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1歳が覚悟を決めた瞬間に立ちあったので、やめてよかった。

子育て支援ひろばでは、さまざまな親子がくる。行っても良いし、二度と来なくても良い。イベントに参加してもしなくても良い。
それは、よく来ていた子のお話(個人情報特定を避けるため、少し変えています)。

その日は、イベントで足型をとる日だった。

足型は、母達に人気のイベントだ。

その時間は比較的やりたい子が多くて、「トルトル!!右も左もなんなら手もとりたい!」という子もいる中、唯一ヒナくん(仮名)だけが、警戒していた。
絵の具を見ると、気分は100メートルくらい遠くに行き(お部屋内はそんなに広くないが)、「ナイ」と言って、でも、気になって気になって、ママが「やりたくないならやらなくても良いよ」と言っても、覗いては半泣きで、後ずさる。そんな姿。

こんなとき、どうする?
子の、この瞬間はないからと、足型とる?
かわいそうだから、とらない?

「ひと思いに、やっちゃって下さい」という母も多いし、それなら、私はなるべく負担ないようさらっとパッととってあげるのだが、
無理にしなくてもいいよーとは、伝えていた。

そのお母さんは、「せっかくだから、ぺったんしないー?」と声をかけるも、我が子が自分でくるのを待っていた。
正直、私の子だったら、抱いちゃうだろうなというところで、ずっと待っていた。

そして。
「諦めます」
と、笑顔で言った。

その一週間後。
再びヒナくんとママがやってきた。

ヒナくんが「あし」と言って、ある場所を指差す。
それは、前に足型をとっていた場所。
「あし」
これはもしや!ママと顔を見合せ、あわてて絵の具を準備する。

なんと、この間どこまでも下がって行っていたヒナくんが、広げたシートの上に来たではないか!!
そして、足を上げるではないか!

「実は、あの日うちに帰ってから、ずっと「あし」って言ってたんです。とりたかったんやーん」

だっこされて、落ち着いて、足型はほんとにきれいにとれた。
堂々とした足型が、ママの手によって飾り付けられると、ヒナくんはずっと「あし!ぺったん!」と、得意気に言っていた。

すごいなぁ。

きっと、入り口入るところで、彼は覚悟を決めたのだ。今日はやるぞと。
あの日、やらないと自分で決めた。そして、やればよかったなと自分で思い、今日、自分でやると決めたのだ。

一歳だって覚悟を決められる。

あの時、無理矢理やって泣いていたら、彼は「絵の具が嫌いなのね」とか、「ベタベタするもんね」などと決めつけられて『足型をいやがる子』になっていただろうし、
足型を見て「あの時泣いたよねー」という思い出だっただろうし、
何より彼もひろばで無理矢理させられたという思いが残っただろう。

でも、ママがちゃんと待ってくれたから『足型をいやがる子』でなくて、『覚悟を決め再び来て、達成した子』になった。
かっこいい。
まだ一語文しか話せないこんなに小さな人が。

すごいなぁ。

何度も思いだしては、自分はこの小さな人達を信じて理解しようとしてあげられているのか、反省する。
そして、ごまかさず、我が子に委ねたお母さんの、待つ姿勢が本当にかっこよかったなと、思うのだった。

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