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調和と同調の境界

 同調圧力を感じる社会にハイキック。

 調和は必要かもしれないが同調は違うだろうと、私は言いたいのです。

 今や存在さえ怪しい聖徳太子の残した偉業のひとつに「十七条の憲法」の制定があります。いえ、正確には聖徳太子こと厩戸王うまやとおうは存在していた記録があるものの、業績とされるものの全てに彼が関わっていたわけではなさそうだ…ということです。没後に持ち上げられて伝説的存在に昇格したというのが実際のところであろうと想像します。

 十七条の憲法の冒頭には「和を以て貴しとなす」とあって、和こそ重要であることが強調されています。これは『論語』を論拠としていると解釈されていて、今日に至るまで日本の文化背景に根ざした言葉のように感じます。

 しかしながら、いつの間にか「和」の意味が曲解されて、支配者や多数派にとって都合の良い使われ方をしているように思えてなりません。

 マイノリティを黙殺して多数派を肯定するような、全会一致の圧力の中で他の意見が出ることを悪とするような、それはあらゆる会議が形骸化して無駄なものに成り果てた日本社会の根底に流れるドス黒い泥のように感じます。

 組織に調和は必要ですが、同調は不要です。

 論語の一節にこのような言葉もあります。

子曰、君子和而不同、小人同而不和。

子路第十三-二十三

 君子は和して同せず、小人は同して和せず。
 和とは調和のことで、同とは同調のことと解釈します。すなわち徒らに同調するような言動は愚の骨頂で、自分の意見をしっかり持って他者に同調せず、しかし調和を目指して議論を行うことの重要性が説かれています。

 孔子の哲学は『論語』として弟子たちの手で編纂されましたが、後年になって解釈の差異が生じ、悪名高き儒教たる思想術として権力者たちに利用されました。絶対的な上下関係など孔子の教えには存在せず、年功序列だとか子が親に従うべきだとか、そんな思想は後付けもいいところです。

 国の政に関わらずとも、人間関係の中で生きる私たちが常に意識しておきたい言葉があります。

子曰、其身正、不令而行、其身不正、雖令付從。

子路第十三-六

 超訳すると「自分がちゃんとしてたら言わなくても人は動くし、自分がダメな感じだったら命令したって人は動かないぜ。」ということです。

 仕事にも家庭にも、育児にも言えることだと私は思います。


 自分の在り方は自分で決める。そこに確固たる意志があれば、混迷を極める世の中を乗りこなすことができましょう。

 孔子の哲学は理想主義的で現実に沿わないと、時の為政者たちが彼を政治の中心に置くことはなかったそうです。しかしながら只の絵空事だと棄て去ってしまうには、彼の哲学は余りにも惜しい。

 師と呼べる人と出会える確率の極端に低い今世では、過去に存在した思考の残滓を頼りに思索を進める時間があってもいい。そう思いながら、私は今日も『論語』の頁をめくります。

 仕事中に論語を読んでいていいのか…ですって?
 ええ、周りに同調する必要はありません。
 良い医療を提供するためには教養も必要ですから、これは自己研鑽の一貫です!



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方と貴方の大切な人たちの生活が、混乱する社会の中でも安全に巡り、小さな幸せを積み重ねていくことができますように。




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