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映画「戦場のピアニスト」を観ました※ネタバレあり

久しぶりの投稿です。段々秋めいて来ましたね。『スポーツの秋』『食欲の秋』等色々ありますが皆さんは何の秋ですか?私は『芸術の秋』になりそうです。
最近ずっと読みたかった「アンネの日記」を読んだのですが、そこから同じ時代の作品繋がりで名前は知っていましたが今まで観た事が無かった「戦場のピアニスト」という映画を観ました。
「戦場のピアニスト」は第二次世界大戦中ナチス占領下のポーランドでホロコースト(ユダヤ人に対する迫害・殺戮)を生き延びたユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの実話を基にしています。
個人的にはアンネの日記よりホロコーストの残虐性がよりリアルに伝わって来ました。とにかくユダヤ人に対する扱いの描写が酷い。
物のように窓から投げられたり、いきなり殴られたり、ゲームをするかのように気まぐれに撃ち殺されたり、無理矢理おどけさせられて馬鹿にされたり・・・殴ったり撃ち殺したりする方も表情一つ変えず、言い方が悪いですがまるで虫やゴミを扱っているかのよう。正気の沙汰ではありません。
後、これは映画を観て初めて知ったのですが、ユダヤ人の人々はゲットーという狭い居住区にギュウギュウに押し込められ、食料の配給も少なく下水の設備も整っておらず、食料不足と人が密集した不衛生な環境で多くの人が亡くなったそうです。
ひもじさから盗みを働き捕まりかけ力尽き行き倒れる子供、やっと手に入ったであろう食料を奪われ為す術なく泣き崩れる老女、もう亡くなったのであろう夫を、その現実を受け止められず探し続ける夫人、発狂しおどける老人・・・実話を基にしており、この作品の監督もゲットー生活を経験している方との事でこの辺りの描写はかなりリアルに表現されているのでしょう。ゲットーでの辛く苦しい生活の様子は見ていて胸が痛みます。
そんな中で家族と暮らしていたシュピルマンは家族と強制労働収容所へ移送されようとする中、助けられ一人奇跡的に収容所送りを逃れます。そして色々な人の力を借りながら潜伏生活を送っていたのですが、廃墟に潜伏していた時ついにドイツ軍の大尉に見つかってしまいます。何者かと問う大尉に自分はピアニストだと言うシュピルマン。大尉は廃墟にあったピアノを弾いてみろと言い、シュピルマンは素晴らしい演奏を披露します。全てを失い逃げ惑い、身も心もボロボロの正に乞食のようだったシュピルマンがピアニストに戻った瞬間。その演奏を聞いた大尉は彼を助けます。彼の名前はヴィルム・ホーゼンフェルト大尉。廃墟の屋根裏に隠れていたシュピルマンに食料を差し入れたり自分のコートをあげて、「後数週間の辛抱だろう」と励まします。彼はシュピルマンの他にも多くのユダヤ人を救っていたそうです。
やがてドイツ軍が撤退する事になり、「戦争が終わったらまたラジオでピアノを弾きたい」というシュピルマンに「必ず放送を聞こう」と言い去って行きます。そして終戦を迎え、シュピルマンは、戦後ピアニストとして復帰します。
この映画を見て感じたのは、差別と迫害と集団心理の恐ろしさ、人は人に対してここまで残虐になれるのかという事。そんな中でも良心を持ち、それに従って勇気ある正しい行動が出来る人達がいて良かったという事でした。ホーゼンフェルト大尉はその後厳しい収容所生活を送り、身体と精神を病み亡くなったそう。当時のドイツ軍というととても残虐で恐ろしい人々のイメージしかありませんでしたが、彼のような人もいたのだという事実に少し救われた気持ちになりました。そんな人がそのような亡くなり方をしてしまったのはこれもまた皮肉というか・・・とても残念です。
実際のシュピルマンさんが残した手記もあるので、読んでみたいです。
辛いですが、映像も綺麗で当時のヨーロッパの街並みもゲットーも廃墟も、セットがとても良く作り込まれており、役者さん達のファッションも素敵だし、もちろん演技も素晴らしかったです。
この作品は、カンヌ映画祭では最高賞であるパルムドールを受賞しアメリカのアカデミー賞では監督賞、脚色賞、主演男優賞の3部門で受賞したとの事で、シュピルマン役を演じたエイドリアン・ブロディさんはこの作品でアカデミー主演男優賞を受賞したそう。
重いテーマですが、戦争、差別、尊厳について考えさせられる、素晴らしい作品だと思いました。
見て良かったです。


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