企業のSDGsの考え方.2 SDGsをを取り入れる目的

前回、企業のSDGsの考え方として、経済の外部性について述べました。
これはあくまでも考え方の1例であって、すべてではありません。しかし、単にSDGsを取り入れるのではなく、「どのように取り入れるのか」を考えるとき、経済理論という確立した法則に従って考えることで、SDGsが生きた考え方になるということをお伝えしたいと思いました。

SDGsは、皆さんご存知の通り、国連総会で定められたか2030年までの指針です。約10年で、これを実際に企業の目標にするには、かなりしっかりとした戦略が必要になりますし、さらに実現するとなると、かなり難しいかと思います。
SDGsは、2000年のサミットで採択されたMDGsから継承されたものですが、MDGsの目標が達成されたわけではなく、継続的な目標として、拡大して続けられているもの。しかし、目標達成には、まだ様々な困難があります。

そこで今回は、もう一歩踏み込んで、企業がSDGsによって、何を実現するかを考えたいと思います。

・SDGs導入の効果
ほとんどの企業にとって、SDGsを導入したからといって、直接のメリットは、皆無と言ってよいでしょう。認証を取得しても、企業戦略と直結していなければ、費用の拡大と、業務効率の低下を招くだけだと思います。

かつて2000年前後に、日本でも多くの企業かISOの認証を受けました。中小企業でも取得した会社が見られました。しかし取得や更新のコストや業務効率の実質的低下というデメリットから、更新を行わない中小企業も見られます。

ISOを取得した企業の多くは、それによって、例えば品質を保証されるといった、いわゆる「ブランド化」を望んだ企業が多いのですが、今回のテーマであるSDGsも含めて、こうしたものは基本的には、ブランドとしての強みを構築することはありません。

大企業であれば、コンプライアンスの一貫として必ず導入するので、消費者から見れば、自分たちの生活と関わりがなく、すぐに一般化してしまうためで、新たな競争力にはなりません。

また消費者から見れば、SDGsやISOが、購入時の、重要な選択基準となる製品・サービスは、皆無に等しいでしょう。
この理由として、以前、「スイッチング・コスト」について説明しました。
これは、現在使用している製品・サービスを他のものに変えさせるためのコストで、「金銭的コスト」「手間コスト」「心理的コスト」の3つが、現在支払っているコストを大きく下回らなければならないというものです。

特にSDGsは、そもそも社会の「指針」ですから、選択するコストですらないため、差別化要因にはなりえないのです。
もし、SDGsがビジネスチャンスになり得るのであれば、例えば自社のブランド・アクティビズム(企業の姿勢や立場)が、これからの社会の指針と合致して認識されるときなどです。

・消極的導入と積極的導入
SDGsをはじめ、こうした指針や考え方の、企業の取り入れ方について、僕は以前から、消極的導入・積極的導入というふうに、分けて考えています。

■消極的導入
消極的導入とは、簡単に言えば、目的もなく、ただ利益のためにコストをかけて導入することを指します。
このような導入方法では、コストの増加と業務効率の低下を招くだけで、効果は得られません。
極端な言い方をすれば(僕はそうは思っていませんが)、世の中の多くで語られる、表面だけの「ブランディング」と同じと言えるでしょう。

こうしたものは、、、2、3年もすれば、机の引き出しの奥底で眠るのが関の山です。

■積極的導入
これに対して、積極的導入とは、自社の考え方や立場(ブランド・アクティビズム)を明確にし、将来の社会の指針に合わせた、経営戦略を考える基準とすることです。

SDGsを見れば、今後約10年で、社会がどのように変わるべきなのかが、細かく記されています。
こうした指針が明らかでなかったとき(MDGsのように広く認識されていなかったとき)は、社会情勢などの様々な指針から、この後の社会の指針を、自身で紐解かなければなりませんでした。
しかしSDGsは、世界的な目標として学校教育にまで取り入れられているわけてわすから、至れり尽くせりです。

・目標としてのSDGs
今後、社会がどこまで発展できるかは判りません。僕個人の見解としては、2030年の、SDGsの実現はかなり困難だと思います。しかし、少なくとも10年後には、小学校からSDGsについて教育を受けた子供たちが、多くの企業に新入社員として入ってきます。

このとき、今回のオリンピックで問題になった人達のような考え方の企業では、人材を確保できないどころか、企業として社会から認められず、存続すら危ういでしょう。

つまりSDGsとは、既存の価値観の、パラダイムシフトの基準とかんがえるべきです。

だからこそ、企業はSDGsを導入する目的と戦略を、真剣に考えなければなりません。

あと10年、時間はそれほど残されていません。

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