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つらい緊張や不安に効く!科学的対処法

不安や緊張に悩まされる人は多いかと思います。特に苦手な場面や大勢の前などは、緊張で正気ではいられない方もいるかもしれません。
この記事では、不安や緊張を抑えることができる科学的な方法を挙げ、私が日常の場面でも利用しやすいようにカスタマイズした方法をまとめます。


やり方

早速ですが、私がカスタマイズした不安・緊張解消法は以下の通りです。

①背筋を伸ばす
→頭のてっぺんから糸で吊られている感覚
②漸進的筋弛緩法(簡易版)
→全身で5秒ほどグッと力んで、一気に力を抜く
③ボックスブリージング(タクティカルブリージング)
→口を閉じて鼻から4秒かけて息を吸う
→4秒間息を止める
→4秒かけて口から息を吐き出す
→4秒間息を止める
④おでこタッピング
1秒1回のペースでおでこを指でタッピングする(鎖骨や腕などでも構いません)

※不安や緊張の解消法としては他にも様々なものがありますが、なかなか難易度が高かったりするので、取り組みやすいものを選びました。

以降では各項目について、エビデンスと効果を書いていきます。

① 背筋を伸ばす

カルガリー大学とテキサスM&A大学の研究

参加者を2つのグループに分け、一方には背筋を伸ばして座る姿勢をとらせ、もう一方には猫背の姿勢をとらせました。両グループの参加者にストレスの高いタスクを行わせ、その間の心理的な反応や生理的な変化を観察したところ、猫背の姿勢を取ったグループは、無力感やストレスを感じやすくなることが分かりました。

マドリッド自治大学のブリニョールらの研究

71名の参加者に、背筋を伸ばして胸を張って座っている状態(自信のある姿勢)と、背中を曲げて前のめりになっている状態(自信のない姿勢)で、自分の良いところと悪いところを考え、書き出してもらった。
その結果、背筋を伸ばして胸を張って座っている状態の方が、ポジティブな自己評価や思考を持つことができました。

ハーバード大学のカディらの研究

堂々とした姿勢をとらせた被験者と、縮こまった姿勢をとらせた被験者では、前者の方がテストステロンという「生きる活力」「生気」「気持ちの張り」といった、バイタリティを高める作用のあるホルモンが増加し、コルチゾールというストレスホルモンの低下が確認されました。

② 漸進的筋弛緩法

漸進的筋弛緩法は、足の先から頭のてっぺんまで、体の各部位の筋肉を順に緊張させてはリラックスさせるという技法です。例えば各筋肉群に対して、約5秒間緊張させた後、20秒以上リラックスさせることを繰り返します。
このプロセスを通じて、身体的なリラクゼーションが進み、心理的な安定感が得られるとされています。
研究によると、漸進的筋弛緩法を実践するグループと、抗不安薬であるジアゼパムを服用するグループに分けて実験が行われました。
漸進的筋弛緩法を行った場合、ストレス状態における脳活動を抑制する上で、抗不安薬と同等の効果があることが示されました

ただこれを日常のあらゆる場面で行うことは難しいので、私は簡易版として、全身に力を入れ、一気に抜くようにして行っています。

③ ボックスブリージング(タクティカルブリージング)

ボックスブリージングは、4秒吸い込む、4秒息を止める、4秒吐き出す、4秒息を止めるというシンプルなリズムで行う呼吸法です。
この一連の動作を数回繰り返すことで、自律神経系を落ち着かせ、心拍数を減少させることができます。この呼吸法は、米軍の兵士や警察官、消防士の間で使われており、さらにアメリカ海軍の特殊部隊にも採用されているとのこと。
この呼吸法は、緊張を感じる会議の前、試験、スポーツの試合、あるいはどんなストレスの多い状況下でも実践可能であり、迅速にリラックス状態を作り出すのに役立ちます。

研究によると、ボックスブリージングを行ったグループは、吐く時間を長くした呼吸法(パワーブレス)を行ったグループに比べて、心拍数の減少やストレスレベルの低下が顕著であることが示されました。
これは、ボックスブリージングが心理的および生理的なストレス反応を軽減し、冷静さを保つのに有効な手段であることを示しています。

④ おでこタッピング

タッピングは、心理的ストレスや不安を軽減するための手法であり、おでこや頬、鎖骨周辺など、特定のポイントを軽くタッピングすることで、不安感を和らげ、落ち着いた状態を作り出すことができます。

ベングリオン大学のクロンドが行ったメタ分析によると、タッピングが不安症状を有意に軽減する効果を持つことが示されました。

なおタッピングについても漸進的筋弛緩法と同様に、本来は時間をかけて様々な部位で行うのですが、日常の場面では難しいので、私は簡易版としてボックスブリージングのリズムに合わせながら、1秒に1回おでこのタッピングを行っています。

注意点

  • これらはエビデンスのある方法ですが、緊張や不安が完全になくなるわけではありません。過度な期待はせず行ってください。

  • 「全く効果がない!」と思われた方は、これらの工程がうまくできていない可能性があります。例えば「背筋を伸ばしたつもりだけど、頭から吊られているイメージでできていなかった」「1秒を数えるペースが早かった」など。今一度工程を見直してみてください。

  • これらのテクニックは、ぶっつけ本番では緊張でうまくできなかったり、頭が真っ白になってできない場合があります。日頃から練習・体感しておき、本番でも使いこなせるようにすることをおすすめします。

  • 基本的には一時しのぎに近い方法なので、これらのテクニックを使いながら場馴れしていき、最終的にはこれらに頼らずにチャレンジできるようになることを目指すのが良いと思います。

参考
1)Riskind, J. H., & Gotay, C. C. (1982). Physical posture: Could it have regulatory or feedback effects on motivation and emotion? Motivation and Emotion, 6(3), 273–298.
2)Briñol, P., Petty, R. E., & Wagner, B. (2009). Body posture effects on self-evaluation: A self-validation approach. European Journal of Social Psychology, 39(6), 1053–1064.
3)Cuddy, Amy J.C., Caroline A. Wilmuth, and Dana R. Carney. "The Benefit of Power Posing Before a High-Stakes Social Evaluation." Harvard Business School Working Paper, No. 13-027, September 2012.
4)P Pifarré , M Simó, J-D Gispert, P Plaza, A Fernández, J Pujol Diazepam and Jacobson's progressive relaxation show similar attenuating short-term effects on stress-related brain glucose consumption Eur Psychiatry
. 2015 Feb;30(2):187-92.
5)Stefan Röttger, Dominique A Theobald, Johanna Abendroth, Thomas Jacobsen The Effectiveness of Combat Tactical Breathing as Compared with Prolonged Exhalation Appl Psychophysiol Biofeedback
. 2021 Mar;46(1):19-28. doi: 10.1007/s10484-020-09485-w.
6)Morgan Clond Emotional Freedom Techniques for Anxiety: A Systematic Review With Meta-analysis J Nerv Ment Dis
. 2016 May;204(5):388-95. doi: 10.1097/NMD.0000000000000483.


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