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『ゆりあ先生の赤い糸』は、出演俳優さんたちの力量あってこそ成立しているドラマだとようやく再認識できた気がしました

ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』について、これまでに何度かnoteで書こうと思ったことがありました。

でも、どうにもこうにも言葉がうまくまとまらない感じで、このままこのドラマについては結局何も書かずに終わるのかな?と自分では思っていました。

突然ホテルで倒れた夫・吾良。倒れたときに救急車を呼んでくれた青年・稟久は、実は夫の”彼氏”。さらに夫を「パパ」と呼ぶ二人の子供が現れて、その母・みちる(夫の”彼女”)が入院中のためゆりあはその子たちを預かるハメに。昏睡状態の夫の自宅介護を決めたゆりあは、”彼氏”と”彼女”に同居をしながら夫の介護を手伝ってほしいと提案。

このあり得ないぶっ飛んだ設定を、正直どう理解したらいいのか分からないままズルズルとここまで観続けてきました。途中ゆりあには”禁断の恋の相手”・優弥が現れたり、このストーリーは一体どこに向かっていくの?という感じでした。

大きく話が動いた昨日の第7話を観ながら、このドラマはキャストの俳優さんたちの力量があるからこそ成立しているドラマなんだとようやく再認識できた気がしたんですよね。そうじゃなければ、とっくに私の嫌いな言葉=「離脱」していたかもしれません。

ズルズルでも理解不能でもここまで観続けてこられたのは、キャストの皆さんたちの熱演によって「こんな"疑似家族"がいるのもありなのかも…?」と少しずつ時間をかけて説得させられてきたというか、いろんな疑問をねじ伏せられてきたというか、そんなことを強烈に感じたわけです。

ゆりあ役の菅野美穂。毎度なんだか不思議な役どころも、その圧倒的な存在感と演技力でいつの間にか魅力的に感じさせられてしまう凄いパワーの持ち主ですよね。夫の堺雅人ともども"最強夫婦"だと思います。二人とも少し浮世離れした感じがするところも(笑)。

「みんなまとめて愛してやる。」というキャッチコピーの通り、地味で平凡だった主婦・ゆりあの男前な生き様と底知れぬ力強さを演じ切れるキャストは菅野美穂しかいない!と今は感じています。

最初は本当に地味な雰囲気で「ああ、菅野美穂も年を重ねてきたのねー」なんて感じていたのですが、優弥と恋に落ちてからのゆりあが徐々に徐々に変貌していく様にさすが菅野美穂!と。

「おばさん、おばさん」と優弥の前でしょっちゅう口にするけれど、夫と別れる気があるのかないのか…みたいな話になったとき「嬉しいー!嫉妬してくれてるのー?」と優弥に抱きついたときの菅野美穂は本当に美しかった…あまりにも美しいそのオーラに驚愕したのでした。あえて女優という言葉を使わせていただけるなら、女優・菅野美穂恐るべし。

泣いたりわめいたり…その手の演技は菅野美穂はお得意ですが、今回のゆりあは感情の起伏が激しすぎて菅野美穂自身もかなり苦労したのではないかと感じています。

そんな菅野美穂を大きな愛で包み込むような受けの芝居でドラマを支えているのがみちる役・松岡茉優。

みちる役はとても難しい役どころだと思います。弱そうに見えて、一本芯は通っている…。そのさじ加減を松岡茉優はとてもうまく表現していると思います。『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』のときとは全然違う人間に見えますよね。

ともすれば小悪魔的で嫌味に感じられてしまいそうなみちるが、今はゆりあにとっても大切な存在になっている…二人の距離が自然に近づいていくその雰囲気は、松岡茉優の演技力のたまものだと感じました。みちるがゆりあを抱きしめるシーンは心が温かくなります。

稟久役の鈴鹿央士。彼もいろんな役どころを演じてきて、今や若手俳優の中でも引っ張りだこですよね。今回の稟久は吾良をひたすら愛して尽くしながらもゆりあやみちるに対しては不満を抱えて不愛想に振る舞う…これまでにあまり彼がやったことのない役どころだと思います。

「こんな感じもできるんだー」と私は今回新たな鈴鹿くんを見た想いです。伸びしろしかないのでこれからの鈴鹿くんも楽しみです。

そして、吾良役の田中哲司もセリフがほぼない寝たきりの演技は大変だったと思いますが、表情だけで吾良の「喜び・悲しみ・苦しみ」…それをきちんと表現していたのはさすがでした。

すでにしゃべることもできるようになっていた吾良がなかなかそれを言い出せずに、ゆりあが築き上げた"疑似家族"たちを嬉しい想いで静かに見守ってきたというのもなぜだかジーンとしてしまいました。考えたら、かなりひどいヤツなんですが(笑)。

そしてなんと言っても優弥役の木戸大聖くん。いやー、あの笑顔に惚れない人はいないでしょう(笑)。ゆりあが年齢を超えて恋愛感情を抱く相手役って魅力がなければそれこそ成立しないと思いますが、木戸くんが優弥だから観ていても納得できる感じがする不思議な魅力のある俳優さんですね。

…こんな感じで、第7話にしてようやくこのドラマのことを理解し、好きになれた気がしています。こんな終盤までもんもんとし続けるドラマもあまりないので(笑)、橋部敦子氏の脚本はやっぱりすごいなーと感じています。

残りあと数話ですが『ゆりあ先生の赤い糸』の世界観にどっぷりと浸って、この"疑似家族"の行方を見守りたいと思います。

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