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残り香のなかで

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四半世紀以上の人生を歩んできた中であった、様々な出会いとそこから生まれた大切な愛おしい時間。 時の経過とともに色褪せていくのは仕方ないことだけれど、 記録として残しておきたくて… もっと読む
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#読む香り

父の作る角煮に泣いた話

父の作る角煮に泣いた話

今年で、実家を出てもう4年目になった。5月のゴールデンウィーク中にアマゾンで頼んだ商品が間違えて実家に届いてしまったので、父が用事のついでに自宅の最寄りまで届けに来てくれることになった。

私が実家に帰ればいいものの、当時は仕事の繁忙期と重なってしまって忙しすぎて時間が作れなかった。コロナの影響で在宅勤務であるにも関わらず、自分の生活がなおざりになっていて、冷蔵庫の中身が豆腐一丁とアボカド半分だけ

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プーさんの香り

5歳のころ都内の総合病院に入院した。父の転勤で海外に移住する2か月ほど前の出来事だった。父はすでに海外におり、日本には私と母の2人だけだった。

私が泊まった部屋は他の患者との共有部屋。タイミング的に私以外の4名は全員言葉が話せない乳飲み子だった。

母には大変苦労を掛けたと思う。引っ越しの諸々の手配をしなければならない一方で私は入院している。そんな中でも母は時間を作っては面会に来てくれた。

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ちょっと切ない石鹸の香り

ちょっと切ない石鹸の香り

今、私はアラサーの年齢域にいるが10歳よりも前の幼いころの記憶が断片的でありながらも鮮明に残っている。

当時の私は8歳。小学校1年生の時の担任の先生が第一子を妊娠されて、近所の病院で出産された。大好きだった先生の出産のお祝いをしたくて、お見舞いに行った。

その日は晴れていて先生が泊まっていた部屋には柔らかな光が差し込んでいた。窓は細く開いていて、アイボリーのカーテンが風になびいいていた。

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キャラじゃないけど好きな香り

キャラじゃないけど好きな香り

最近ジャスミンが気になっていた。

今、私が持つジャスミンに対する印象は、軽いか重いかといったら重めで、色の組み合わせでいうと黒×金とか濃い紫!とか、そんな感じ。
まったりとセクシーで甘く、重く、深い。

まだほかの香りとの比較がうまくできるほど香料に触れられていないけど、
いまの時点で持っている私のジャスミンに対する印象はこんな感じ。

単体で嗅いで、「ああ、いい香り!」と思う分には好きだけれど

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青春の香り

青春の香り

中学、高校とバレー部に所属していた。ご存知の方も多いと思うが、夏の体育館は地獄である。学生やコーチはみな、汗やら埃やらいろんなものにまみれて必死になって部活をしている。

活動を終え、制服に着替えるときに必ず欠かせないのが制汗グッズ。まずはシートで汗をふき取り、シーブリーズで「スース―感」をプラスする。人によってはスプレーで追い打ちをかける。しかし、狭い部室に10人とか、それ以上の学生が入るのにい

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初めての香水のはなし

初めての香水のはなし

初めて自分で香水を買ったのは中学2年生だった。今でも覚えている。人生で初めて降り立った竹下通りの香水専門店で偶然見つけたサムライウーマンのフォーエバーという香水。

レジで「これください」っていうとき、ドキドキした。店を出てからもドキドキは収まらなかった。紙袋から覗く小箱が愛おしくてしょうがなかった。耐え切れず竹下通りの入口付近にあるマックに立ち寄り、コーヒーを飲みながら20分前に買った香水を箱か

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