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音楽オタク的英才教育

"娘のクリエイティブディレクター補佐"という肩書きで、日々、努力を惜しまずに素敵な娘づくり(子育て)に励んでいる私。

目にするもの、耳にするもの、触れるもの。娘のためになにかを選ぶときは、これは彼女の五感に響くかな、感性が育つかな、とまず考えてしまう、もう職業病です。

もちろん「ほら、素敵でしょ? 心の琴線に触れるでしょ? 娘、気に入ったでしょ?」なんて押し付けるつもりはないけれど、やっぱり反応が薄いと残念だし、やってあげたいけど経済的、時間的にできないことも多く、理想と現実のギャップにひとり悶える、なんて日もあります。あるような気がします。

そんなとき、となりにいる夫はといえば、のんきにお気に入りのレコードを聞いています。スピーカーに向かって、熱い視線を送っています。

あ〜、こりゃ完璧、オタクタイム入ってる…(笑)

音楽(とくに60年代、70年代のもの)を愛して早30年、夫はDJ兼レコードコレクターであり、自他ともに認める立派な音楽オタクです。

結婚後、日本に暮らしていた1年と少しの間、ひらがな、カタカナでさえロクに覚えなかったくせに、酒と音楽を通していとも簡単に友だちを作っていたその姿には驚かされました。こちとら渡仏当初は死に物狂い(すごい言葉!)でフランス語を習得したというのに。まさに音楽は世界共通語

日本の音楽オタクに「いや〜、きみもなかなかのオタクだねぇ」と言われた日には、頬を赤らめて喜んでいました。(いや、赤いのは酒のせいだったかも)優に40も超えているのに、かわいい人。

日本で"和モノ"に出会って心踊らせ、洋モノでも日本盤は音がすごい!帯ヤバい!歌詞カードたまんない!とかなんとか、興奮さめやらぬうちに、とうとう日本モノ専門のレコード(ネット)ショップを立ち上げる始末。

↓ それがコチラ。Nezumi Records ↓

とにかく、そんな音楽オタクの夫ですから、きっと娘にも音楽の英才教育してくれるはず、なんて根拠のない期待を抱いていた私。ところが、肝心の夫ときたら英才教育どころか、子どものための音楽を選ぶことにも聞かせることにも、びっくりするくらい無関心。

「ねぇ、あなた、"子ども 0歳 オススメ 音楽" とか検索しませんの? "3歳までに聞かせたい曲100選" とか読みませんの? 無関心を装って実はすごい戦略、隠してますの? どうですの?」

なんて私の心の声に気付くことなく、夫は自分の好きな音楽を聞き続けます。昨日も今日も、きっと明日も。

そんな毎日が過ぎ、さすがに私も堪忍袋の緒が切れて「もう、あなたに任せてられない!やっぱりオタクはただのオタクよ!」と意味不明なことを言い捨て、自力で娘に聞かせたい音楽を探すことにしました。

まずは日本やイギリスの童謡のレコードを手に入れました。(ちなみに我が家では音楽を聞く=レコードをかける、なのです。あしからず)年代物の音源は生音が耳に優しく届きます。染みるねぇ、いいねぇ。
それから、ムーミン(日)やバーバパパ(仏)など昔のアニメのサントラは、娘の語彙を増やすのにも一役かいました。そのおかげで"どっこいしょ" なんて、昭和生まれの私でも使わない言葉を覚えたり、今では放送(発売)禁止じゃないかと思われる過激な歌詞の曲もしっかり歌えるようになったりと、吸収力抜群の娘。あはは、いいねぇ。
そうこうしている間も、夫はお気に入りのレコードを聞いています。余計な期待をしなければ、自分好みのレコードばかりかける音楽オタク(夫)のことも恨めしく見つめる必要もありません。のんきでいいねぇ。

そんなある日、事件は起こりました。娘がひとりごとのように口ずさむメロディに愕然とする私。えっ、聞き間違い?そんなはずない…!(大げさな)

そのときの曲がコチラ。

「もしかして、もしかしなくても、それって、モリコーネですよね?」

そんな心の声がポロッとでてたかもしれません。だって、当時2歳の娘が映画音楽の巨匠 エンニオ・モリコーネの曲を歌ってたんですよ!しかも、ルンルンと♡

確かにこのレコードは私たち夫婦のお気に入りで、娘が生まれたばかりのころは繰り返し何度もかけていました。その後も夫は、このレコードを棚から取り出しては「娘が赤ちゃんだった頃によく聞いてたんだよ〜、この曲をかけると泣き止んだりしたんだよ〜」なんて言いながらかけていました。

夫の洗脳か、音楽オタクのDNAか。どちらにしろ、この1曲を奇跡的に覚えたのだろうと思い込もうとした私でしたが、数日後、またしてもウキウキと歌う娘に目が釘付けになりました。

そのときの曲がコチラ。

「あらまあ、今度はキンクスですか。イギリスはロンドンのロックバンドですか。しかも英語の発音が私より上手いのは気のせいですか?」

60年代のブリティッシュロック好きの間では、ビートルズよりキンクス派って人も多いとも言われている(夫調べ)わりに、本国以外ではあまり評価を得る事がなかった、そんなマニアックなグループの歌を娘は、童謡 すずめの学校のノリで歌っていました。そして前途のとおり、歌詞の意味もわからず完全なる耳コピだけで、イギリス人の血が通った夫をうならせる発音。恐れ入りました。

気がつけば、日本民謡もレゲエも、ジャズもフレンチポップも、トトロもミッシェル・ルグランも、歌詞があってもなくても、気に入ったメロディはなんでも覚えていた娘。そしてそんなことを気にする様子もなく、あいかわらずお気に入りのレコードを聞く夫。そこでハッと我に返る私。

「音楽オタクの夫が選ぶ良質なレコードを、気付かないうちに聞きまくっている環境。これ以上の英才教育なんてあるかしら?」

胎教にいいクラシックを聞かせるとか、絶対音感をつけるとか、小さなうちから本格的な指導をつけて楽器を習わせるとか、世で言う音楽の英才教育とは似ても似つかない我が家の音楽環境。それでも、クリエイティブディレクター補佐の私からみて、夫の仕事っぷり(英才教育)は、昇進確定もの。なんなら、そんな音楽オタクなところを好きになったのよね、と惚れ直してしまうくらい♡

最後に、今、娘が一番ハマっているのがコチラ。

特に2曲目の「乱れたら」と8曲目の「近頃のネコ」が大のお気に入り。

「みっだれ〜たら♪みっだれ〜たら♪みっだれ〜たら♪あっあ〜、みだれたら〜♪」なんて、ニッコニコで歌う3歳児、もう本当、こっちが乱れそう♡

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