見出し画像

全国自然博物館の旅②群馬県立自然史博物館

東京に何年も住んでいる私ですが、群馬県を訪れたことは2回ほどしかありません。そのため地理的にほとんど未知の世界であり、表題の博物館に辿り着くまでに相当な大冒険をしてしまいました(笑)。
そんな旅の苦労を吹き飛ばすくらいに、とても楽しく興味深かった群馬県立自然史博物館を紹介します。


群馬県から地球の未来を考える

群馬県立自然史博物館を一言で表すなら、地球の歴史と群馬の自然環境を同時に学べる博物館です。貴重な学術標本を多数収蔵しているうえに、展示スタイルに工夫が施されていて、生物好き・古生物好きなら何時間でも楽しめる素敵な場所となっています。

巨大なカブトムシの模型が博物館の目印。地球と群馬県の大自然について学びに行きましょう。

展示の流れとしては、『地球の成り立ちと生命の進化について時系列的に学ぶ』→『現代の自然環境(群馬県の動植物と生態系)について学ぶ』→『地球上の生命が直面している問題について考える』という構成になっています。順路に沿って展示を見ていくうちに、来館者は博物館からの強いメッセージを受け取ることになるのです。

古生物ファンなら絶対満足できる自然博物館

恐竜も恐竜以外も充実した展示内容

生き物好きな子供はもちろん、目の肥えた古生物オタクでも、この博物館を訪れたら大満足できると断言します。特に前半での古生代の化石や模型の展示には、きっと感嘆することでしょう。
カンブリア紀の独特な生物群、デボン紀の甲冑魚、石炭紀の巨大昆虫、ペルム紀の哺乳類型爬虫類などの標本がとても豊富! 恐竜の影に隠れがちなマイナーな古生物たちとの出会いは、来館者を新鮮な心持ちにさせてくれるはずです。

カンブリア紀最強の生物アノマロカリスの模型。ジオラマ展示のおかげで、古生物の生きている姿をイメージしやすくなります。
甲冑魚という硬い装甲を持つデボン紀の古代魚。このコッコステウス類は大きな顎を持っていて、噛む力が強かったと考えられます。

そして、誰もが期待するのはやはり恐竜をはじめとする大型の古生物たち。骨格標本だけでなく、実物大模型も接地されていて、中生代の巨大生物たちのスケールの大きさに改めて脱帽します。
ブラキオサウルス、マメンチサウルス、カマラサウルスといった竜脚類(カミナリ竜)たちが立ち並ぶ様はすさまじい。ここまで大きくなると、自然界では無敵ですね。

展示ホールの天井に届きそうな巨大恐竜ブラキオサウルス。全長25 m、体重50 tにもなったと考えられています。こんな大きな恐竜がジュラ紀の地球でひしめき合っていたのです。
白亜紀のダチョウ型恐竜ガリミムスの実物大模型。全長は6 mありますが、ダチョウ並みに高速で走ることができました。現在の研究では、体に羽毛が生えていたと考えられています。

中生代の海洋爬虫類も、マニアならじっくり楽しみたいところ。恐ろしいモササウルス類もいいですが、筆者はフタバサウルスの全身骨格に目を奪われてしまいました。日本が世界に誇る国産の首長竜ということで、しばらくの間まじまじと見つめておりました(笑)。

日本で発見された白亜紀の首長竜フタバサウルス。

新生代の哺乳類の展示も、とても充実していました。かっこいいマンモスやオオツノジカという大衆向けスターを押さえつつ、各分類群のマニアックな種類も見せてくれるとう至れり尽くせりな展示内容で、見終わった後にはきっと古代哺乳類の進化への関心が生まれているでしょう。

オオツノジカの全身骨格。角がすごく立派で、迫力ならマンモスにも負けません。

群馬の自然史と人類へのメッセージ

各県の自然博物館では、その地方の美しい自然について知ってもらいたいという強い想いが発信されています。群馬県は尾瀬国立公園や多数の名山を有しており、展示後半では県内の豊かな自然環境について知ることができます。
学芸員さんたちの地道な研究によって得られた生態系に関する知見は、生物学界の素晴らしい宝物です。群馬県の自然がどのように成り立ったか、そして現在どのような状態にあるのか、じっくりと時間をかけて学んでいきましょう。

群馬県の山林の生態系を構成する動物たちの剥製。イヌワシかっこいい!
淡水魚の水族展示もあります。群馬県の水域環境に生息する魚たちです。

森の中のような群馬県の展示を抜けると、階段で上階へ上がります。2階の展示では「自然界におけるヒト」コーナーが特に興味深かったです。個人的に霊長類が大好きなので、サルに関するたくさんの学術資料が見られてハッピーでした。

類人猿と人間の骨格の対比。他の霊長類と比較しながら、人類の進化を丁寧に説明してくれます。

生命の進化を見てきた旅のラストは、来館者に向けたメッセージで締め括られています。人類の活動によって地球上から絶滅した動植物は数多く、地球環境と生き物たちの未来について考えることは私たちの重要な役目だと思います。
絶滅動物たちの展示資料は、「失われた種は二度と戻ってこない」という事実を雄弁に語っているように感じられます。

水・土壌・動植物を一緒に入れて、閉鎖生態系としての地球をモデル化した「エコボール」。球体内部の調和が自然界の循環と似通っており、地球環境が絶妙なバランスの上で成り立っていることを教えてくれます。

群馬県立自然史博物館 総合レビュー

所在他:群馬県富岡市上黒岩1674-1

強み:あらゆる時代の古生物についての豊富な展示資料、地元ならではの群馬県の自然環境に関する膨大な量の知見、多数の実物大模型や剥製による視覚的インパクトの強さ

アクセス面:最寄り駅(上信電鉄の上州七日市駅)から徒歩20分ほど。地方鉄道に乗って旅したい人は、徒歩移動の許容も致し方なしと割り切るべし。暑い真夏など歩くのが大変な期間中は、高崎駅周辺でレンタカーを借りるか、上州富岡駅で降車してタクシーかレンタル自転車を活用推奨!

壮大なスケールの地球史と、群馬県の自然環境や動植物ーー地球規模の視点とスポット的な視点の両面で自然科学を学べます。大型博物館ならではの迫力満点の化石展示に加え、関心をそそるキャプションが素晴らしいです。
なお、地方の博物館あるあるですが、アクセスに少々手間がかかります。しかしながら、労力をかけてでも来館すべき学術施設だと思います。群馬旅行の際には、富岡製糸場とセットで本館を楽しみましょう。

博物館の最寄り駅の上州七日市駅。駅舎の中には図書室があるので、読書しながらゆっくり電車を待ちましょう(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?