続・時代劇レヴュー⑭:鶴姫伝奇(1993年)

タイトル:鶴姫伝奇・興亡瀬戸内水軍

放送時期:1993年12月28日

放送局など:日本テレビ

主演(役名):後藤久美子(鶴姫)

原案:三島安精

脚本:杉山義法


日本テレビが毎年年末に放送していた「年末時代劇スペシャル」の第九弾にして、シリーズの最終作に当たり、シリーズ中12月30日、31日に放送されていない唯一の作品である。

また放送時間も大幅に短縮され、三時間ほどの作品となった。

物語は戦国時代前期の瀬戸内を舞台に、大三島の大山祇神社の神官である大祝氏越智家の姫で、伝説的人物である鶴姫の数奇な一生を描いたもので、女性が主人公であるのはシリーズ初である。

物語の原案となった三島安精(大祝家の末裔を称している)の小説は、その元ネタとなった資料も含めかなり問題の多い作品で、鶴姫も実在の人物ではなくあくまで伝説上の人物と思われるが(三島が鶴姫所用の甲冑と主張し、本作にも登場する大山祇神社所蔵の甲冑も、女性用甲冑ではないことがその後明らかになっている)、本作はそれをベースにして同シリーズのメインライターを務めて来た杉山義法が脚色し、瀬戸内の戦国絵巻に仕上げている(本作では天文年間が舞台と言うことになっている)。

主人公の鶴姫が伝説上の人物であるためか、同シリーズには珍しく随所でファンタジックな描写があったり、また主要人物は架空のキャラクタが多いが、あまりテレビドラマで描かれることのない戦国時代の瀬戸内を舞台にした作品としてそれなりの面白さはある。

とは言え、時間も短く、題材も微妙であるせいか、同シリーズの他作品に比べるとだいぶ見劣りがし、はからずもシリーズの斜陽を象徴するような作品となってしまっている。

主演には1991年の大河ドラマ「太平記」で、南朝方の若き武将・北畠顕家役を演じた後藤久美子が抜擢され、脇を固める面々には、森繁久彌、西郷輝彦、堤大二郎とシリーズの常連が並ぶが、個人的には三浦友和と西郷輝彦と言う、1987年の大河ドラマ「独眼竜政宗」でともに政宗の側近役として共演した両者(三浦は伊達成実役、西郷は片倉景綱役)がともに瀬戸内水軍の武将として出演しているのは興味深い(三浦は鶴姫の長兄・越智安舎、西郷は伊予の戦国大名・河野晴通を演じている)。

特に西郷は、出演シーンが極端に少なく、酒宴の席で三浦と両家の同盟について話し合う場面の出演シーンのメインなため、「独眼竜政宗」が好きなスタッフが三浦とのシーンのために敢えてキャスティングしたのではないかと邪推してしまう(笑)。


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