さしろ

日常と非日常の狭間。心理学と綺麗なものと言葉が好き。小説なのか詩なのか殴り書き的な散文…

さしろ

日常と非日常の狭間。心理学と綺麗なものと言葉が好き。小説なのか詩なのか殴り書き的な散文書きます。最近は性癖と犯罪心理学について色々と勉強中。

最近の記事

愛が終わる、恋が眠る

雨が降り続くから、怠そうな猫。 どんな夢を見るのだろう。幸せな夢だといい。好きなものに囲まれて、幸せな陽気の中まったりと過ごすような、優しくて幸せな夢。 夢を見た朝は夢占いの本を開く。 起きた時良い夢だと思ったか、悪い夢だと思ったか、そこが夢占いには重要らしい。 わたしは先日、2日連続で指輪の夢を見た。良い夢だと書かれた本を眺め、なんとなく安堵する。その先が当たっているかは分からないけれど。 愛が終わる、恋が眠る。 愛を愛のまま受け取ることがで

    • 無味無臭の愛を探すこと

      〝あなたじゃなければ愛したりしなかった〟 そんな一言を求めて愛を探す。 本当は知ってた。〝それは愛じゃない〟。 じゃあ何が愛なの?って、あなたは全身で問いかけてくる。 理想の愛の形。解らないのに求めたのはどうして? 生温かい。 微温湯のような関係は望んでなかった。 冷めたら温め直すことができる愛。 欲したのはいつだって、少し熱いくらいの愛。 涙が出そうだ。 そんな愛を求めて身体を重ねて、勝手に失望する。自己愛にも程があるじゃないか。 望んだものと違うって、勝手に返却された

      • あなたがしあわせで ありますように。

        遠い昔に通い慣れていたであろう道を歩く。 何ひとつ楽しい思い出を覚えてはいないのに、押し寄せる郷愁。 あなたにも、そんな場所はあるだろうか。 少年時代、暑い夏の日に駆けた森の道。少女時代、他愛ない話をした夕暮れの街。 「あの時、こうしてれば良かった。」 そんな声が聞こえる。いつも誰かの、心のどこかに棲む後悔が、懺悔にも似た悲鳴を上げる。 わたしは、言葉が嫌いだ。 その瞬間に感情のままに紡がれただけの、手の中に残らない声。 そんなものを人は後生大事にするの

        • 淋しさからいちばん遠くで あなたと出逢えますように

          「冬はね、どうしても淋しくなるんだ。これはね、僕の病気のひとつなんだけど誰もが理解してくれる、たったひとつの病気なんだよ。」 そう言いながら、彼は珈琲を口に運ぶ。なんてことはない、いつもの日常。広い構内の一角に設置された自販機に、残念ながら紅茶はなかった。 淋しさを持て余す。 独りで過ごす夜を、あと何度乗り切れば淋しさは無くなるのだろうか。そんな疑問を誰もが持ち合わせていながら、誰もが口にするのを躊躇う。答えが無いと知っているからか、答えをもう知っているからか。本を読み

        愛が終わる、恋が眠る

          それが綺麗じゃなくたって 構わないよ

          この人はどんな人生を歩んできたのだろう。 そう思わせる人がいる。使う言葉や、不意に見せる伏せた横顔だったり。洗練されている訳でも選択している訳でもない、ありのままの言葉と表情に強く引き込まれる。そしてそういう人は、決して多くを語らない、誰かに踏み込みすぎない。そして言う。「昔のことは忘れてしまったよ」と。 覚えておきたいことや忘れたくないことは、良くも悪くも頭と心に焼き付くものだ。 簡単に忘れられることというのは、実はそんなに多くない。大抵は記憶の奥底に沈澱する。だから

          それが綺麗じゃなくたって 構わないよ

          人魚姫の歌声

          深夜から振り続けていた雨が上がった。長い雨の夢から醒めた世界は、いつも通り動き始める。猫背の研修医が軽く会釈するのに合わせて、私も頭を下げた。 この場所に来るのは27回目。真っ白な天井、壁、廊下。余分なものを全て取り除いた、完璧な〝牢獄〟。窓先に見える海は、秋を通り越して冬の色をしていた。深い深い青。何もかもを拒絶するように荒ぶる波。横目で海を捉えながら、私は廊下を進む。 小さく聴こえるクラシック。これはバッハだろうか。波音と共に耳に届くピアノが、この牢獄にはとても

          人魚姫の歌声

          例えば私が永遠に消えたとして、

          名前を呼んだら返事があること。 いつから当たり前に思っていたのだろう。言葉を覚えた時から? 自分の名前を呼ばれて返事をする必要性を知ってから? 呼んだら答えてくれる人を手に入れた時から? それが〝当たり前〟になったのはいつからですか? 繋いだ言葉を、紡いだ声を、当たり前に聞いてくれる存在。家族、友人、恋人。あなたには何人いるのだろう。あなたは何人失ったのだろう。指折り数えて、止まった指の先。それ以上に欲するのは、なぜ? 私にはどれも〝当たり前〟にはならなかった。永遠に失

          例えば私が永遠に消えたとして、

          カテゴライズ未満

          不意に、高校生の頃を思い出した。 わたしの高校時代はごくごく平凡に過ごせていたと思う。メイクもしたし、髪も染めたし、エクステもつけたし、スカートも短くしたし、放課後はアルバイトと遊び。勉強もしたし、本も読んだし、買い食いもしたし、遅刻もしたし、サボりもした。グループという括りが合わなかったのでグループには入らなかったけれど、元来の探究心の強さからか、オタク的な話をする友人もいたし、じっとしているのが性にあわないからか、派手目な友人もいた。 教師という立場の人は好きではなか

          カテゴライズ未満

          愛されない子供たち

          〝愛されている〟と実感できない人が、年々増えてきている。 うつ病や精神疾患の多くは〝愛情不足〟が原因である事が多い。中でも親からの愛情不足が深刻になってきた。近年は特にそう思う。毎日、胸が引き裂かれるようなニュースが流れている。愛されない子供、愛さない親。見向きもされない小さな存在に、心が軋む。 幼い頃の家庭環境、人的環境はとても大切なものだ。子供にとって親は〝絶対〟であり〝この世の全て〟と言っても過言ではない。無条件に自分を愛し、慈しみ、守り、安心をくれる者。幼い子供の

          愛されない子供たち

          それすら酷く歪な愛で

          憶えている一番初めの記憶から、どうしても欲しいものがある。 もしかしたら一生手に入らないまま終わるかもしれないその〝もの〟は、心の何処か隅の方にじっと呼吸し続けている。歪な棘を纏って、静かにそこに居続けている。 「欲しいものは全て手に入れたから」。そう言った知人は今どこに居るのだろうか。旅に出たまま帰らぬ人。何処か遠い国の端っこ、辺境の地で毎日を悠然と生きているだろうか。それとも、何処か遠い国の陰鬱な洞窟の奥で、ひとり息を止めただろうか。恐らくもう一生会うことはない〝旅人

          それすら酷く歪な愛で

          一輪の花の種

          心に埋めた、一輪の花の種。 いつ芽吹くかも、どうすれば芽吹くかも解らずに、わたしは日々に流されていく。丁寧に掘った心の穴に、どうか咲きますように と願いながら埋めた日。わたしは確かに限界だったと思う。 9月にはいい思い出がなかった。淋しいほどに苦しくなるほどに孤独を愛するほどに、独りだった。大切にしてきた〝何か〟を何度も何度も失っては茫然自失を繰り返して。淋しさを紛らわすように泣いてばかりいた。 愛をくれる、というのなら貰えばいいのに、わたしにはどうしても出来なかった。

          一輪の花の種

          移り変わり 色付くものへ

          女心が解らないと男が言えば、男心の方が解らないと女が返す。 何十年も前から続く様式美のようなやり取りに、私はいつも感心してしまう。結局のところ、お互い知りたがってばかりいるのだ。愛する人の本心を、好きな人の本音を。心を支配するには言葉が足りなくて、身体を支配するには余りにも簡単すぎて。あやつり人形になりたいわけじゃない男女が、それでも一緒になろうと共に過ごそうと努力している。滑稽だけど無様ではない。様式美。 私の友人は30歳年上の男性と結婚した。いや、正式には事実婚をした

          移り変わり 色付くものへ

          恋愛観と甘い林檎

          いつから文章じゃ足らなくなったのだろう? 本当は今日、note更新しないでおこうかなって思っていたんだけれど、なんとなく書きたいことがあったので楽に書いてみる。楽に読んでくれたらとても嬉しい。なにをどう楽に、なのかはわたしも解っていないけれど。 あなたはいつから、好きな人とのやり取りが〝文章〟じゃ〝足りなくなった〟? わたしの言う 好きな人 は友人のことと、まだ恋人じゃない人のこと。片想いとか、憧れとかそういうじわりと広がる 恋 を寄せる人。もちろん、恋人がいる人は恋人に

          恋愛観と甘い林檎

          黒い棘 孕む毒

          柔らかな人が好き。 ふわふわと揺れるように揺蕩うように、自己を形成してきた人。ふにふにした見た目とは裏腹に、根底に毒を持つ人。そんな人が男女共に好きで、どうしようもなく憧れる。わたしもそう成りたい、わたしもそう在りたい。それはいつも、わたしの心と頭のどこかにある、ひとつの願望。 手を握って、話を聞くとき。微かに震える手に泣きそうになることがある。無理矢理に押さえつけた感情は、一体どこに消えるのだろう。消えずに蓄積されていくのだろうか。井戸の底の澱みのように、濁り沈み、そし

          黒い棘 孕む毒

          モノクローム 光るネオン

          逃げ場のない会話をする人が、苦手。 話の上手い下手ではなく、一方的な会話をする人とは仲良くなれない。その人の人間性か、欲求が強いのか。気に入った相手を一方的に囲うような話し方。私にはそれがいつも窮屈で息苦しい。相手の感情や自由性を押し留めていい訳がないのに。そういう人とはどうにも深く関われないし、離れたくなる。本当はもっと関わった方が勉強にもなるのだけれど、プライベートではどうしても心が拒絶する。無意識な自己防衛。 東京はいつも灰色に塗れている。決して悪い意味ではなく、白

          モノクローム 光るネオン

          燻らす煙 喫煙席にて

          東京に行くと、必ず訪れる喫茶店がある。 有名な喫茶店で珈琲が美味しい。悲しいかな、珈琲が飲めないくせに、その喫茶店で一息つくのが好きだった。空いているならば喫煙席に案内してもらう。煙草は吸わないけれど、喫煙席のなんとも言えない雰囲気が好き。禁煙席よりもゆったりできる。周りに喫煙者が多いからだろうか、安心するのかもしれない。喫煙席には男性と女性が一人ずつ、私を含めて三名の客しかいなかった。 段々と淘汰されていく。あの頃は良かったなんて口にすることは無いけれど、色んなことに制

          燻らす煙 喫煙席にて