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「戦争の時代にあなたの映画『サクリファイス』を見て心から震えました。その気持ちをここに記します」【拝啓、アンドレイ・タルコフスキー監督】



拝啓
アンドレイ・タルコフスキー様

あなたがソ連から西側へ亡命したのが1984年。

そして遺作となる『サクリファイス』を完成させたのが1986年とのことですね。

それから随分時間が経ち、私は2022年というタイミング、

日本でのゴールデンウィークと呼ばれる休暇期間中、ついに『サクリファイス』を鑑賞しました。

あなたがこの映画に込めた、反戦の思い、世界への愛、そして犠牲の精神。それらすべてに、私は心打たれました。

残念ながら、2022年の5月。

世界はまた、世界大戦の危機に晒されています。

『サクリファイス』の中盤。それまでのどかな田舎村の静寂を、突然、軍用機の爆音が打ち破り、ミルクの入ったガラス瓶が床に落ちて砕け散るシーンがありましたね。まさに「戦争」の表現として、戦慄しましたが、あのようなことが、今の世界で、また現実に起きています。

また、まもなく核爆弾が落ちるかもしれないという恐怖の中、寝かしつけた子供を起こさないようにするシーン(どのみち世界が滅ぶなら、このまま子供は眠らせておいて、何も気づかないうちに、恐怖のないうちに終わらせてあげたい、という複雑な親の気持ち)には、すすり泣きました。

日本語でいう「ネタバレ禁止」を意識しているため、ここにラストの展開は書けませんが、

見方によっては映画史上究極のハッピーエンドであり、それと同時に、見方によっては映画史上究極の残酷エンドである、あのラストには、むせび泣きそうになりました。

私が、あの主人公と同じ立場だったら、同じことができたでしょうか?

わかりません。

わかりませんが、こんなにも、この作品が私の心に今回、突き刺さったのは、

まことに残念なことに、今まさに、あなたの生まれた旧ソ連邦に、そしてヨーロッパに、「戦争に怯える無力な人々」がたくさん暮らしているからであります。

残念ながら、世界は20世紀の暗黒の時代を、まだ振り払ってはいないようです。

ですが、まさに、そんな2022年。戦争のニュースに溢れている今だからこそ、この『サクリファイス』は輝く映画ではないでしょうか。そう思い、周りにも、ぜひ、この映画を薦めたいと思っています。

思っているのですが、、、ただひとつだけ。

あなたの映画の、たいへんな長さは、もう有名ですし、私も覚悟して観ているのですが、、、いや、やはり、今回も中盤に集中力が切れてしまい、かなり辛かったですw(あ、この「w」マークは、日本のネットスラングです。好意を持っての、苦笑いと、解釈ください)。

しかし、ラストの30分は、

「ああ、そういう展開に向かったか!」

と叫びたい思いで鑑賞していましたし、ラストシーンにただただ、打ちのめされ、感動しました。

どうやら、世界は、まだ「良い世界」とはいえないままですが、

あなたの作品『サクリファイス』を、周りの人にも薦めていきますし、ロシア語を勉強しているおかげでロシア人の知人も何人かいますが、ぜったい、彼らには、あるいは、彼らにこそ、観てもらおうと思います。

こういう映画の、地道な口コミでの広まりが、きっとバタフライ効果のように、いつかどこかでは、戦争や核攻撃への抑止につながることもあるかもしれないと信じて、、、

「わずかな希望を信じる」それが、『サクリファイス』のテーマだと思っておりますので、私も、わずかな希望を信じることは続けます。

たとえこの映画のラストのように、「わずかな希望のために行動する」ことが、戦慄するような結末をもたらすことになるとしても。

タルコフスキー様。このような映画を我々後世代に遺してくださいまして、本当に、ありがとうございました。


子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!