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この大ニュースは、なぜ新聞の1面に掲載されないのか?ボクシング・井上尚弥選手が2階級4団体統一。好青年の繰り出すパンチは超一流

ある新聞を見て、わが目を疑った。大ニュースともいえる偉大な達成が1面に掲載されていなかったからだ。ボクシングのスーパーバンタム級で、井上直弥選手(30)が4団体統一を成し遂げた。2022年のバンタム級に続いての2階級での偉業だ。それでも新聞記事としては魅力がないのだろうか。私は井上選手の偉業は十分、1面ネタだと思うけれど。

26日に東京の有明コロシアムで行われた一戦。井上選手は世界ボクシング評議会(WBC)、世界ボクシング機構(WBO)のベルトを保持していた。

対する相手はフィリピンのマーロン・タパレス選手(31)。国際ボクシング協会(WBA)と国際ボクシング連盟(IBF)の王者だ。4団体統一戦は、世界が注目する好カードだった。

井上選手は破格力あるパンチで、4回終了間際にダウンを奪った。左右の連打が相手をとらえたのだ。

キャンパスに倒れたタパレス選手が何とか立ち上がると、観客席からは拍手喝采。まだ試合が楽しめるという喜びだった。「井上選手のKO劇はもう少し後で」という期待が明らかだった。

その後も井上選手ペースだったが、思ったよりも相手のディフェンスは強固だった。井上選手は手数を減らし、相手の勝気を起こさせようとする。向こうが攻撃に転じた時が狙い目と見たのだ。カウンターでとどめを刺そうとした。

そして10回。タパレス選手が距離を詰めてきてジャブやボディーを繰り出す。ここが勝機。そう感じた井上選手は、ワンツーを放ち、右ストレートを相手の顔面にとらえた。崩れ落ちるタバレス選手に立ち上がる力は残されていなかった。

10回1分2秒。井上選手がKO勝ちを収め、2階級4団体統一を達成した。この結果は翌日の新聞の1面記事にふさわしい偉業と思えた。米国のテレンス・クロフォード選手に続く史上2人目となる2階級での4団体統一王者となったのだから。

しかし、私が手にした新聞には、この偉業は1面だけでなく社会面にも掲載されることなく、スポーツ面だけの掲載だった。

メジャーリーグのスーパースター大谷翔平選手がMVPを獲得した時、将棋の藤井聡太棋士が名人、竜王など8冠を独占した時、いずれも新聞では1面で掲載されていた。

井上選手の今回の偉業が1面で掲載されないのは残念でならない。圧倒的な強さを誇る井上選手は「モンスター」と評される。しかし普段はストイックな好青年だ。

ボクシングには「やんちゃ」なイメージが付きまとうためか、国民的スポーツとは見なされていない。

しかし井上選手はインタビューなどでの受け答えもしっかりしていて、海外遠征でも土産物を買わないなど物欲もあまりない。すべては強くなるために何をすべきかを考えて、そのためにストイックなまでの猛練習に取り組む。これぞ、理想的な日本人の姿に見えるのだ。

ここ3戦、会場は収容人員1万5千人の有明アリーナで行われてきたが、チケット申し込みは10万件を超えて、プラチナチケットとなっていた。

来年の防衛戦では東京ドームでの開催が検討されている。実現すれば、1990年にマイク・タイソン選手とジェームズ・ダグラス選手以来34年ぶりとなる。1990年にはリング席が15万円と破格だった。

ストイックなモンスターの東京ドーム開催が実現すれば、それぐらいの価格で売り出されても文句はないだろう。そして、大舞台で行われる一戦が新聞の1面で掲載されてもおかしくないはずだ。

好青年が繰り出すストイックなパンチ。より多くの人が生で観戦し、翌日の新聞1面で堂々と飾られることを楽しみにしている。

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