海外アカデミア面接で見られること・聞かれること
海外と言っても、
採用する側だとデンマークで5ポジション(計20候補者程度)、
受ける側だと、アメリカ(2回経験、1回採用)、デンマーク(2回経験、2回採用)とフィンランド(1回経験、0回採用)、
という限られた経験の中ですが、
海外アカデミア面接の実際と、日本(2回経験、1回採用)との違いなどを書いてみます。
※あくまで博士学生・ポスドクレベルの面接です。
「面接に進んだ!」・・・さぁ、どうする?
0. そもそも面接って何するの?
「面接するよ」メールをじっくり読み直しましょう。
プレゼンの有無、方法、時間配分などが書かれているはずです。
多くの場合、
自分のこれまでの研究のプレゼンと、それに対する質疑応答
採用側からのプロジェクトの説明と、それに関する質疑応答
学生・研究者としての人柄に関する質疑応答
その他
で構成され、合計1ー2時間くらいの面接が想定されていると思います。
1番目の「自分のこれまでの研究」に関しては、CVやPublication Listを見ればわかるものとして省略されることもあります。
1.「英語が・・・」
英語レベルや、応募先の環境(ネイティブが多いのか、非ネイティブが多いのか)にもよりますが、少なくとも現所属(南デンマーク大学、非ネイティブ多)では意思疎通ができれば、あまり問題はありません。
もう少し具体的には、
聞き取りが苦手だけど、何回か聞き直せば・表現を変えてもらえば、理解できる
話すのが苦手だけど、言い直すことで伝わる
くらいなら大丈夫です。
一番まずいのは、聞き取れていないのに、思い込みで質問と違う内容を話し始めること。(聞き返すことにシャイな人や、自分を売り込むことに必死な人にありがち。)
「あー、伝わりにくいな」は、大丈夫だけど、
「あー、間違って伝わってるわ」は、将来、一緒に仕事をするとなったときに困るということ。
聞き返すことは必ずしも失礼ではないので、質問内容・意図がわかるまで聞き返した方がいいです。
”What was that?"
"I didn't get the XX part."
"Could you repeat it (slower)?"
"Do you mean XX?"
などが、わりとよく聞く・使うフレーズ。
2.「あなたなら、我々のプロジェクトをどうやって進める?」
これは、ほぼ必ず聞かれる質問。
「XXが本プロジェクトの障壁になっているのだけど、あなたならどうする?」と、さらに具体的に聞かれる場合も。
海外博士・ポスドクの場合、ほぼ間違いなく従事するプロジェクトは決まっているので、自分ならどういうアプローチをするかを考えておきましょう。
もちろん、まだ始めていない研究なのでいわゆる「正解」はありません。
しかし、論理的な進め方は事前に考えられるはずです。
説得力のあるアプローチを提示できれば良し、
採用側が考えていなかったような新しい切り口を提示できればなお良しです。
実際に弊グループには、ここで良い回答をしたために追加で採用されたメンバーもいます。
3.「あなたのできること・やったこと」
これまでの研究やCVに関する質問。
特に、業績や論文共著者が多くて、あなた自身がやったこと(=あなたが持っている技術・知見)が明確でない場合に聞かれます。
正直に答えましょう。
「XXとYYができます」
「論文Aにおいては、私が担当したのはXXとYYの部分です」
採用側は、欲している技術・知見があるはずで、それにマッチする人を探しています。
嘘をついて採用されたとしても、ミスマッチで双方が不幸になるだけなので、正直に答えましょう(大事なので2回目)。
3.5.「あなたのできないこと・やっていないこと(+弱点)」
上記「できること・やったこと」に追加で。
面接で自分を売りたいと思うのは当然です。
なので、ついつい自分のポジティブな点ばかり主張しがちです。
これは、そういう場合にされる質問。
「なんでもできます!」「全部、自分でやりました!」は、(それが真実でない限り)、話をしているうちにバレるものです。
「XXは得意じゃありません」
「XXとYYの部分は、コラボレーターが担当しました」
採用側は、欲している技術・知見があると同時に、提供できるそれらもあります。
嘘をついて採用されたとしても、ミスマッチで双方が不幸になるだけなので、正直に答えましょう(3回目)。
ちなみに私の弱点は、
バイオインフォマティクス
論文を書くのが遅い、上手ではない
人間関係によってサイエンスが遮られるのが、著しく苦手
などです。
4.「これまでの研究で、一番好き・誇りに思うものと、その理由」
意外とよく聞かれる質問です。
あなたが研究者として何を大切に考えているのかが、わかります。
被引用数や掲載誌のインパクトファクターにか関わらず、自分の「心の代表作」(複数でも可)を熱く語りましょう。
(被引用数・IFが誇りならば、それでもいいですが。。。)
5.その他の質問
ここからは、どちらかと言うとサイエンスよりも人柄やチームとの相性に関する質問です。
「どういう研究環境・チームが理想か?」率直にあなたが職場・チームに馴染めるかということと、あなたが入ることで、チームにどういう変化が起こり得るかを知りたい質問。また、ボスとどういう関係を求めているか、も。
「あなたの研究スタイル」ガンガンいこうぜ、バッチリがんばれ、いろいろやろうぜ、など。
「典型的なあなたの一日・一週間」↑とも関連。コンスタントに手を動かすタイプなのか、じっくり考えて一発で仕留めるタイプなのか、など。
「これまでで最悪だった同僚と、あなたの対応・学んだこと」最近、うちのボスが聞き始めた質問です(笑)おそらく、人間関係サバイバル能力を知りたいのだと思います。
「誰が論文の共著者になるべきか」これも、最近ボスが。↑と関連して、これが職場で揉める大きな要因ですから。そして、意外と回答がバラけます。
「10年後の自分」これもボス。特にインターナショナルなラボだと、「いずれは国に帰って」なのか、「デンマークに残って」なのか、「研究者として」なのか、「教育者として」なのか、で採用後に必要な援助が変わる可能性があります。具体的には、授業を受け持たせるか否か、採用者がメインでグラント申請をするのか、など。
「研究費がXXXXX(いっぱい)あったら、何をする?」過去に1回だけ聞かれた質問。未だに何を知りたかったのか、はっきりはわかりません(笑)「興味の対象が、基礎研究なのか、応用なのか」「数字に強いか」とか?
「この公募をどこで知ったか」これは採用には関係なく、単に「どこに宣伝を出すのが効果的か」を知りたい質問。
6.候補者からの質問
たいてい、面接の最後に候補者からの質問に採用側が答える時間があります。
何もなければ、それでよし、
何か気になることがあれば、聞いちゃいましょう。
「今後の採用プロセス」採用側から説明がなければ、まぁ、聞きますよね。いつ面接結果がわかるのか、二次面接があるのか、など。
「着任時期の融通」日本と海外との年度開始の違い、現雇用の終了時期、ビザ・滞在許可の取得にかかる時間を考えると、気になることも多いと思います。こればかりはプロジェクトの状況によりますが、通常数カ月のズレは許されることが多いです。半年以上になると厳しいかもしれません。ちなみに、事前にビザ・滞在許可を取得するのにかかる時間を自分で調べておくと、喜ばれます。
「契約延長可能性の有無」これも聞いて問題ありません。ただしデンマークの場合は、ポスドクでいられる期間に上限があります。博士学生に関しても理由によっては延長申請が可能ですが、基本的には3年で学位取得を目指します。
「給与」とても気になりますよね。海外公募の場合は、明記されていることが多いですが。そう、海外公募では明記されていることが多いですのよ(2回目)(それに対して日本の公募は…)。とはいえ、記載されている給与額と手取り額の差や、現地の物価との兼ね合いなど、気になるものです。実際の私の観測範囲では、これを聞くことで採用にネガティブに働くことはないです。聞いちゃいましょう。
「プロジェクトに関すること」当然、聞いちゃいましょう。「必要な機器へのアクセスがあるか」「いつまでに何報くらい論文を期待しているか」などなど。
7.その他
最後に、これまでの面接経験で感じたことを。
「基本的に相性を見ている」博士学生・ポスドクレベルであれば、あなたの技術・知見とポジションがマッチするか、候補者の人柄とチームがマッチするか、を見ています。したがって、「これまでの研究」に関しても業績の大小・多少よりも、その内容です。
「普段からちゃんと考えているか」基本的には相性で採否が決まるとはいえ、「5.その他の質問」に関する回答があいまいだと、ちゃらんぽらんな印象を与えてしまいます。日常的に、研究、仕事、科学、あるいは人生に関して、しっかり考えているかどうかが大事なのかなーと思います。
「かしこまる必要はない」「仰々しいご挨拶は不要」「ボスもファーストネームを呼び捨てで良い」ラボや分野にもよる差があるかもしれませんが、今まで私が経験した中では、100%カジュアルでオッケーです。むしろ、あまりかしこまって面接そのものにかける時間が短くなったり、「オープンに話ができなかった」と思われるのは悪手です。
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