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ライターさとゆみ今日の一冊

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2018年3月の記事一覧

手触りのある言葉。『似合う髪 美しい髪 新しい髪』(小松敦)_056

手触りのある言葉。『似合う髪 美しい髪 新しい髪』(小松敦)_056

あまりに良すぎて、3順目です。HEAVENS小松さんが書かれた『似合う髪 美しい髪 新しい髪』

書き込みしながらどんどん汚しながら読んでくださいとのメッセージのとおり、私の本はすでに書き込みだらけで、毎日持ち歩いていたので、ボロボロです。

この本は、ヘアデザインについて書かれたものですが、同時に生き方と働き方について書かれた本です。

ものづくりをする人なら、みんな自分の奥底を覗か

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ぐんにゃり。『ぼくたちはなんだかすべて忘れてしまうね』(岡崎京子)_054

ぐんにゃり。『ぼくたちはなんだかすべて忘れてしまうね』(岡崎京子)_054

『リバーズ・エッジ』が公開されるということもあって、いろんな雑誌で岡崎京子さんの特集が組まれている。

交通事故に遭って休筆されてから、もう20年。それでも、こうやって謎解きされる漫画家さん。作家活動が10年ちょっとだったから、ゴッホのような方だと思う。

そんな岡崎さんの、小説。『ヘルタースケルター』や『Pink』などは読んでいたけれど、これは、初めて読んだ。

草間彌生さんには、世

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セミナー講師を目指す人に。『90日で商工会議所にからよばれる講師になる方法』(東川仁)_053

セミナー講師を目指す人に。『90日で商工会議所にからよばれる講師になる方法』(東川仁)_053

女性モードさんの『美容の経営プラン』などでも連載をされている、東川仁さんの書籍。

実は、東川さんとはある勉強会でご一緒させていただいたのですが、あらゆる参加者に気を配り、場の空気を盛り上げ、いろんな人を応援する、とても人格者でいらっしゃいました。

年間200回の講師をつとめる東川さんの最新著作がこの、『90日で商工会議所にからよばれる講師になる方法』。コンサルティングや士業やコーチなど

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夜寝る前に読んでください。『一日がしあわせになる朝ごはん』(小田真規子・大野正人)_052

夜寝る前に読んでください。『一日がしあわせになる朝ごはん』(小田真規子・大野正人)_052

ちょっと前の大ヒット本なのですが、最近、ある打ち合わせと、ある打ち合わせと、ある打ち合わせで、この本のことが話題になったので、やっぱり、いろんな編集さんがベンチマークされている、素晴らしい本なんだなあと、再読です。

再読っていうか、これ読んでよく朝ごはん作ってるので、もう「十何度目か読」なんですが、今回は、ちゃんと全部に目を通してみた。(ほら、レシピ本って、作りたいページしか見ないでしょ)

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好きな仕事でずっと遊んでる。『ANTI小松利幸のAtoZ』(小松利幸)_051

好きな仕事でずっと遊んでる。『ANTI小松利幸のAtoZ』(小松利幸)_051

まだライターになって1年たってないころ、「いつか、この本を超えるような本を作ってみたい」と思ったのを覚えています。

これから、久しぶりに美容業界向けのビジュアルブックに取り組むのと、久しぶりに編集をさせていただくので、原点を思い出すためにも、読み返してみた。今読んでも、全ページ違うレイアウト、全ページにみしみしつまったコンテンツ、登場人物の多さ、など、勉強になることばかりだなあと、あらためて

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小さいほど粋。『スーツケースの中身で旅は決まる』(佐藤治子・madamH)_050

小さいほど粋。『スーツケースの中身で旅は決まる』(佐藤治子・madamH)_050

そういえば、10年前、夫が私の家に引っ越してきたとき、リアルにスーツケースひとつでやってきました。

若者の(当時彼は大学生だった)その身軽さというか潔さに、そのときは驚いたし、うらやましさを感じたりしたのだけれど。

その話とはちょっと別に、出張やバカンスのときのスーツケースの小ささは、女熟練度と比例する気がしていて、小さいスーツケースに、必要十分なモノが入っている女性に憧れます。1週間

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書店の中はひとつの街。『普通の本屋を続けるために』(久禮亮太)_049

書店の中はひとつの街。『普通の本屋を続けるために』(久禮亮太)_049

熊本の長崎書店さんでイベントをさせていただいたときに、書籍業界の流通に興味があるのであれば、と、プレゼントいただいたのが、こちらの『普通の本屋を続けるために』でした。

解説を書かれているのが、長崎書店の長﨑社長。先日お目にかかったとき、書店さんがいま、どれだけシビアな状況に置かれているかを長﨑さんからお伺いしていたので、よりこの本の意義をひしひし感じながら読んでいました。

こちらは、明

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観察による気づきは技術である。『観察の練習』(菅俊一)_048

観察による気づきは技術である。『観察の練習』(菅俊一)_048

蔦屋さんで見かけて、「買おうかなあ、どうしようかなあ」と迷ったのだけれど、今日はいったん帰ろうと思って家についたら、夫がビールを飲みながら読んでいた本です。

『観察の練習』

まず、これ、装丁がものすっごく素敵なのですが、その素敵さが、Amazonなどの書影ではまったくわからず。なので、実物ぜひみて欲しいです。

最近、ある著者さんとお話をさせていただいていて、いかに自分が固定概念に

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人は絆にお金を払う。『人生の勝算』(前田裕二)_047

人は絆にお金を払う。『人生の勝算』(前田裕二)_047

商品を7度目にしたら、人は購買をしたくなるというような話を聞きましたが、いろんな場所でこの本の話を聞いて、購入。

とにかく感じるのは、昭和のにおい。

前田さんの主戦場であるSHOWROOMのビジネスの内容は仮想空間でのライブ体験なのだけれど、その「ネット系」ビジネスの話なのに、一貫して流れるのは、

熱であり、根性であり、共感であり、絆であり、リアルであり、ライブでした。

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欲しい服より足りない服。『My Basic Note Ⅱ』(三尋木奈保)_046

欲しい服より足りない服。『My Basic Note Ⅱ』(三尋木奈保)_046

昨年、ここで書いた『Oggiエディター三尋木奈保 My Basic Note』の第2弾。もう、待ち焦がれていた人、どんだけいたことでしょう。どの書店さんでも大展開の平積みの山ですごい勢いです。

こちらの本の担当編集さんとは、あるトークイベントでご一緒させていただいたことがあるのですが

大ヒット本だったので、すぐに2冊目を出してほしいというあらゆる圧力に耐え、「すべて三尋木さんの私服ばか

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LINEでは書けない。『レター教室』(三島由紀夫)_044

LINEでは書けない。『レター教室』(三島由紀夫)_044

ある編集さんにおすすめいただいて読んだ本。とにかく素晴らしかったのだけれど、この「素晴らしかった」をどんな言葉で表現すると一番粋なんだっけ、と思わず考えてしまって感想を書きにくくなるタイプの、本。

言葉が宝石をぶちまけたみたいに、キラキラ反射しあっていて、もう、読み終わったあとは「文章なんて二度と書けない」という絶望的な気持ちにさせられてしまうくらいに(これは多分、私がライターだから)、言葉

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一般名詞みたいな固有名詞たち。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(燃え殻)_043

一般名詞みたいな固有名詞たち。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(燃え殻)_043

最初から最後までに溢れ尽くす固有名詞の嵐。

六本木アマンドにヴェルファーレ、パルコにむげん堂。
デイリーanにホットドックプレス、オリーブに、ケイタ・マルヤマ、そしてエイプ。

こういう固有名詞が、ただの固有名詞じゃなくって、何かの象徴として、一般名詞に近い感じで使われていた時代が、確かにあった。

この本の主人公とたぶん同い年くらいのワタクシでして、かつ、テレビ業界にいたもので、テ

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不自由がないなら表現なんてしなくていい。『そして生活はつづく』(星野源)_042

不自由がないなら表現なんてしなくていい。『そして生活はつづく』(星野源)_042

『そして生活はつづく』は、星野源さんの処女作。

普段テレビを見ず音楽も聞かない私が、最後に見たテレビ番組が、2016年の紅白歌合戦なのですが、そこで星野源さんが歌を歌っていて、なんとなく、この方が書いた文章を読んで見たいなと思ったら、すみません。たくさん著作が出ていらした。

なかにやしきたかじん風の女心の話が出てくるけれど
それふうにいうと

軽やかに持って行かれ、気づけばずぶずぶ

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3つの崩壊の物語。『夫のちんぽが入らない』(こだま)_041

3つの崩壊の物語。『夫のちんぽが入らない』(こだま)_041

夫婦の物語としても、心の崩壊の過程の物語としても、毒親の呪いの物語としても、ジェンダーの物語としても、それから学級崩壊のノンフィクションとしても読める本書。

タイトルはセンセーショナルですが、中身は、違った意味で、もっとセンセーショナル。

本論とあまり関係ないのですが、途中に出てくるコンタクトレンズの描写に声をあげそうになったのですが、私、ものすごくよく見る夢が、座布団くらいのサイズの

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