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【本レビュー】『村上ラヂオ』

澄み切った青空を見ながら読書するのは、気持ちがいい。

「晴耕雨読」という言葉があるように、読書は雨の日ほど捗る印象があるけれど。読書好きに天気は関係ない。晴れている日でも、読書はしたくなるものだ。雲ひとつない青空を見ていると心まで晴れやかになるから、個人的に読書しやすいと思っている。


村上春樹先生の作品と私

タイトルにある『村上ラヂオ』。かの有名な村上春樹先生が書いたエッセイ集だ。

正直私は、彼の作品とは縁遠い人生を送っていた。小学生の頃に『ノルウェイの森』を読んだ程度で、他に読んだ記憶がない。いや、それは言い過ぎた。『1Q84』は1巻だけ手に取った記憶がある。しかし、どんな物語だったかは全く思い出せない。きっと途中で読むのを辞めたきり、読まなくなってしまったのだろう。

それ以降、彼の作品からは遠ざかっていた私が、再び彼の本を手に取った。私が通うクリニックで、読書好きの知り合いに勧められたから。心に湧き出ることのなかった彼への興味関心が、私の知的好奇心をくすぐった。私が手に取った文庫本『村上ラヂオ』は厚みがそこまでない。これなら彼の知識に疎い私でも読みやすいだろう。そう思った私は素直に、知り合いの勧めに従うと決めた。


村上ワールド炸裂!なエッセイ50編

エッセイ集なだけあって、村上春樹先生の身の回りで起こったことが、面白くかつ楽しく書かれている。彼自身はそういう認識の下で書いていないだろうけど。

話のジャンルは多岐にわたっている。音楽の話、海外生活での出来事、レストランにいたカップルの話、夫婦話など。彼は本当にネタがたくさんあって、それを読者が楽しく読めるように工夫して言葉を紡いでいる。この本を読んで、私はそんな印象を受けた。彼のことを、”意外に堅実な人”のように思えた。話の内容がもっと散らかっているかと思ったからだ(かなり失礼)。

読み終えた文庫本をもう一度パラパラと見返してみる。印象深いエッセイは何だったかな、と。うん、私の印象に強く残ったのは、恋の話と食堂車の話だった。

恋を語る村上春樹先生

ジャズ界で有名だという『恋している人のように(Like Someone in Love)』から、恋の話に発展するエッセイ。彼曰く、恋に最適なのは16歳~21歳頃(個人差あり)だという。ガキっぽくなくて、かつ余計な偏見のない時期がその頃ということらしい。要は、若いうちに恋をしてと言いたいようだ。そんなこと言ったら、私はもうすでにその年齢から抜け出している。もう少し早く言ってほしかった。私はもうまともな恋ができないのかもしれない(重く捉えすぎ、私)。

今は幻(?)の食堂車

彼のエッセイを読んでいて、私は思った。確かに食堂車を見かけない。名前は聞いたことがあるけど、今ならどの列車に乗れば食堂車とご対面できるのだろうか。

彼は食堂車が好きなのだという。どれだけ好きかというと、お金のない頃もどうにかお金を工面して食堂車に行ったほど。そんなに彼が食堂車に執着しているとは思っていなかったので、私は拍子抜けしてしまった。しかも本に書かれていたのは、料理がまずかったというエピソード。まずかったんかい、という心の底からのツッコミが漏れ出てしまう。それくらい、私にとってはインパクトのあるエッセイだった。


どうやら、『村上ラヂオ』は3巻まであるらしい。こんなに面白くかつ楽しく読めるなら、2巻も買って読んでみようか。

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