堀 裕嗣

「研究集団ことのは」代表。公立中学校教員。 新著『道徳授業で「深い学び」を創る』(明治…

堀 裕嗣

「研究集団ことのは」代表。公立中学校教員。 新著『道徳授業で「深い学び」を創る』(明治図書)/『アクティブ・ラーニングの条件』(小学館)

最近の記事

一人で思索にふけられる場所がある?

一人になりたいことがある。どうしても一人になって考えたいときがある。どうしても一人でなければ考えられないことがある。そんなとき、一人になれる場所が必要である。 物理的的に一人である必要はない。要するに、周りに人がいても構わない。だれにも話しかけられることがなく、だれにも邪魔されることもなく、周りに不愉快なノイズがない。それが条件だ。要するにだれにも煩わされることなく、一人で思索にふけられる場所である。何ものにも邪魔されずに一人で心ゆくまで考えられるのならどこでもいい。 近

    • 流される力

      他人に流されてはいけない。自分をしっかりもたなければならない。雰囲気に流されるのは恥である。あなたはそんなふうに感じていませんか? 例えば、よくあるのは、新卒として赴任したばかりの学校に「理想の教育とかけ離れている!」と感じたり、転勤したばかりの学校に対して「この学校は変だ!」と感じたりすることです。 私はこういう人に対して思います。 馬鹿を言うな。お前は何様のつもりだ。 あなたの「理想の教育」はほんとうに教育の不偏相なのでしょうか。あなたの「理想の学校」は前任校を基

      • 告知(2024.04.27現在)

        〈今後の予定〉 御依頼は下記日程以外でお願いします。 【定員20/満員御礼】 THE 生成AI時代~国語科授業改革セミナー2024皐月in札幌/日時:2024年5月11日(土) 09:10~16:50/会場:札幌市産業振興センター/参加費:3,000円(この他に別途昼食代が1,000円程度かかります)/登壇者:西村弦・冨樫忠浩・髙原隼希・太田充紀・髙橋和寛・有原賢治・藤倉大志・宇野弘恵・矢野宜利・髙橋拓也・大野睦仁・藤原友和・堀裕嗣 https://www.kokuchp

        • オレがオレが

          この時期、去年担任していた生徒の保護者から生徒指導上の相談が学校に入ったとする。自分が対応したい、と思う。例えば自分が学年主任だとしたら、組織論上は自分が対応しても構わない。しかし、それでは新しい担任を飛び越えて指導することになる。新しい学級は始まったばかり。長い目で見れば、新担任が対応したほうがいい。こうしたトラブルは新担任と生徒、新担任と保護者が関係を築くチャンスだからだ。自分が対応すれば、生徒も保護者も自分を頼るようになってしまう。理屈はそういうことだ。 それでも対応

        一人で思索にふけられる場所がある?

          教師は嘘つきでもいい?

          教師は嘘をつく職業だと言っても過言ではない。もしも教師がほんとうのことだけを子どもたちに語るとしたら、学校教育は成り立たなくなってしまうだろう。 きみはいくらやっても伸びないよ。人間には持って生まれた限界がある。なんだかんだ言っても長いものに巻かれるのが楽さ。どうしても合わない人ってのはだれにでもいるもんだ。生理的に受けつけない、そんな人に先生も幾人か会ったことがあるよ。馬鹿だなあ、男子ってのはだれだって性的にはお腹がぺこぺこの狼なんだぜ。女の子ってのはいつだって愛情の乞食

          教師は嘘つきでもいい?

          規範

          時速60キロ制限の道を70キロで走行していても、まず警察に捕まることはない。取り締まりをしていたとしても止められることさえない。高速道路で時速100キロで走るパトカーを追い抜いたとしても、止められることも拡声器で注意されることもない。少なくとも110キロくらいで追い越しをかけている場合には…。それどころか、時速60キロの道を60キロで走ると周りから邪魔者扱いされる。周りの走行の流れを滞らせるからだ。結果、運転免許を取得して数週間から数ヶ月経てば、ドライバーは法定速度を守ること

          頑張れば頑張っただけ成果が出る?

          僕のすべての実践理論はさぼるために生まれた。 もう少し正確に言うなら、自分の時間を確保するために効率的に仕事をしようと、あれこれ工夫しているうちに生まれたと言ったほうがいいかもしれない。 とにかく自分の時間が欲しい。本を読んだり思索したりする時間が欲しい。家で犬と戯れたり惰眠をむさぼったりする時間が欲しい。友人たちと馬鹿げた会話をしながら酒を酌み交わしたり、すすきののバーでお気に入りの女の子をからかったりする時間が欲しい。ときには家族と団欒の時間も欲しい。残業なんてしてい

          頑張れば頑張っただけ成果が出る?

          いじめ指導の三段階

          1.父性型教師と母性型教師 父性型教師と母性型教師はモードが異なります(拙著『教師力ピラミッド』明治図書)。父性型教師は社会的な規範を意識的・無意識的に大きく捉え、確固とした善悪の判断の在り方があるものと考えていて、それを指導基準とします。その指導基準はほとんど揺れることがありません。一方の母性型教師は社会的な規範よりもいま目の前にいるその子の精神的安定を第一義として、意識的・無意識的にその子に寄り添い続けます。もちろん、ここで言う「父性型」「母性型」は、男性であること、女

          いじめ指導の三段階

          サボる力

          オススメの力として、第一に「サボる力」などというものを挙げるのは不謹慎だと感じられるかもしれません。しかし、「サボる力」はとても大切なのです。 こんなふうに考えてみましょう。 あなたは勤務時間内にうまくサボることができますか? サボるためには仕事の在り方に余裕がなければなりません。いまサボったが故に、その分を取り返すために夕方から一気呵成に仕事をし、遅くまで残業しなければならないのではサボったことになりません。ましてやその分を休日出勤で賄うのでは本末転倒です。サボる時間

          サボる力

          〈迎えに行く言葉〉と〈したたり落ちる言葉〉

          一斉授業の教師の言葉はすべてが〈迎えに行く言葉〉でした。おいで、こっちにおいで、そういう言葉です。〈迎えに行く言葉〉ではなく、子どもに〈したたり落ちる言葉〉や〈あふれ出る言葉〉を求めると授業も生徒指導も変わります。そのときに教師に必要になるのは〈待つ言葉〉と〈戯れる言葉〉です。 授業においても学活においても、教師は無意識のうちに子どもたちをコントロールしようとします。言い換えれば、自分が子どもたちをコントロールできると思っています。それがうまくいかないと、腹を立てたり落ち込

          〈迎えに行く言葉〉と〈したたり落ちる言葉〉

          できる人は失敗しない?

          失敗しないことが「できる人」の条件であると考える風潮が世の中にある。 若き日の失敗を糧として頑張り抜き、遂に成功を収めたという人が世の中では人気がある。 違うな……と思う。「できる人」は失敗を失敗と意識しないのである。「できない人」は致命的でない失敗、つまりは取り返しのつく失敗でさえ致命的な失敗だと思って自らを卑下する。失敗を失敗にしてしまうのは、「致命的な失敗だと思って自らを卑下する態度」である。こうした態度に陥ったとき、人は「自分は失敗したのだ」と感じ、周りの人は「あ

          できる人は失敗しない?

          詳細な読解

          かつて、国語科の物語・小説の授業が、現在の読み物資料道徳の授業のように行われていた時代がありました。登場人物の言動からその心情を読み取り、なぜそんなことをしたのか、なぜそんな台詞を言ってしまったのか、その言動にはどんな意味があるのかと、子どもたち同士で議論しながら授業が進んでいきました。「主題」という名の「徳目」も、国語の授業で普通に取り上げられていました。 しかも、道徳は原則として単発一時間で授業が終わりますが、国語科では教材を場面に分け、それぞれの場面を一~二時間かけて

          詳細な読解

          優しさと技術と

          1.優しさと技術 必要なのは“優しさと技術”である。 「優しさのない技術」はいくら身につけても人を幸せにしない。子どもも、保護者も、同僚も、そして自分自身さえ。冷たい技術を振りかざす教師として揶揄される。「研究屋」「事務屋」「部活屋」「行事屋」など、古くから技術を振りかざすだけの教師は忌み嫌われてきた。 一方、「技術のない優しさ」は気持ちだけが先行し、優しさを機能させ得ない。子どもが困っているとき、保護者が迷っているとき、同僚が戸惑っているとき、共感を示すだけでは扉を開

          優しさと技術と

          答え

          生徒指導において教師が強く意識しなければならないことは、指導以前に「答え」を用意してしまわないことだ。ああ、この件はこういう風に処理すればいい。ああ、こういう事例ならここが落としどころだ。予め処理の方法や落としどころを準備して臨んでしまうと、対生徒、対保護者の対応にどうしても強引さが出てしまう。自分では強引でないつもりでも、人は無意識まではコントロールできない。言葉の端々、一瞬の表情、そういったコントロールできない領域に強引さを感じ取られてしまう。相手も自分と同じように感受性

          告知(2024.04.14現在)

          〈今後の予定〉 御依頼は下記日程以外でお願いします。 【受付開始/定員20/残席9】 道徳授業づくりセミナー2024卯月㏌帯広/いま、命を考える~東拓先生追悼セミナー/日時:2024年4月27日(土) 09:10~16:50/会場:とかちプラザ/会費:3,000円/登壇者:堀裕嗣・石川晋・宇野弘恵・千葉孝司・西村弦・加地耀・山河愛(他交渉中) https://www.kokuchpro.com/.../1e8ee328a666f9396f08e8dae5.../ 【定員

          告知(2024.04.14現在)

          遊び

          「ひろちゃん、あ~そ~ぼ!」 そんな声が聞こえて窓から顔を覗かせると、クラスメイトが三人、裏のベランダに集まって手を振っている。私が子どもの頃にはよくある光景でした。いつしかそれが「今日ゲームセンターに行こうぜ」になり、また時が経って「明日ディスコに行こうぜ」になり、更に時が経って「何月何日は呑み会ね」になっていきました。遊びに行くのに約束することが前提となったのは何歳くらいのことだったのでしょうか。どこかに子どもから大人へのイニシエーションがあったような気もしますが、正確