。成功した事例がないから、むしろ今取り組むべきなんじゃないかな、思っている。だからいくつか僕らなりのアイデアを考えてみた。
*どれもコロナ対策は必須とした上で。

甲子園期間中移住プラン
甲子園期間に兵庫県西宮市に移住し、甲子園の外野席はいつでも入り放題の移住プラン。甲子園は根強いファンがおり、毎年「推し」を探し、応援するためにスタジアムに訪れる人も。近くの空き家などを一括でリノベして甲子園期間+αで貸し出すことで西宮市の魅力を感じてもらえる。

大相撲巡業プラン
大相撲の巡業に合わせて東京、大阪、名古屋、福岡の各場所期間中に運営を手伝いながら移住できるプラン。例えばオンラインでの配信をするようなデジタルインフラエンジニアとか募集してみては?

馬の調教プラン
競馬もまたひとつの「推し」ビジネスであると思う。北海道などの広い大地でリモートワークをしながら週末は馬の調教や飼育を手伝える、なんだったら馬の乗り方、勝ちそうな馬の見分け方ももっと分かるかもしれないし、「推し」のジョッキーとも知り合えるチャンスがあるかも。そういえば「ウマ娘 プリティーダービー」の経済効果っていくらぐらいあるんだろうか。

などなど、色々壁打ちさせてください!

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