雑記:東京の史跡、その十(中野)

JR中野駅の目の前に建つ、コンサート会場などに使われることの多い「中野サンプラザ」の向かってすぐ左隣に中野区役所がある。

この区役所のあたりは、江戸幕府五代将軍徳川綱吉の時代に、所謂「生類憐れみの令」によって幕府が保護した江戸の野犬を収容した通称「犬小屋」(御犬囲、御囲とも)があった場所で、区役所の前にはそれをモチーフにした犬のオブジェ(?)がある。

「生類憐れみの令」の実態については、色々と議論があるようだが、それはさておくにしてもテレビや小説などで描かれるこの法令の凄惨さを微塵も感じさせないくらいのどかな像で、私がこの像を見に行った際には、親子連れと思しき人達が写真を撮っていて、子供の方は銅像の中の一体にまたがって遊んでおり、よりいっそうのどかな光景になっていた。

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さて、以下は余談。

綱吉が生類の中でも特に自分の十二支である犬を過重に愛護(?)したことは夙に知られているが、その綱吉がプライヴェートでも「犬好き(?)」だったことを物語る(恐らく)唯一の遺物が、日光の輪王寺に伝わっている。

それが、犬の形をした綱吉の愛用品と伝承される湯たんぽで、それを元に作られたレプリカが、「中野区立歴史民族資料館」に展示してある。

私はこのレプリカ自体は見たことがないが、この湯たんぽの実物と思しきものを数年前に偶然目にする機会があった。

静岡県浜松市の浜松市立美術館で開催されていた徳川家がらみの企画展で、輪王寺所蔵と書かれた湯たんぽが展示してあったのであるが、しかしその展示ケース前にあったキャプションには、綱吉ではなく家光愛用と書いてあった。

単純にキャプションの誤りなのか、あるいはもう一点考えられることとして、最初は家光の所有だったのが、家光の死後に息子である綱吉の所有となったと言うことなのか。

そう思って、湯たんぽを見ると、確かにこの湯たんぽ、犬と言われれば犬に見えるが、猫のようでもあり狸のようでもあり、要するに一見して犬以外の動物に見えなくもないのである。

この湯たんぽが、元々は浜松市立美術館のキャプションの言うように家光の所有品であったとすれば、湯たんぽが犬型である必然性はなくなってくるわけであるが。

ちなみに中野の資料館のレプリカの方は、下の写真のようにだいぶ実物をデフォルメして作ってあり、耳などは長く作ってより犬に見えるようにしているので、あまり参考にならない(写真にはほとんど移っていないが、その後ろに写真パネルで実物の湯たんぽが移っていて、そちらが私が浜松で見た湯たんぽと同じものであろう)。

そう考えれば、この湯たんぽは実際には犬型ではなく、後世の人が綱吉=犬と言うイメージからの連想によって、いつの頃からかそう伝わるようになってしまっただけにようにも思われるが、さて実際にはどうなのだろうか。

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