マネジメント なぜ企業に長期的な視点が必要なのか

今年初の有志勉強会では、イノベーションについてお話ししました。イノベーションという言葉は、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが生み出した言葉で、景気循環理論を基に考えられたものです。

景気循環理論は、広告デザイン専門学校、マーケティングの講義でも、「経済学」の回に説明している基本的な内容で、主に4つ、キチンサイクル、グジュラーサイクル、グズネッツの波、コンドラチェフの波などがあります。
VUCAの時代と言われるようになって随分時間が経ちますが、予測が難しいじだいだからこそ、こうした理論をと参考にする必要があります。

キチンサイクルは約3年、グジュラーサイクルは約10年、グズネッツの波は約20年、コンドラチェフの波は50年単位の循環になりますが、将来予測をするためにはより長い時間の変化を考える必要があります。

・メガトレンドを考える
勿論、将来を正確に予測することは困難ですが、実は長期的な変化ほど、予測しやすく、短期的な変化ほど予測が難しいです。そしてこのためには、‘大きな流れ’とあるように、マクロの視点が必要になります。
より大きな、長期的な流れをメガトレンドと呼びます。メガトレンドとは、辞書では以下のようにあります。

メガトレンド【megatrend】
時代の大きな流れ。趨勢すうせい。米国の未来学者ネイスビッツ(J.Naisbitt)の著書「Megatrends」による語。   (大辞泉)

何度も書きますが、メガトレンドは非常に大きな変化ですから、止めることは困難(ほぼ不可能)です。例えば産業革命後の工業化、フォードシステムによる大量生産、生産の自動化、インターネットなど、一旦動き出せば、新たな大きな変化によって寿命を迎えることはあっても、自然にそれ以前の社会に戻ることはありません。

今の私達の社会で考えるなら、SNS、AI利用の進歩、先進国における少子高齢化、脱炭素、社会の多様化、格差の拡大などがメガトレンドに当たります。これらの変化は、次の大きな変化が起こるまで、止まることや元に戻ることはありません。
例えばこの文章を書いていて、気になって調べてみたところ、最初のAIブームは1960年代です。そうこから考えると、近年のAIブームは「コンドラチェフの波」に一致します。

それではなぜ短期的な将来予測が難しいのでしょうか。

短期的な変化は、様々な要因で起こります。一時的なブームやアクシデント、突発的な自己や人為的ミスなど、かなり偶然の要素が含まれます。

例えば皆さんの生活を例えに挙げましょう。
年間計画なら、よほど大きなことがない限り、それほど変わることはありません。しかし短期的な予定は、天候や体調だったり、急な変化で変わってしまうことは避けられません。だから大切な用事は、例えば天気の長期予想などといった、できるだけ長い変化を基に予定を立てます。
つまり、人はそもそも長期的な予想を基にするべきだということを知っているのです。

・経済学者の視点
自動車業界で、電化や自動運転の実現が目の前に迫り、いよいよ「CASE」が現実味を帯びてきました。「100年に1度の大変革」と言われていますが、、、僕からするとちょっと不思議な感じがします。
1908年の‘フォードT型’発売などは経営学では基礎として学びます。そこから考えると、現代の自動車産業の歴史は100年余り。「100年に1度」ではありますが、‘まだ100年’という印象が強いです。
経済学者からすると、産業革命以降だけを見ても、約200年を考えます。そうすると、10年はかなり短い時間です。3年など短期的な変化とも言えます。

そう言えば、新型コロナウイルスの影響は3年でした。

経済学者は、一般の方よりもかなり長い過去を見て、かなり長い未来を考えます。だからこそ、将来を予測することができます。

・企業に必要な長期的視点
僕は企業経営のお手伝いの1つとして、戦略提案を行います。これは「この会社はこうしなさい」というものではなく、経営者の方のビジョンを明確にしたうえで、実現のためのプロセスとマイルストーンを共に考える、もしくは提案する作業です。

このとき、必ず話すことの1つに「中計病」があります。

「中計病」とは、企業の経営計画で、3年を基本とした考え方。主に大手企業の経営者の任期を基本とした考え方です。
しかしこれまでも述べたように、3年は、社会の流れを考えれば、あまりにも短すぎます。こんな計画で、戦略が立てられるわけがありません。
勿論、株主や銀行への説明が必要なので、こうした資料は‘業務上’必要なのですが、これを経営判断の基準にするのは、大きな間違いだと考えています。

ドラッカーの言葉を借りるなら、企業は多くの人が関わる最も大きな社会です。つまり経営者は、関わる人のリーダーです。

だからこそ、企業(経営者)は、より大きな視点を持つ「責任」があると考えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?