コミュニティデザインの要諦

コミュニティデザインの第一人者である山崎亮さんは、コミュニティデザインを「人がつながるしくみをつくる」ことだと言っているが、まちづくり分野でのコミュニティデザインのポイントは、「UXの向上」にあると思う。

UXとは、ユーザーエクスペリエンス(user experience)の略で、「人工物(製品、システム、サービスなど)の利用を通じてユーザーが得る経験」のことを言い、日本語では「ユーザー経験」「ユーザー体験」と訳される。まちを人工物とするのには異論も多いとは思うけれど、市民はまちの住み手であり、使い手であるとは言っていいのではないだろうか。まちの使い手である市民に、まちづくり活動に対する体験価値を感じてもらえるように、丁寧にコミュニケーションを設計していく。それがコミュニティデザインの要諦ではないかと思う。

コミュニティデザインは「人がつながるしくみをつくる」ことなのだけど、実はそれだけでは不十分で、そこに体験価値がないといけないのだ。つまり、人とつながり、一緒に活動することが、優れたユーザー体験でないといけない。新しい友人・知人ができたり、気付きや発見や学びがあったり、今までしたことのない体験や経験ができたり、まちやそこに暮らす人の変化が感じられたり…とにかく、活動をすることが楽しい、面白いと思ってもらえるよう「ユーザー体験」を意識した設計、デザインが求められる。それがないと、人がつながるしくみをつくったところで、活動が継続しないし、コミュニティも簡単に崩壊してしまう。

コミュニティデザイナーと称している人は、行政機関から委託を受けて事業を行っていることが多いと思うのだが、コミュニティデザイナーは委託期間中に、「人がつながるしくみをつくり」、コミュニティが自主的・自律的に活動を続けられるようエンパワーメントすることが期待されている。委託期間中には、ヒアリングやアンケートなどの基礎調査をはじめ、ワークショップやフィールドワーク、スキルアップ講座、社会実験など、「人がつながるしくみ」を重層的に展開して、人と人とをつなげていくわけだが、委託契約は基本的に短期間(長くても数年)で終わることがほとんどだ。要するに、契約期間が終了すれば、コミュニティデザイナーはまちから出ていく。

委託期間中は、コミュニティデザイナーがファシリテートするので、コミュニティ活動は活発になるし、人と人とのつながりも強まるのだが、問題はミュニティデザイナーはまちから出ていったその後だ。コミュニティデザイナーがまちから出ていった後も、コミュニティが活発に活動を続けられるかどうか。コミュニティデザインの成否は、まさにそこにある。そして、コミュニティデザインの成功率を上げるためには、「UXの向上」の視点が欠かせない。反対に、UXをどれだけ高められるかが、コミュニティデザイナーの力量と言えるだろう。


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