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記事一覧

中園くんがまた新しい絵を見せてくれた。

(水田紗弥子 | Little Barrelキュレーター)

中園くんがまた新しい絵を見せてくれた。塗りの美しさ、風景のような人物とレイヤーの複雑さ、彼自身が自転車で疾走しているイメージそのままの流れていくような背景や、たくさんの目、目、目。そう思うと洞窟壁画のような作品もあり、中園孔二像が常に更新されていく。ドローイングも、ドローイングメモも、リカちゃん人形も、意外性がつぎつぎに登場する展示だっ

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File.17 塩のレースが描く、思い出と向き合う時間 山本基さん(美術家)

File.17 塩のレースが描く、思い出と向き合う時間 山本基さん(美術家)

山本基さんの作品は壮大だ。塩を使って床面に絵を描くインスタレーションは私も何度か体感している。夜の海や、静かな教会に足を踏み入れるような、静謐で祈りのような体験を思い出す。塩という身近ではあるが、アートにとっては特殊な素材を使って、広大な面積に描く制作の準備やプロセスとは、どんなものなのだろう。娘さんとの生活を大切にしながら亡くなった大切な人たちへの想いに向き合う山本さんに、金沢のご自宅からオンラ

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File.24 モノから引き出される心象風景Namiko Kitauraさん(写真家)

File.24 モノから引き出される心象風景Namiko Kitauraさん(写真家)

Namiko Kitauraさんは、人や風景などを撮影しつつも、抽象的で普遍性のある写真作品を制作している。ご自身の写真作品発表と並行してファッションブランドや、雑誌、企業の広告、建築プロジェクトとのコラボレーションなど、国内外での活動は多岐にわたる。しかし、どのモチーフでも、どういったプロジェクトでも、彼女の写真作品は静けさ、物哀しさなど、誰もが抱える寂しさや孤独に触れてくる。そして、そこに光や

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File.37 つながり広がる、独立系フェスティバル 韓成南さん(アーティスト/IAFTディレクター)

File.37 つながり広がる、独立系フェスティバル 韓成南さん(アーティスト/IAFTディレクター)

韓成南さんはアーティストとしてご自身の制作を行いながら、Interdisciplinary Art Festival Tokyo(以下IAFT)という、オルタナティブなアートフェスティバルを継続して開催している。作品制作を継続しながらアーティストを繋ぎ、特定の場所や固定のメンバーを持たずにフェスティバルを継続している。アーティストが主宰するオルタナティブスペースはあっても、継続したフェスティバルを

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File.42 混沌から引き出される静謐 榎園歩希さん(美術作家)

File.42 混沌から引き出される静謐 榎園歩希さん(美術作家)

榎園歩希さんの作品には抽象的な記号のような、微生物のようなイメージが繰り返し登場する。静かで心が落ち着くと同時に懐かしい風景のようにも見えてくる。数字に色や性別を感じ、共感覚を備えていた子どもの頃を思い出す作品なのだが、その原点にドイツで受けたシュタイナー教育があると知り納得した。東京を離れて、大分県に移住されたばかりの榎園さんにご自身の活動をお話しいただいた。
取材・文=水田紗弥子(キュレーター

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File.03 拡張し、変化し続ける絵画 野原万里絵さん(画家)

File.03 拡張し、変化し続ける絵画 野原万里絵さん(画家)

野原万里絵さんの作品には、古代の文字のような不思議な形や、地形をトレースしたような線の重なりなど、既視感があるけれどどこで出会ったのかわからないイメージが登場する。大阪の共同スタジオ、Super Studio Kitakagayaを拠点に画家として活動している野原さんの制作プロセスは、素材集め、素材から形や線を抽出する方法、抽出した線や形の組み立てや構成、それを表すための器具づくり、紙やパネルなど

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File.44 身体を聞き、空間を聞き、世界を探る 山崎阿弥さん(声のアーティスト/美術家)

File.44 身体を聞き、空間を聞き、世界を探る 山崎阿弥さん(声のアーティスト/美術家)

山崎阿弥さんは、音を扱うアーティストだ。鑑賞者は人間の身体のどこからこんな声が出るのか、と常に驚かされる。身体を楽器にし、空間の響きも活用しながら、鑑賞者に「聞く」という体験をさまざまな角度から共有する。身体にはこんなにも可能性と潜在的な力があるのだと山崎さんの表現や思考の過程を知ると気づかされ、普段いかに身体に向き合っていないか身につまされる。まずはYouTubeの動画を見てからインタビューを読

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File.29 福祉を掘り下げ、アートを切り拓く 櫛野展正さん(アウトサイダー・キュレーター)

File.29 福祉を掘り下げ、アートを切り拓く 櫛野展正さん(アウトサイダー・キュレーター)

櫛野展正さんはアウトサイド、いわゆる周縁にいる人たちの表現を扱って仕事をされている。主に「クシノテラス」という拠点(現在ギャラリーとアートスクールは休止中)を中心に、作品の紹介、販売など幅広い活動を行なっている。肩書きはアウトサイダー・キュレーター。それはすさまじい取材力で、人間の本質にある表現の底力を私たちに届けてくれる。その活動やきっかけについてうかがった。
取材・文=水田紗弥子(キュレーター

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