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(感想)役者が役になるまでに

(以下、筆者Xアカウントより転記)

映画『王国(あるいはその家について)』観賞。興味深く引き込まれた。娯楽的面白さではなく、思考的面白さみたいな。役者が脚本を読み、役を獲得していく過程を追ったドキュメンタリーと言えばいいのか。いろいろな観点がある作品だと思うが、私は「役になること」と共に「物語の密度」が気になった。

ドキュメンタリー的な作品だということを知らずに観たら「何、どういうこと?」となって、それも面白かったのかもしれないが、こういう作り方だと知らなければ私は観なかったと思う。難しい……。

私は劇作品を物語読解の方向から観てしまうので、役者の演技面、「役者が役になる過程」を追ったこの作品が、私に足りない視点を教えてくれたように思えてありがたい。「役が降りてくる」なんてことはそうなくて、役者に馴染むまでの過程が存在しているはずなのだ。

「役になること」がどういうことかは言語化し難いものだと思うのだけど、役になるためにやることの多くが、セリフを口にしていくことだと思うので……。言語化し難いものを言語で獲得するという、役者という存在はなんてことをやっているのだろう。

言語化し難いものを言語で獲得する、その助けになるのが「物語」で、それは「物語の背景」を想像することで深化するのだと思う。

映画からは少しずれるが、小説は「物語の密度」が非常に高い表現形態で、いい小説はその密度を感じさせるのがうまいのではないかと思った。映画はどうだろう、密度の時もあればそれではない場合もあるような気がする。

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