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anarchism - 不協和音 - 《小説》

「anarchism」 - 不協和音 -

美幸ちゃん もう一度名前を呼んで

布団の上から抱きしめた

大丈夫? どうしたの 
何があったの


優しく美幸ちゃんに話しかけた

布団の中で震えながら 

駄目言えない

だけど 誠 やっぱり 誠…


そう言った後 

布団から出てベッドに座り

涙を手で拭いながら 
小さな声で話し始めた


玲子が死んだ…  

そう言って俯いたまま震えていた

えっ 何それ嘘だ 嘘だ 

だって玲子さんは…


そう言いかけた僕に

倒れ込む様にしがみついた

玲子のご両親から連絡があったの 

2日前の夜に…

自殺だったって…嘘だ間違いだ 


だって美幸ちゃん
一緒に会いに行くって…


ねぇ 美幸ちゃん 

そうだろう美幸ちゃん

僕は何度も何度もそう訊き返した


玲子はずっと独りで
戦っていたんだよ

ずっと ずっと独りで 

見えない敵と

玲子は…玲子は…


僕の中で何かが崩れ落ちて行く 

激しく重苦しく


垂直に捲れかけた空を剥がしながら

引き摺り深い闇の中へ

金属音に似た不協和音の中 

僕は目を瞑り耳を塞いだ

泣き続けたふたり 


それでも朝はやって来る

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