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【映画感想】ファーザー(The father)

 映画を見始めてから、何が起きているのか理解できない・・と感じる時間がとにかく長い。この映画を再生して当分は、キャストの顔や服装・言葉を必死に記憶して、伏線を回収するのに必死でした。もしかしたらこの映画に、伏線なんてもの初めから、張られてすらいなかったのかもしれません。

※この映画の衝撃を体験してもらいたいので、まだ観たことがない人はこのブログは映画を観た後に読んでください!

https://www.senscritique.com/film/The_Father/39636164 

史上最高の演技 

 一言で表すとこの映画には、根本に”史上最高の演技力”が存在しています。皆さんは認知症に関連する映画を今まで見たことがありますか?
 私は、この映画が初めてだったのですが、認知症や病気などをテーマとした映画はドキュメンタリー作品が多いイメージがありました。つまり、障がい者を客観的にみた映画であり、当たり前ですが、健常者である以上障がい者の気持ちを完璧に予測することは不可能であるということを、示しているような・・・。

 確かに、同じ人間でも私が知らない立場やそれによる感情ってたくさんあるなと思います。人間は一つの個体でいることしかできないので、いくら知ろうと努力しても努力しようがなく知ることが出来ない感情や時間や空間とか、、悲しいことに想像してみたら意外とありますよね。
 しかし、この映画ではまさに”それ”をアンソニー・ホプキンスが最高の演技力を持って、再現していると言っても過言ではないです。

https://www.moviezine.se/movies/the-father-2020

真実にたどり着くまで続く錯覚

 主人公である認知症のアンソニーを解釈することも、取り巻く人々の気持ちに深く寄り添うこともなくアンソニーが真実にたどり着くまで、余計なものは省かれ、淡々と月日が経過します。このあっさりとしていてけど、謎めいている日常は私まで認知症になってしまったのではないかと錯覚させ、これはアンソニーとともに真実にたどり着くまで続きます。
 この感覚はとても不思議で遠い世界の話のような、だけど誰にでも可能性はある、どこか癖になる怖さがありました。

 映画やドラマには見るものを圧倒し続ける、展開に限界を感じさせない世界観が重要にも思えますが、必ず真実にたどり着けるという”真実”も、私たち視聴者に希望や、安心感を与えてくれます。だからこそクライマックスまでこんなにも、のめり込むことが出来るのかもしれません。


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