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"教育系" note まとめ

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"教育系" noteのまとめです。
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2023年3月の記事一覧

大学生の間に読むべき本

「大学生の間にすべきことはなんですか?」、と同じくらいの頻度で聞かれる質問が、この「大学生の間に読むべき本は何ですか?」です。 この質問に回答する前に、お伝えしておきたいのは、この質問をされると実は結構嬉しい、ということなんです。なんでかというと、この質問を直にしてくれるということは、「あなたの言動に共感する部分がある」ということと同義だからです。 閑話休題。でもこの質問に答えるのは少し勇気がいります。なぜならそれは踏み絵のようなもので、どの本を紹介するかで自分の真価が試

WBCの決勝戦を授業で見せることの是非

先日、日本チーム(侍JAPANという呼び名を使うのは個人的には恥ずかしい…)の優勝に終わったWBCの決勝戦に関して、教員界隈のSNSでは話題になっています。 決勝戦は3/22の月曜日の午前中であり、小中学校は終業式前であり、この時間に授業があった学校も多いようです。 WBCを授業中に見せたことへの賛否その授業時に試合を生徒に見せた(という体で自分が見た)クラスが存在したようです。 このような否定的な意見がかなりの数、見られました。 (とはいえ「辞職してください」は言いす

【中高生・教員必見】「探究」の問いの立て方と、探究のサイクルの回し方

「探究」という言葉をよく聞くようになりました。2022年度から、主に高校で「総合的な探究の時間」という必修科目ができ、「総合探究」とか、「探究学習」などと呼ばれたりしています。小中学校でも、同様の授業をする学校が増えているようです。 これまでの小中高の教科というものは、問題と答えがセットで存在し、問題に対する答えの出し方を学ぶものでした。 それに対して「探究」とはどういう学問かというと、 ①問いを立てる ②それに対する論証をしたり、アイデアを考えたりする というものです。

工夫する楽しみ

これをつぶやいたら、「親自身が勉強する姿を見せなければ」「親自身が学ぶことを楽しむ見本を見せなければ」というご意見が複数。 これらのご意見、半分あっていて、半分は違うかな、という気がしている。そうとも限らない「反証」を結構見かけるから。 https://note.com/shinshinohara/n/nc21851445c94 「わしらは無学だから」と言って、実際学歴もなく、本も読まないご両親。そのもとで育ったお子さん、本はたくさん読むし学校の成績でも抜群。大学は旧帝大に

「ジェネレーター」に惹かれて社会教育に足を踏み入れたら、3年後に繋がった話

ジェネレーターという在り方を知っていますか? この在り方を「最近こんな本を読んだんだけどさ〜」と知人に教えてもらったのが学生の頃。 学校の先生になろうかどうしようか悩んでいたタイミング。 フィンランド留学中に、現地の先生に言われた、「教員の仕事は、子どもたちの好奇心の芽を摘まないことだと思う」という言葉がずっと心の中に残っていて、『まさにそんな在り方を体現しているのが、「ジェネレーター」なのでは!?』と、すごく衝撃を受けながら読んだことを覚えています。 『ジェネレーター的

『超「超」勉強法』潜在力を引き出すプリンキピア 全文公開 はじめに

『超「超」勉強法』(プレジデント社)が3月31日に刊行されました。 これは、はじめにの全文公開です。 はじめに 人間だけが「勉強」で運命を変えられる「超」勉強法の3原則  本書は、勉強の方法について述べています。 「どのような方法で勉強するか」は、きわめて重要です。正しい方法で勉強しないと、いくら時間をかけても良い成績をあげることができません。  例えば、「数学の問題の解法は自分の頭で考え出せ」と言われるのですが、この教示は誤りです。  初めて出会った数学の問題を、自分

六割主義

私は仕事には常に60%の力で臨んでいます。100%の力なんて絶対に発揮しません。私は60%で充分だと思っています。 こう言うと不遜に聞こえるでしょうか。 では皆さんは、100%の力を発揮していますか? 気を抜く時間は一切ありませんか? 同僚と冗談を言い合う時間とか、疲れてボーッとする時間とか、一切なく働き続けているのでしょうか。 そもそも、そんなこと可能なのでしょうか。 もう一度言います。私は60%の力で仕事に臨んでいます。60%で充分だと思っています。 比喩的に言

「一緒につくる」をどうやって生み出すか ~西川正『あそびの生まれる時』~

西川正『あそびの生まれる時 「お客様」時代の地域活動コーディネーション』ころから、2023年 2017年に出た『あそびの生まれる場所』の続編。 前著に引き続き、今回もとても面白い。 スタンスは、前著と同じ。「一緒につくる」をどうやって生み出していくか。 本書、「一緒につくる」にならず機能不全に陥っている例がいろいろと出てくるのだが、この描写が見事。 例えば、こんな感じ。 多くの人が「このやり方、なんだかなあ」と思っているのにそれが再生産されていくメカニズムを捉えている

撰銭令について(2023年度共通テスト本試験・日本史B)

 2023年度の共通テスト・本試験:日本史Bの大問3の問3(小問番号14),撰銭令について,いまだに正解が2つあるのではないかと言う人がいる。きわめて正答率が低い問題だったことは事実だが,高校日本史の標準的な知識だけをベースに史料を読んで解いたとしても解釈がわかれるタイプの問題ではない。  撰銭令については,高校教科書では次のような説明がなされている。  次に,掲載されている史料を見てみよう。  前提として,自分勝手に撰銭を行うな,と宣言したうえで,使用禁止の銭貨として

高1公共の学年末テストでChatGPTを用いた問題を出題した件

昨今、教育現場ではOpenAIが開発したChatGPTなどのGenerative AIとどう付き合っていくのかが話題に上がっていますが、私の担当する高校1年生の公共の学年末テストで、ChatGPTについての問題を出しました。 元々、ChatGPTが正式にリリースされてから、どのように教育に取り込んでいこうか、私自身色々と考えていました。試験に出すにあたっても、単にChatGPTという流行り、単語そのものを書かせても面白くない。また、ChatGPTについてどう思うか?など、生

歴史総合入門(7)2つ目のしくみ : 戦争が変わり、社会や国際秩序が変わる

■国際秩序の転換と大衆化 20世紀の初めからは、2つ目の「しくみ」がうごきだします。 18世紀後半にイギリスではじまり、次第に世界中にひろがっていった「近代化」のしくみも、同時進行で存続しますが、ある3つの変化をきっかけに、2つ目のしくみ(国際秩序の転換と大衆化)が作動する、というイメージです。 ■変化① 総力戦 1つ目の変化は、総力戦という、第一次世界大戦(1914〜1918年)にはじまるまったく新しい戦争の形です。 どのような点が新しかったのでしょうか? そも

「問い」のための種をまく:科学の流儀

今年2度目の紋別に行きました。街中の雪はほとんど融け、海氷の姿もすっかり見えなくなっていました。雪のない紋別は知らない街のようでした。 今回の目的は流氷科学センターでのワークショップです。小学生と一緒に「今年の夏の北極海の海氷面積がどれくらいになるか」を予想します。それほど簡単な内容ではありません。本来なら中高生と一緒にやりたいテーマです。参加者には低学年の子もいるとのこと…なんて無茶な。 でも、たとえ小学生が相手でも、決めたことをやるだけの「科学の真似事」で終わらせるわ

大学入試における推薦やAOの位置付け

ネットの掲示板等を見る限り、世間の方々が推薦入試やAO入試ーー今は学校推薦型選抜、総合型選抜と言うようになったようだがーーについて、だいぶ誤解があるような気がしている。 数十年前の一芸推薦などと呼ばれた、とにかく勉強しなくても何か一芸に秀でていたら合格する楽な受験、といったイメージのまま、今の学校推薦や総合型選抜を語っていることがあまりにも多い。 また、定員が常に割れていて死活問題になっている私立大学のそれと、難関私立大学や国公立大学のそれを一括りに語ろうという、無茶な論

”使える友達”は真の友人か? 『ひとくち哲学』で哲学思想をかじってみよう【試し読み】

プラトンの国家論から映画「ジョーカー」のニヒリズムまで。一口かじれば世界が変わる! 134にもおよぶ哲学の主要トピックを、わかりやすいピクトグラムと2~3ページのコンパクトな説明に凝縮した「哲学思想の入門書」が登場。『ひとくち哲学 134の「よく生きるヒント」』(ジョニー・トムソン、石垣賀子訳、早川書房)から、誰にでも身近なトピックを紹介します。 日常の哲学すばらしい哲学を耳にするのは、時に夜おそく、場合によってはグラスを傾けながら、誰かとなにげない会話を交わしているときだ