【古代中世言語好きがオススメする歴史漫画(1)】『バビロンまで何マイル?』の図書室シーンは特に本を愛する人にはたまらなく魅力的!

古代ギリシア語や中世ラテン語にどっぷりハマり、リアル書店という場をこよなく愛する(というか自分でいつか経営したいとまで思っている)私のような人間にとって、少女漫画家の川原泉先生は熱烈リスペクト対象です。

「少女漫画だから」ということで敬遠している人がいるとしたらあまりに勿体ない!

最近読んだものでは、『バビロンまで何マイル?』がとてもよかった。

こちらはタイムスリップSFもの、ということになるのでしょうが、

川原泉先生の歴史や本に関するマニアックな知識が膨大なセリフの中に詩のように埋め尽くされてくる、もはや音楽のように浸るしかない作品ですね。

たとえば主人公のボーイフレンドの来歴を示すコマが、こんな感じ↓

ボーイフレンドが金髪碧眼なことを説明するのに、「ハーフだから」と説明すればいいところを、この細かい歴史解説(笑)!

「ここに書かれている歴史的事件をどれだけ知っているかな?」という、歴史マニア読者への挑戦状に等しいコマですな。

とりわけ読書好きにたまらないのは、図書室の以下のやりとり。

チャーチルの自伝からプロレタリア文学からサブカルファンタジーまでを網羅するこのセリフの情報量は凄すぎる!読書マニアなら「あ、これ読んだことある、これも読んだことある!」と叫んでしまうのではないでしょうか。もはや少女漫画のターゲット戦略を逸脱している表現ですな。

こんなふうにマニア向けの情報を練りこんで「どれだけ知っているかな」と挑戦してくる作風の作家さんかと思いきや、かなりタチの悪い知的イタズラも仕掛けてくるので侮れない。たとえば以下のシーン。

このページを初めて読んだ時の私、既に中年のおじさんなので、まったくイタズラだとは気づかずに、「カーラ・イズミールの『幻想世界の存在』? 私の知らない作家さんだろうか? 私の知らない名著か?」と思ってしまい、「カーラ・イズミール」なる著作家を図書館で検索してしまったのですが、どうにも出てこない。

ナニモノだろう、と首をかしげながら、ふとイヤな予感がして、川原泉先生のファンたちが作るサイトをのぞいてみると、

「カーラ・イズミール」=「川原泉(カワハラ・イズミ)」。川原先生が自分の名前をもじってしばしば作中にまぎれ込ませる偽名である。

とのこと。フェイクか!おじさん、引っ掛かっちゃいました、、、。

『バビロンまで何マイル?』は、森で出会った小人に「タイムスリップができる指輪(ただし行き先はランダム)」を貰った現代日本高校生の男女二人組が、世界史のさまざまな時代へ飛んで冒険をする物語・・・というつもりだったと思われるのですが、

最初に飛んだルネサンス期のイタリアでチェーザレ・ボルジアに雇われるというエピソードの展開があまりに細かく深く長くなりすぎて、けっきょくそのイタリア編だけで物語が完結してしまったという不思議な仕上がりの作品!

ルネサンス、特にチェーザレ・ボルジアの時代が好きな人にはたまらない作品ですが、ぜひとも、この調子でもっと様々な時代にも飛んで一大長編シリーズにしてほしかった!!

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!