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旅のスケッチ

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かつて旅で描いたスケッチを綴る「旅のスケッチ」ほか、旅に関する投稿をまとめました。
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記事一覧

旅のスケッチ ダバオへ

青年海外協力隊に応募しようと思ったのは、海外で働いてみたいという気持ちからだった。勤めていた会社が倒産して同じような職種につくのもなんだかな、と思っていたときに、半ばモラトリアムのような不純な気持ちで選んだものだ。誰かを助けたいというような高尚な気持ちはあまりなくて、今までの専門分野を生かしつつ、今までと違う環境に身を置くことができる協力隊に魅力を感じていた。 協力隊は、イメージでは汗水流して発展途上国で井戸を掘ったり、畑を耕したりするのだと思っていたけれど、実際には教師な

旅のスケッチ レーの冬、デリーの春

こちらは、インド編、ネパール編に続くふたたびのインド編です。 カトマンドゥからデリーに向かう飛行機がハイジャックのために飛んでいないという噂をポカラで聞いて心配していたけれど、飛んでいないのはエア・インディアだけで、ロイヤルネパール航空は普段通り予約できたので安心していたら、旅行会社のミスでチケットのフライトナンバーと時間があっていなかった。しかも、勝手にリコンファーム(予約の再確認)が別の時間でされていて、大いに焦ったのだけれど、当初の便にキャンセル待ちで無事乗れてことな

旅のスケッチ ネパールの雹

こちらは、インド編からの続きです。 インド国境の町、スノウリで同行の友人は発熱。でも、何もない国境の町にいるよりは、次の目的地、ネパールのポカラでゆっくりしたほうがいいだろうとバスに乗る。 スノウリからしばらく走ると緑の山が迫って来る。村を抜け川を渡り、ネパールは人の顔も風景も日本のようだ。やがて山道に入ると突然スピードダウン。ツーリストバスなのに普通のネパール人も乗って来るようで、しばしば停車する。バスは段々畑を縫うように、のどかな風景の中をぬけていく。空がだんだん青く

旅のスケッチ 一度は印度へ

スナフキンが好きだ。持ち物を最低限しか持たず、音楽を奏で、自由に好きなことをして暮らす。誰しも一度はそういう、旅暮らしに憧れるのじゃあないか。若かりし頃の私ももれなくそうで。 ちゃんと勤める会社があり、住むにも食うにも困らない、何不自由ない暮らしだからこそ、そういう自由に憧れていたんだろう。 そんなある日、勤めていた会社が倒産した。給料の未払いもあったけれども、失業保険は出るし、帰れる実家はあったし、あまり心配はしていなかった。そもそもその会社に一生勤めたいと思っていたわ

キャンプは帰ってからも楽しい

キャンプへ行く前は、行く予定の場所の地図を見て、どんなところか想像する。 現場では、そこがどんな場所なのかをただ観察し、体で感じる。 瀬と淵で温度の違う水、谷を渡る風、湧き上がる雲、月明かりとそれを反射するクモの目玉。アブとの戦い、ヒル地獄、沢ガニ、小さな魚、時には走り去る鹿や猿。そういうものに出会いたくて、感じたくてキャンプに行くのだけれど、もちろんそれだけで十分楽しいのだけれど、 帰ったら、そこの地形や歩いた場所、見つけたもの、面白かったことを一枚の絵地図にする。 こ

旅のスケッチ 終わりたくない旅

どういう経緯でお遍路に行こうということになったのかもう思い出せない。それくらい前に、高校時代からの友人とふたりで自転車遍路をした。 特に悩み事があったということではなかった気がするけれども、それなりに将来への漠然とした不安のようなものはあったのかもしれない。お互い、美大を出た後も好きな創作の道を模索して数年を過ごしたのち、自分のやってきたことを生かせると感じた会社に就職していた。 旅の行き先にお遍路を選んだのは、決められたポイントめぐれば四国をぐるっと回ることができて、の

風景をつくる手仕事

ほとんどの日本人がそうだと思うけれど、棚田が好きです。 私が育った場所では大きな川沿いにどこまでもまっすぐな車の通れる農道が続いていて、両側には一面に田んぼが続いていました。秋の台風のシーズンにはたまに、あふれそうになった川から越流堤を越えて流れてきた泥水をためる遊水池としての役割も果たしていた大きな田んぼは多分、そう古くない時代に整備された農地で、春から秋にかけてトラクターやコンバインが活躍していました。春には水が張られて田植えの頃には初夏の青空を写し、緑色の稲がいつしか

旅のスケッチ 千住大橋とお稲荷さん

旅先でスケッチをするようになったのはいつの頃からだろう。 旅スケッチをするようになったのは、せっかく訪れた空間を記録しておきたいと思ったから。写真とは違って、少なくとも絵を描いている間はその場にいて、観察をすることになるので、一瞬を切り取る写真と違って時間経過が絵の中に描きこまれるのがよいと、当時の先生が言っていたのを聞いて始めたような気がする。私は美大で環境デザインを学ぶ学生だった。記憶力に全く自信がない私が、場を記憶にしっかり刻み込ませる手段として、スケッチをするように

世界一周自転車旅!

私がnoteをはじめようと思ったきっかけは、友人のお父さんの若い頃の旅日記が投稿されると知ったから。それがこちら。 50年前の世界一周旅行記! しかも、自転車旅だという。 かくいう私も子どもの頃から世界一周にあこがれていて、昔は旅好きだった。今でこそ、住んでいる市内からほぼ出ない生活だけれど、そうなる以前、あちこちを見て回るのが大好きだった。自転車旅行は、主に輪行(列車などで移動して、そこで自転車を組んでサイクリングすること)というちょっとずるい手段だったけれど、よくしてい