なぜ第一次世界大戦が起こったのか。社会学的考察

社会学者ゲオルグ・ジンメルは、集団が大きくなっていくにつれて、集団の内部にいる人々の個性が際立つようになるというプロセスを明らかにした。
規模の小さな集団AとBがあり完全な内部統制ができている状態だとする。この状態では集団A、Bのメンバーはみんなほとんど一緒の方に感じられている。だが、集団AとBを比べると個性ははっきりしている。
ではこの状態で集団Aの1人が集団Bの1人に危害を加えたとしよう。すると、集団Bは「自分の集団に危害を加えられた」と思い、「被害を加えた集団Aに制裁を与えなければいけない」と思う。つまり、危害を加えたのは「1人の人」ではなく「集団を代表する人」として認知されるのだ。小さな集団で個性がない状態ではこのような危険性がある。
一方、集団の規模が大きくなるとどうなるだろうか。集団の規模が大きくなり、成員が多くなると、必然的に競争も激化してくる。その競争に勝ち抜くためには「個性」を磨き、必死にアピールしなければならない。よって、集団内では多様性が溢れ、個性豊かな人たちが多くなっていくという。

この理論を聞いてはたと気づいた。これは第一次世界大戦勃発を説明できるのではないかと。

第一次世界大戦以前の国際社会はバランスオブパワーを前提とした勢力均衡方式を採用していた。つまり、利害を共有する国同士が好きに集まり、互いに軍事力のバランスを保つことによって国際社会の秩序を維持しようとしたのだ。そのため、相対的に見ればこれは規模の小さな集団が蔓延る状態だったと言えよう。また、当時は戦争が絶えない時代でもあったため、ナショナリズムを国民に植え付けていた時代である。つまり、集団統制が働いており、個性が際立っていなかった。
そして、第一次世界大戦の契機となったサラエボ事件。1人のセルビア人青年がオーストリア皇太子夫妻を暗殺した事件であるが、これによりオーストリアは起こってセルビアに戦争をふっかける。
ここでのポイントは「セルビア人の」青年が「オーストリア」皇太子夫妻を暗殺し、「オーストリア」が「セルビア」に戦争をふっかけたと言うことである。もしかしたらここに勃発の原因が潜んである可能性がある。

「相対的に」と書いたが、第一次世界大戦以降の国際社会は集団安全保障方式を採用した。つまり、逸脱行為をする国を世界全体で抑えつけようとしたのだ。そのため、相対的に見れば規模の大きな集団が形成されることになる。

現代では、他国の貿易がなくてはならないグローバル化の時代となり、国境を越えることなどしょっちゅうになってきた。よってSDGsなども「多様化」といったキーワードが聞かれるようになった。これは国際社会の規模が大きくなった結果だと考えることができる。

しかし、あまりよく考えなかったが第二次世界大戦勃発の原因はどう説明するのかと言うことは問題になるのかもしれない。「うまく組織の大規模化がなされていなかった」と説明することは可能かもしれないが。

ゲオルグジンメル(1998)『社会分化論』

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