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元道職員SOGIハラ訴訟 第5回口頭弁論期日について 2022.8.31 10:00-

2022.8.31  札幌地方裁判所

①原告準備書面の陳述

令和3年(ワ)第1175号 損害賠償請求事件
原 告  佐々木カヲル
被 告  北海道ほか1名

準備書面(3)の要旨陳述書
2 0 2 2 (令和4)年8月29日
札幌地方裁判所 民事第2部合議係 御中
 今回原告が提出する準備書面は、前回被告らから提出された書面の内容に反論するものです。
 まず、被告らからの主張を確認します。被告らは、あくまで内縁関係は男女(異性)間の関係のみを予定する概念であって、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないとの主張に固執しています。
 具体的には、被告らは、以下で述べる6つの理由から、原告の「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないと主張しています。
 まず1つ目の理由として、被告らは、同性間の関係が内縁関係に該当するとして法律上保護されるとの見解が通説的見解であるとの原告の主張が誤りであると主張しています。しかし、被告らによる学者の見解に関する主張は、学者の文献の文言の一部を拾い上げた上で恣意的な解釈をしているものにすぎません。また、被告らは、内縁保護を同性カップルに及ぼすことに否定的な学者の意見を示すこともしていません。したがって、被告らの主張は、原告の主張を何ら揺るがすものではありません。
 2つ目の理由として、被告らは、同性間の関係も内縁関係として法律上保護されることが判例上認められているとの原告の主張が誤りであると主張しています。しかし、被告らの主張は、原告が引用している同性間の関係を婚姻に準ずる関係として法律上の保護される利益を認めた東京高裁判決の極めて重要な点を意図的に引用せず、恣意的な解釈しているものであって、原告の主張は誤りではありません。
 3つ目の理由として、被告らは、学説や判例で原告の主張を裏付けるような見解があったとしても、その見解が本件各規定の解釈に影響を与えるものではないと主張しています。しかし、原告は、本件各規定の解釈に直接影響を与えることを及ぼすかどうかを争っているのではなく、あくまで複数の有力な学者や判例によっても、本件各規定の「事実上婚姻関係と同様にある者」に同性パートナーも含まれるとの解釈が十分に可能であるということを主張していますので、被告の主張は原告に対する反論となっていません。
 4つ目の理由として、被告らは、内縁配偶者の権利保護の歴史的経緯から、内縁法理は異性間の関係を前提としていると主張しています。しかし、内縁法理は、歴史的に、当事者は婚姻を望んでいるが、外部的な事情により婚姻をなし得なかった関係を保護することを目的としていたから、むしろ現行法制度上婚姻をなし得ない同性間にこそ内縁法理を及ぼすべきものといえます。
 5つ目の理由として、被告らは、原告が準備書面(2)で引用した重婚的内縁や近親婚的内縁についても事実婚としての保護を認める判例について、本件とは事案が違う、または男女間の関係を前提としており、むしろ同性パートナーに内縁関係は成立しない立場の判例であると主張しています。しかし、被告らの主張は、結論部分だけに着目し、自身に都合が良いように曲解した主張であって、理由がないものです。
 最後に6つ目の理由として、被告らは、他の地方自治体において「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」又は「配偶者」に同性パートナーを含めている実例があるとしても、本件各規定の解釈において同性パートナーを含むものと肯定することにはならないと主張しています。しかし、憲法92条及びそれを受けた地方自治法に基づいて組織・運営された他の地方自治体でも同性パートナーを有する職員に扶養手当その他福利厚生を支給しているという事実は、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」との文言についても同性パートナーを含める解釈が可能であることを裏付けるもので、被告の主張には無理があるものです。
 今まで述べたとおり、被告らの主張する6つの理由は、いずれも根拠がないものや原告の主張を正確に捉えていないものです。一方、学説や判例、他の自治体の運用の事実からも「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性パートナーを含むと解する余地はないとの主張が誤りであることは明らかです。
 原告は、パートナーと当然に内縁と認められる程度の夫婦としての実態がありました。しかし、被告らは、行政機関として一般企業よりもさらに配慮を進めるべき立場にあるにも関わらず、同性パートナーを「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に含むことができないという誤った解釈に拘泥し、合理的な理由もないのに、原告に対して扶養認定不可等の決定をしました。このことは、性的指向を理由とする差別で、憲法14条1項に違反します。したがって、被告らが主張する、原告に対して扶養認定不可等の決定をしたことに違法性がないという主張には正当性はありません。
 以上が今回提出する準備書面の要旨となります。
以上


②次回期日の予定確認

 次回期日は、2022年11月9日(水)10:00-札幌地方裁判所8階805号法廷第5回口頭弁論期日



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