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創造性を耕すクリエイティブWSのすゝめ |公立高校・改革プロジェクト

こんにちは、学生インターンの佐野真知子です。
2020年は、パラダイムシフトの真っ只中にいることを実感させられる1年でしたね。なんと、都立第一商業高校との協働も3年目を迎え、3カ年プロジェクトが一区切りの年となりました。そんな中、コロナウイルスの拡大という未曾有の事態が発生し、学校教育にも大きな影響をもたらしました。日本の学校教育で史上初となる全国一斉休校が決定するなど、今までは当たり前だった「学び」というものが根幹から揺らぐ事態となったのです。

コロナ禍で外にも出られず、人との出会いや社会とのつながりが作りにくい今だからこそ、相互性のある学びが生まれる「場」が必要だと私たちは考えました。
それならば、新しい世界や大人たちと出会い、生徒たち自身から何かが生まれるようなワークショップを作ろう!ということで、「CREATIVE WS」を行うことになりました。一言でいえば、動画や音楽づくりなど「つくることから探究する」授業です。
実際に取り組んでみると、生徒も大人もかなり余韻が残るようなWSとなりました。その場でしか起きない科学変化やそこから生まれる生徒の作品を見て、今まで以上に生徒の存在を強く感じたのです。今年最後の授業でも「一番記憶に残っている授業は?」と聞くと、ダントツでこのCREATIVE WSが人気だったくらい、彼らにとっても、印象深い時間だったようです。

つくる理由

CREATIVE WSのコンセプトはこちら。
指導要領改訂によって全国の高校で「探究」が始まるなかで、「どうしたら、やってみたいことを見つけられるだろう?」「やらされ感を抜け出せるだろう?」と、まさに子どもたちの"will"(内発的な好奇心や思い)をどうしたら引き出し、耕せるかが、大きな関心と悩みになっていると感じます。
私たちもこの6年間、"will"を引き出すPBLに取り組んでくるなかで、さらに深めていくには、言語ではなく「身体性」「非言語」からのアプローチに可能性があるんじゃないか!と感じるようになりました。

写真や映像、音楽をつくる探究プログラム

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具体的には、6名の若手クリエイターにご協力いただき、映像やグラフィックデザイン、音楽をつくる授業を、ゼロから考えていきました。生まれたワークショップはこんな6本です。

グラフックデザイン編:「みんなの好き!を伝えるZINEづくり。」
XDデザイン編:「オリジナルのECサイトをデザインしよう!」
映像編:「みんなの好き!を15秒の動画で表現。」
写真編:「写真を撮る」ってなんだろう。」
音楽編:「妄想番組のオリジナルジングル制作!」
音楽編:「街の音を採集して物語をつくる。」

たとえば、音楽編では日常で気になる音をiPhoneで録音してきてもらい、それを繋げていくことで自分自身を表現する音楽をつくったり、XDデザインでは自分の好きな物をうる妄想ECサイトのデザインを、Abobe Illustratorを使って手掛けたりしました。

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私の担当は「写真編」と「映像編」のワークショップでした。
生徒たちと、どんなものを「つくりたい」のか、何を大切にして欲しいのか、たくさんたくさんゲストと対話をしながら、授業を構成していきました。生徒の様子を見て、すでに作っていた翌週の授業案を1から作り直した回もありました。笑 

でもそれは、生徒の「好き」を自然に引き出したり、生徒なりの「ものの見方」というのをワークショップの中で生み出すには、とても必要な対話だったのだと思います。なぜなら、生徒たちの「視点」がこだわりを持ち、多様な姿で、浮き出てきたように感じたからです。

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「内省」から生まれる「新たな一面」

特に「写真編」では生徒が自分の作品を「内省」する時間を多く取りました。当たり前のようにこの世界には「写真」が存在するし、日常生活の中でも、「撮る」という行為は身近です。そんな「当たり前」を見つめ直し、自分が「写真を撮る」時に大切にしたい、視点とは?どんな写真を「お気に入り」とするのか?

じっくり見つめてみたことで、思いも寄らない生徒の一面をみることができたのです。これには普段生徒と関わっている私も驚きました。
生徒たちは、たとえば「今はこんな感想を書くのが正しそうだな」などと「空気を読んだ言葉」を紡ぐことが得意です。だからこそ生徒の文章を読むときは、生徒たちに「空気を読ませていないかどうか」ということを強く意識しました。
しかし今回は、ゲストの空気にのめり込みながらも、自分の表現したい言葉や文章を生徒たちは綴っていたように思います。きっと、ゲストの世界観に入った生徒たちそれぞれが、表したいと思う文章を書いていたからでしょう。

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想い溢れる「ラブレター」に

「動画編」では、「写真編」のように言語をあまり使わず、「動画」という非言語で生徒自身の「好き」を全面に表しました。
言葉なくとも伝わる、とはまさにこのことで、生徒たちの想いが詰め込まれたラブレターにすら感じました。動画の中身は好きなアイドルやアニメなどのサブカルチャーが多かったのですが、自分の動画完成度に満足いかない生徒もちらほら。「まだやれる!やりたい!」「もっとできた。」「こうすれば良かった」といった不完全燃焼感。
自分の「好き」を表現することの楽しさに気づいたり、いつかまた動画編集を思い出してやってみる生徒が現れたりと、このワークショップが一つのきっかけとなり、多様な副産物が生まれることが何より嬉しいことだなと思います。

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「探究の種まき」をしよう。

このワークショップを通して、私たち自身にもある考えが生まれました。
それは、クリエイティブWSは「探究の種まき」であるということです。先ほども述べたような生徒の「不完全燃焼感」や「物足りなさ」、自分の中の「意外性」に気づき、可能性を増やすことこそが、「探究の種まき」となっていくのではないでしょうか。
現に高校で行われている探究活動の大半は、研究ベースの探究です。既存の社会課題の解決や、SDGsなどを探究の課題とするのも悪いとは思いません。しかし、そこに「もっと学びたい」「もっとやってみたい」という気持ちが伴わなければ、当事者性のある学びにはならないのではないでしょうか。
そこでまずは「探究する」という「土壌」づくりにおける種まきが必要なのではないか?という考えに辿りつきました。実は今までも、非言語や身体性を通じた学びは大切だと考えてきましたが、それがなぜなのかはぼんやりしていた私たち。
しかし、このワークショップをきっかけに今まで「何となく」大切だと考えてきたことが確信に変わりつつあります。そんな新たな確信と、生徒たちの「つくる」エネルギーに感化され、私たちも何か生み出したい!という想いが募りました。

私たちも、つくっちゃいました。

そこで誕生したのが「クリエイティブワークショップの作り方」という冊子です。

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決してスタイリッシュさだけではない、泥臭くもあるワークショップの作り方を赤裸々に綴っています。生徒たちの生の声や、授業づくりのレシピなども載せていますので、ぜひご覧ください。
この冊子が一粒の種となって、色んな人々の元へ飛んで行けたらいいなと思っています。そこからまた「こんなことやってみたい!」「うちの学校・学級なら、こんなこともできそうだな。」とあれこれ膨らませてもらえたら、なんと嬉しいことでしょうか。ということで、こちらから誰でも閲覧できるようにしました!

こちらから閲覧できます!:『CREATIVE WORKSHOPの作り方』

「ワークショップの話を少し聞いてみたい。」「青春基地となんかやってみたいな。」という声も大歓迎です。色んな場所で、色んな人と出会い、「つくる」という体験を通して、新たな生徒の「一面」を見てみませんか?

最後に生徒たちの「できる」を無意識に私たちが狭めていたのかもしれない、そんなことを考えさせてくれるワークショップともなった今回。生徒たちの作品をみたり、聞いたりしていると、何だかこのままおいておくのはもったいない気がしてきました。そこで、生徒の作品をinstagramに投稿してみることに!(またまた副産物が〜)生徒のサウンドやジングルは冊子では聞こえません。ぜひこの機会に聞いてみてください。ここに載せましたのは、「商業生の一日」という題名のサウンドです。どんな音が聞こえますか?耳を澄ませて物語を想像してみてください。

〜あとがき〜
このワークショップをきっかけに私も動画を作ってみたり、podcastの制作をしてみたりと、さまざまな副産物が生まれました。これからもきっと、青春基地は何かを、誰かと「つくって」いくと思います。そんなエネルギーになるワークショップ。今後もどんどん深まりを見せながら、新たな挑戦をしていきたいです。
それではみなさん、またどこかでお会いしましょう!

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