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そして私は友人に怒られる


体重が減った。


想像していたよりも がくん、と。 すっきりする為に入ったお風呂から出て、私の血の気が引いていく。 両脚を乗せた体重計には久しぶりに見る数字が表示されていて、私の脳裏に怒る友人の姿が浮かんだ。 やってしまった、これこそ油断だ。 3日間3食ラーメンを食べ続けたら、少しは戻るだろうか? それともジャンクフード? 焼肉? どれも胃にダメージを与えるだけで、あまり役に立たない気がする。 悲しいかな、エアコンにやられた身体がそれらを上手く消化してくれるとも思えない。 諦めるしかなさそうだ。



女性の身体に憧れを抱いたのはいつだっただろう。

質素な身体の私には、柔らかさが足りない。 もっと、もう少しだけでいいから、どうにか脂肪が欲しい。 中学生の時は今で言う ぽっちゃり系 だったと思う。 丸い顔がコンプレックスで、太い脚も嫌いだったし、もうとにかく挙げたらキリがないほど嫌いな身体だった。 それが何故かは全く分からないけれど、高校生になった夏頃に食の好みが変わった。 甘いものは匂いをかぐだけで拒否するようになり、油っこい食事も胃が受け付けなくなった。 どちらも一口食べるだけで胃がなんとも言えない違和感を訴える。 ぐにゃぐにゃと曲がるような、段々と傾いていくような。 それからは甘いものも油っこいものも、全て拒否した。


ランニング、バスケット、アルバイト、学校。 それらを繰り返すうちにいつの間にか体重が落ちていった。 制服のスカートは緩くなり、運動のためのジャージもぶかぶか。 冷え性対策に愛用していたカーディガンもだぼだぼ。 下着もサイズが変わった。 60あった体重も40代に。 その頃には胸はぺったんこになった。 何故にそこを減らす?


美人な義姉のおかげで覚えたメイクや髪型、髪色。 それら全ても相まって、中学時代の雰囲気は完璧に消え去った。 もちろん、良かったこともある。 電車で痴漢に会いづらくなったこと、好きな服を着てもいい感じに収まる身体。 隠すことが減った身体のライン。 それらと引き換えに胸がなくなったと思えば、まぁいいか、なんて無理矢理に前向き思考へ持っていく。 本当は全然良くない癖に。 なんでそこを引くの? 他になかったの?



憧れの女性がいた。

美人で可愛い、素敵な義姉。 訳あって家族になった義姉は、私にないものをたくさん持っていた。 もともと薄顔の私とは真逆の、整ったシャープな顔。 明るい性格にどこまでも行ける足の軽やかさ。 そして可愛い笑顔。 全てが憧れで、大好きだった。 夜眠れずに過ごす私を外へ連れ出してくれて、私に似合う服装も教えてくれて、化粧もたくさんの技術も教えてくれた。 今は、そんな義姉の面影はどこにもない。 残念ながら、義姉は悪い方へと変わってしまった。 人生は時に残酷だ。


憧れの女性がいる。

高校生の時から、ずっと憧れで今でも大好きな女性。 芸能人の杉本彩さん。 思えば、女性の身体とはこういうものだ、という強い意識を植え付けてくれたのは彼女だった。 声も目も唇も髪も仕草も裸体も指先も。 全てが美しく見えた。 いや、現に彼女は美しい淑女だ。 彼女が主演する作品は、甘美で耽美で艶やかな色気を放つものばかり。 白い裸体に食い込む紅い縄も、紅をひいた唇も。 私の心を揺らし続けてくれた。 絶え間ない激しい波のように。 美しい牡丹の散り際のように。 潔く気高く艶美に、私の心の琴線を弾き続けてくれた。 なんて美しい人だろう。 私の女性に対するフェチズムは全て彼女が作り上げたようなものだ。 欲に濡れた女性があんなに綺麗だなんて、知らなかった。


だから今でも、女性の身体は好きだ。


恐らく男性が感じる興奮とは、また違うものだと思う。 美しくて、脆くて、強かな、柔らかな裸体。 今も昔も自分の身体に自信はないけれど、こうなりたいという理想や憧れを女性に求めている。 その美しさの裏側にある努力も、葛藤も、苦悩も、全てが愛しい。 毎日のように心で賞賛を贈る。 美しさや可愛さの為に頑張る女性は、みんな素晴らしいと思うから。


だから私もそうありたい。私を褒めてくれる誰かの為に、私の為に。ほんの少しでも。


最初は、この内容を書くつもりではなかったのだけれど、たまには性癖全開でもいいかな。






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