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社会思想史②宗教改革におけるルターとカルヴァン

○ルター
ローマ教皇庁がサン・ピエトロ大聖堂を建てるための資金欲しさで始めた免罪符。これは「これを買えば、あなたの罪は許される!」といって教皇庁が販売したものであった。これに怒った当時ヴィッテンベルク大学神学教授のマルティン・ルターはヴィッテンベルク教会の門に「九十五箇条の論題」を貼り付け、民衆に「ローマ教皇はこんなに腐っている!」と言うことを訴えた。また、彼は今まで一部の人しか理解することができなかった聖書を翻訳し、誰でもキリストの教えを知れるようにした。

彼が主張する中で最も重要な意味を持つのが、『キリスト者の自由』において登場した「信仰義認説」だ。

彼はいう。「神からの恵みを体験することこそが正しい信仰である(心からの信仰が正しい)。教会がしているよくわからん救済は外面だけの侵攻だから無効だ!」

また、「万人司祭主義」も主張した。

「クリスチャンは何者にも縛られない。唯一縛られるのは全てのものに奉仕する私自身である。よって、教会の司祭に従うことはない。自分自身が司祭となり、信仰し続けなさい。」

彼のこの主張は「自由には2種類ある」と言うことを示している。
①外面的自由・・・人間は重力などの自然によって体は支配されいている。
②内面的自由・・・政治家の慎重な考え方が古くから続いており、変わることはないだろう。

そして、彼は労働に関してこのようなことを言っている。

「信仰すると、自分以外の何者にも縛られない自由を手にすることができる。そうすると、労働がしたくなる。「生きるために働く」のでも「神に救われるために働く」のでもない。信仰した時点で神によって救われているのだから、労働は「信仰していますよ」と言うアピール(表現、実践)のために行われるものだ。」

○ルソー思想の社会影響
マックスウェーバーによれば、ルターの思想で人々は自らの職業に宗教的な意味を見出すことができるようになり、自由な信仰を実践できるようになった。その結果、カトリック教会や聖職者を必要としない生活をすることができるようになった。また、自分が生産したものが他者を幸せにすることをキリストの教えである「隣人愛」を実践として理解されるようになった。
ウェーバーは「プロテスタントの思想が資本主義の発展を促進した」と最終的には主張するが、この段階では、完全に資本主義の発展に貢献できる素材(思想)は揃っていない。

○ジャン・カルヴァン
カルヴァンがルターの教えに+αした思想は「二重予定説」である。

これは「人は生まれる前から天国(永遠の生命)に行くのか、地獄(永遠の断罪)に行くのかが決まっている」と言う考えだ。

「神は絶対正しい。人間(全員が怠惰)は理由があって生まれてきたわけではない無価値な存在である。もし神が人々の努力を見て行先を決めるのであれば、神のご判断は正しくなかったと言うことになるからだ。」

しかし、この考えはルソーの考えを否定するものでもある。
なぜなら、ルソーの「信仰(努力)すれば自由になって救われる(天国に行ける)」と言うのは絶対ではないと言っているからだ。

○ルソーとカルヴァン思想の社会的影響
こうして、ルソーの「職業使命感」(働きがい)がカルヴァンで「天職」(自分にあった職業を見つけるまで転職する)に変化し、「世俗内禁欲」(余計な散財はしない)と予定説が加わったことで資本主義が発展する地盤が整った。
なぜ、カルヴァンの思想でこうなったか。ウェーバーによれば、自分が救われるか救われないかがわからない状態で孤独感が生まれる。その孤独感を忘れたいがために転職を繰り返してまでも仕事にのめり込み、心を押さえつけて信頼を勝ち取るようになる。そして、儲けることができたら、「自分は救われる人間なんだ」と信じることができるようになり、安心すると言う(儲けられたからと言って救われる人間だと断定することはできないのに)。
この考えは「他者のために(隣人愛を証明するために)仕事をする」ルソーの利他主義から、「自分の孤独感を紛らわせるために、安心するために仕事をする」カルヴァンの利己主義へと変化していったことがわかる。
こうして、資本主義はさらなる発展を遂げ、ヨーロッパ中に広がることとなる。

https://www.istockphoto.com/jp/ベクター/16-世紀の宗教改革-を説教-gm891437066-246865133


参考文献
坂本達哉(2021)『社会思想の歴史』名古屋大学出版会

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