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ボルケーノよ、目標を確認しペヤングを抱け。

3月24日(日)
私はその日、真剣にインターネットと向き合っていた。

私が向き合っていたのは、その日の日本国民のおおよそ八割が向き合っていただろうと思われる皆さんご存知のドミノピザの注文画面である。

時は一日前に遡る。
そう、3月23日(土)にジョブチューンでドミノピザが一流ピザ職人に挑んでいたのだ。

土曜日の夜、そのテレビを見ていた私の口の中はピザでいっぱいになり、そして腹はピザを受け入れる体勢となっていた。完全にピザに挑む臨戦態勢が整っている。日曜日はピザを食べる以外に選択肢はない。

わかっている。40を過ぎた身にはそんなにピザが入らないことを。
知っている。どうせ数枚食べただけでお腹がいっぱいになってしまうことを。

でも!
でも!
でも!

食べたいのだ。ピザを。
と言うことで、私は躊躇せずピザをネットであっさり注文。ピザはコッテリだが、ここはあっさり行動しておこう。私のあっさりとした行動がきっと、いや、確実に、高カロリーなピザと相殺され、きっと、いや間違いなく今夜のピザはカロリーゼロなのだ。
誰がなんと言おうとも!

そして、注文はお持ち帰り注文で。

なぜか。お持ち帰りは半額なのだ。
すごくない? 多分、カロリーも半分だよね? 
さっきカロリーゼロとか言ってたけど、カロリー半分ってことでいいよね?
だって半額だよ! 私がウーバーになればいいんでしょ。
もう楽勝。だって、もうババーだもん。ほとんどウーバーと相違ない。運動にもなるし、お財布にも優しい。

と言うことで、私は持ち帰るのだ。ピザを。夫に車を出させて。
え? なぜ自分で車を出さないのかって? 仕方ない。私はペーパードライバーだから。そう、私は助手席専用の女。

・…・

やってきたよ! ボルケーノ! まじでけえ。そして、うめえ。なんだろ、このエンタメ感。ありがとうございます、ドミノ様。もう、ドミノ倒しで、ピザに埋もれたい。ええ、チーズで窒息死もありかもしれませんなんてことはありません。

そんな私が終日睨めっこしていたのは、ドミノピザばかりではない。

私は今年、小説を公募に出したいと思っているので、原稿に目を通していた。駄文だろうがなんだろうが、書けば都。やらぬが仏。書かぬ角にはパンを咥えた可愛い女子高生はいないのである。

まあ、こんなもんだろ。いや、めちゃくちゃ面白い。
と自分で自分をハゲました。もう心の中では2,000ルクスで1,000ルーメンで1,000カンデラである。なんやねんこの単位はと思いながら、数字を置いてみた。ああ、もう脳内はこんガラガッテラであり、気持ちを明ルクスる、セルフアーメンである。

最後にペラペラと印刷物をめくり、最後の「。」が「。。」と誤字っていることに気づく。印刷し直すか、印刷しなおしたほうがいいよね、あまりにひどいよね、と思いながら、ええい御愛嬌!(そんなものは多分ない)と、そっと封筒の封を閉じた。

書き上げた原稿をどの郵送方法で公募に出すべきかと思い調べてみると、ゆうパックというものが出てきた。
おお、ゆうパックか。知ってる。使わないけど。職場でよく見る。
と、お前は社会人になりたてかよ、と突っ込みたくなる感想を抱きながら、雨が降る福岡の街を傘も刺さずに歩いた。

あれ?

傘を刺してはならぬ。傘は刺すものではない。傘が刺されば、それはすなわち流血事件である。刺すならば正面から刺すべし。背中の恥は犬歯の恥。いや、犬歯の恥は虫歯だよね、みたいなことを突っ込みたくなるような誤字を繰り返し、私は傘も持たずに外に出た。そう、ゆうパックを求めて。

しかし、だがしかし、そのコンビニにはゆうパックは売っていなかった。
そんなこともあるのかと私が肩を落としていると、レジ横に何か心が惹かれるものが置いてあるではないか。

なにこれー。たのしそー。
ということで、私はレターパックの代わりにペヤングを買ってコンビニを出た。さらに犬の散歩中であり夫を雨の中コンビニの外に待たせていた私は、ついでにアルコールも買って……。

すでにボルケーノと共にアルコールを摂取し、さらに犬の散歩中に歩きながら飲酒をしていい感じになっていた私は、帰宅後ゆうパックはないけどもういいや、と封筒に宛先を書いた。

ゆうパックだろうが、普通郵便だろうが、配達証明郵便だろうが、送ることに意味がある。最後に誤字っていようが、私は小説を書き上げたのだ。書き上げたのなら応募するしかない。それが狭き門だろうが、私の現在地を教えてくれる道標となるのだ。クソほど面白くなければ、それを知る必要がある。

私は決意を新たにした。

誤字のまま出すことに。そして、あのペヤングを食べることに。
いや、もう、お腹いっぱいだよ、おかん……。
私の可愛いネロたちがピザを腹に詰めこみぐったりとしながら、スマホでゲームをしている。

確かに今日、私の胃にペヤングを入れることは難しい。これはまた後日に持ち越すしかない。私は今宵ペヤングを抱けなかった。切ない。ああ、今宵は雨である。月は雲の影に隠れ、雲は灰色に染まり、涙を流している。


なんのはなしですか?



「知らんけど」に変わる魔法の言葉、コニシ木の子さんの「なんのはなしですか?」を使わせていただきました。

なんのはなしですか?
はどんな場面でも活用可能だということを筆者であるコニシ木の子さんが教えてくれる記事です。
案外テクニックがいるなと思いました。むずかちい。

素敵なお話も、よくわからないお話も、どんな話もこれ一つでなぜかまとまる魔法の言葉。オチがつかない時にこそ頼りになる言葉です。

え?

オチがつかなかったんだろって? そんなことないもん。
いや、きもいぞ。43にもなって語尾がモンって。お前はドラえもんか、いやくまモンか。
いやしかし、ドラえもんはモンなんて語尾を使わないし、くまモンに至っては言葉を発しない着ぐるみ界の高倉健である。

ええ、そんなことは私にもわかってるもん。
彼らはそんな軽い男じゃあない。根っからの硬派な男なのよ。

なんのはなしですか?(本日二回目)




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