【声劇台本】040「夏の涙」

今日は悲恋系ドラマをお送りします。90秒ドラマです。どうぞ!

■人物
雅也くん(17)高校2年生。
菜穂ちゃん(17)高校2年生。

■本編
雅也のMO「溢れる涙を止められなかった。彼女がこの世からいなくなる。そんな夏が迫っていたなんて。あの時の僕には想像することもできなかった……」

菜穂「ねえ、雅也。本の交換こしようよ」
雅也「え?」
菜穂「私の本と、君の本! 交換しよ!」
雅也「はあ? 無理。いまいいとこなんで」
菜穂「えーっ。いいじゃん、ケチー!」
雅也「俺の読書の楽しみ、邪魔しないでもらえます?」
菜穂「えーっ!」
雅也「読み終わったら交換してやるから」
菜穂「今がいいの!」
雅也「急なんだよ」
菜穂「だって……」
雅也「何?」
菜穂「……私の本をね、君が持っていてくれたら、例えば明日私が死んじゃっても、私の存在は君の中で生きるんじゃないかなーって! 私の本を見れば、私を思い出す的な!」
雅也「何だそれ。なんかの呪いかよ」
菜穂「急にそう思ったの! だからお願い!」
雅也「あのな……お前は、いっつも思いつきで行動しすぎ。俺の都合も考えろ」
菜穂「雅也だから、いいじゃん!」
雅也「俺の都合は無視かよ……」
菜穂「私たち読書仲間なわけだし! 面白いの貸すからさ!」
雅也「お断り。それより、お前、本に夢中になりすぎて、事故とか起こすなよ」
菜穂「私そんな間抜けじゃありません! もういいよ! 雅也のケチケチケチー!」

雅也のMO「あの時、なんで俺は彼女と本を交換することを拒んでしまったのだろう。その日の帰り、彼女は事故に遭い、この世からいなくなった……」

菜穂「雅也! 本の交換こしよ!」

雅也のMO「君のその声、その言葉。もう二度と聞くことができない。白い雲が強い風に流れていく夏を前にして、俺は、一人、泣いた……」
               (おわり)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。