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旅 + fp L w/I series 〈中之条ビエンナーレ 2023編〉

群馬県の中之条町で2年ごとに開催される国際芸術祭が『中之条ビエンナーレ』。前回は2021年に開催され、今年 2023年も「コスモグラフィア
- 見えない土地を辿る -」をテーマに開催された。前回 2021年に訪れた際の記録はこちら『旅 + fp L w/I series 〈中之条ビエンナーレ編〉』を見て頂ければと思う。

中之条ビエンナーレ2023は「中之条市街地」「伊参(いさま)」「四万温泉(しまおんせん)」「沢渡暮坂(さわたりくれさか)」「六合(くに)」の5つのエリア、44会場にて開催されており、1日ですべて周るのはおそらく不可能だろう。2日以上かけて回れる方には、四万温泉で温泉旅行も兼ねるととても充実した旅になるだろう。特に四万温泉には ジブリ『千と千尋の神隠し』のモデルになったと言われている 積善館 があり合わせて訪れることができればこの上ない旅になりそうだ。昔ながらのピンボールを楽しめる遊技場があるところも個人的にはレトレでおすすめしたいポイント。
日帰りで周らなければならない方には、複数の展示が一同に介している大きめの会場を巡るのも1つの手だろう。車で周る場合は「旧廣盛酒造」「旧五反田学校」「イサマムラ」「伊参スタジオ」「やませ」「旧第三小学校」あたりを順に周ると効率よく、なるべく多くの作品を1日で観ることができるだろう。中之条ビエンナーレ2023特設ウェブサイト が設けられており、今回の展示が順次映像アーカイブで公開されているので、好きなアーティスト、作品に目星をつけて周るのもいいだろう。

鹿野裕介 『醸しの間』

自分が周った中之条ビエンナーレ旅の記録の中からいくつか紹介を。
旧廣盛酒造での展示は、鹿野裕介氏の『醸しの間』。作品を作るということではなく、なるべく作品を醸したいという作家の意図の通り、吊るされた作品が訪れる人々に揺らされて醸されていく。

鹿野 裕介 『醸しの間』

大野 光一 『遠くで星が燃える』

子供のころから徐々に社会性を身につけていく中で顔を整え、その場で使い分けていくのは現代的な感覚だが、その人の顔の薄い皮膚の裏側に魂の様なものがある様に思える。その人の本質を包み、変換し透過する。カーテンの向こうで揺らめく美しいかがり火、そのカーテンのような物を創造した作品。自分が訪れた日は作品の前で Tarinof dance company がコンテンポラリーダンス 「生を見つめる3部作」をパフォーマンスしていた。色々なジャンルのアートに突発的に出会えるのも中之条ビエンナーレの良さなのかもしれない。

大野 光一『遠くで星が燃える』 w/Tarinof dance company

大貫 仁美 『かつては少年であり、少女だった』

この世界は「そうではなかった人生」にあふれている。それでもなお抱えてきたこの傷と共に、ただあるがままにそこに「在る」ことの奇跡について考える作品。

大貫 仁美『かつては少年であり、少女だった』

半澤 友美 『叙景』

かつて養蚕業が盛んだった中之条。桑の木の皮を採取し、組み並べ、石で叩き、繋げることを中之条の方々と制作。そうしてこの土地に根付く桑の木から営みの景色を辿った作品。

半澤 友美『叙景』

ナ”ウ” (DUV) 『Text D』

H-NAITOとミナミリョウヘイのアートユニットナ”ウ” (DUV)。このカオス感が心をくすぐるただただテンションが上がった作品。正面に鎮座するシルバーサタンが光輝く夜の展示も観てみたい。よくわからない凄みを「雰囲気の向こう側」という名称で概念化し、それらから放たれる「パロール」を研究している二人のパロールを具現化したインスタレーション。ぱろーる?

ナ”ウ” (DUV)『Text D』
ナ”ウ” (DUV)『Text D』

五十川 祐 『Cleaners』

空間に配置されたオブジェクトは、掃除道具を模した形状をしており、それぞれが言葉を持っている。自己の記憶や体験がオブジェクトに投影されることを目指している作品で、言葉を探してちょっとくすっとして共感する。なんだかとっても愛らしくもある作品。

五十川 祐『Cleaners』
五十川 祐『Cleaners』
五十川 祐『Cleaners』

滝沢 礼子 『風 ・ 光』

風が通る部屋に展示された『風 ・ 光』。風が、光がうつろいゆく感覚が可視化される。人が通るだけでも揺れる風、光が気配をも可視化している感じがしてしばらく風が通るのを待つ。

滝沢 礼子『風 ・ 光』
滝沢 礼子『風 ・ 光』
滝沢 礼子『風 ・ 光』

久木田 茜 『Ornament Pattern of Natural Plants』

中之条の植物をメインに用いて、世界の様々な装飾文様のパターン構成を試みた作品。自然のイメージを抽象化し人工物に付属する装飾が美しい。象徴する様で、自然な景色が中之条を背景に溶け込んでいる。

久木田 茜『Ornament Pattern of Natural Plants』

いくらまりえ 『HELLO』

こぼれ日の中で描かれていく画はその地と調和している様で。楽しそうに、「完成なんてないのさ」と言いながら描き続けられた体育館一杯の画は地から浮かんできた様な感じ。制作過程を観て、体育館を訪れてぜひ圧巻されてほしい。

いくらまりえ『HELLO』

西島 雄志 『環 kan』

やませの屋根裏に展示されていた『環 kan』は、西島さんの言葉をそのまま載せておきたい。屋根裏の2つの空間を繋ぐ様に配された鹿は、この言葉を体現していることが訪れるとよくわかる。この空間に立って、感じて引き込まれて欲しい作品。

人の「存在」や、その「気配」に興味がある。

空間に満たされたものを感じ取り、形を与えてみる。 与えられた形から、空間を再構成する。 光を通して感じとる形により、「気配」を視覚化している。

一方で、時間の積み重ねという側面からも「存在」と「気配」を思考する。自らの手で一つ一つ捻り巻いた銅線のパーツを自分 の過ごした時間とし、その集積を用いて形を与えていくことで、時間の概念を加えている。

視覚的な「気配」と、時間の概念から組み立てられる世界を同時に存在させることで二重の構造を空間に作り出し、その現象を 用いて直接的に感覚に問いかけたい。

近年は、「存在」と「気配」を思考する中で、「神」をモチーフに用いている。 「神」とは人が感じ取る「第六感」の別名ではないかと考えている。

西島 雄志
西島 雄志『環 kan』
西島 雄志『環 kan』
西島 雄志『環 kan』

2023年の中之条ビエンナーレも刺激的で意欲掻き立てられる素敵な作品に出会えた。多くの時間をかけて紡がれた作品と対峙することは感動も与えてくれるし、身が引き締まる想いもある。訪れてよかったと今年も想う。
中之条を巡る中で見える景色も訪れてよかったと想う気持ちの一つだと想う。2年に一度は訪れるこの景色が懐かしくも想えてきた。


旅の相棒

アートに触れている時、しっかりと向き合って「記憶」に残したい。2年前も同じことを言っていた。その考えは不偏で、その「記憶」を「記録」にも残したい。そんな時にコンパクトなフルフレームカメラ SIGMA fp L とコンパクトな Iシリーズレンズ は鑑賞の邪魔もせずそっと一緒に寄り添ってくれる。中之条ビエンナーレでのレンズラインナップは、広角の『20mm F2 DG DN | Contemporary』、標準でコンパクトな『45mm F2.8 DG DN | Contemporary』、望遠寄りの『65mm F2 DG DN | Contemporary』の3本。自分の中ではアートを鑑賞するには重装備だが、車で周れる中之条ビエンナーレならではのラインナップで重宝した。


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