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人の死を理解するということについて改めて考えさせられた、ドラマ『リエゾン~こどものこころ診療所~』最終章

昨日最終回を迎えたドラマ『リエゾン~こどものこころ診療所~』。最後まで人の心に優しく寄り添う素晴らしいドラマでした。ラスト2話で描かれた親子のエピソードは、最終章を飾るにふさわしい深い内容でした。


3か月前に母親を事故で亡くしたASD(自閉スペクトラム症)の優実。突然妻に旅立たれて、仕事に慣れない子育てに憔悴し切っている父親。父は娘・優実が母が亡くなってから泣くこともなく、母を亡くしたことを理解できているかどうか分からない。

クリニックの院長佐山は自らが優実と同じASDであり、同じ歳の頃同じように母を亡くした経験を語る。人の死を理解するのは個人差があるので、焦らず見守るよう父に伝える佐山。

ところが優実が弟を泣かせてしまい、そのことで父に叱られると感情が爆発し母の遺影を床に投げつけてしまう優実。父は思わず優実に手をあげそうに。その後父がうたた寝をしている間に優実は家を出て行ってしまう。

母に会いたくて遊園地に行こうとしていたところを保護された優実。なぜ遊園地で母に会えると思っていたのか?

佐山のクリニックでやっている同じような境遇の人たちが集って自由に話したり交流する『グリーフケア』に親子で参加した時、母親を亡くしたある男の子が「お母さんを亡くしました。お母さんはお化けになりました」と言ったその言葉を優実は覚えていて、遊園地のお化け屋敷に行けば母親に会えると思っていたことが判明。

佐山は自らが母の死を正確に理解したのは、クリニックの前院長である叔母・りえから母はもうこの世にいないこと、二度と会えないことをきちんと伝えられたからこそであったことを思い出す。その上で父親に母の死がどういうことなのかを優実にきちんと理解させた方が良いと諭す。


この時佐山のセリフに「人が亡くなるとお化けになるとかお星さまになるとかそういうことではなく、きちんと死というものを理解させた方がいい」というような言葉があったのですが、この時昔の記憶が蘇りました。

日航ジャンボ機墜落事故で亡くなった方が同じマンションにいらっしゃいました。一番下のお子さんがまだ小さかったのですが、事故の直後にマンションの外で友達と遊んでいた時に「パパはお星さまになってお空にいるんだって!ママが言ってた!」と無邪気に友達に言う声が聞こえてきたことがありました。

それを聞いた私は思わず涙ぐんでしまいました。その子の母親は父親の死をまだその子が理解することはできないだろうとそういう説明をする選択をしたわけで、そのこと自体決して間違っているわけではないと私も当時は思っていました。

私自身が人の死を初めて認識したのは父方の祖父が亡くなった12歳の頃で、もちろんその時明確に人の死の意味を私は理解できたけれども、もっと小さい頃ならどう自分の中で昇華させることができたのか正直分かりません。

今回ドラマでは親子3人で遊園地に行った時、優実と弟に対して父親がお母さんはお化けになってお化け屋敷にいるわけでもないし、もう二度と会いたくても会えないということを誠実に伝えました。優実はその時初めて人が亡くなるということ、死とはどういうことなのかを優実なりに受け止めて涙を流すわけです。それ以来優実は父に言われた通り、母の遺影に手を合わせるようになりました。

もちろん100%ではないかもしれないけれど、例えばADSの凸凹を抱えている子供であっても、人が亡くなってこの世からいなくなってしまうということをその子なりに理解することはできると思うし、それはその子の心の成長にとって必要なプロセスなのではないかと改めて感じさせられたのでした。

発達障害(相変わらず障害という言葉を別な言葉に置き換えて欲しいと思っていますが)の子供だからこうだろう、ああだろうと大人たちが勝手に予測して判断してしまうことの中にも間違っていることがあるかもしれないし、どんな子供であれ、その可能性は無限大であると信じていたいと思います。

存続が心配された「さやま・こどもクリニック」は、凸凹を抱えた子供たちにずっと寄り添ってくれる心強い存在としてあり続けることになりました。ADHDを抱えた研修医・志保は「佐山記念総合病院」で3年間後期研修をすることになり、それを終えたらきっと「さやま・こどもクリニック」に戻ってくるのでは?という明るい未来が想像できます。

「私なんかが児童精神科医になれるか不安」と言う志保に対し佐山は「私なんかと言うのはやめましょう。あなたにはあなたにしかないものがある」と告げます。

この「あなたにはあなたにしかないものがある」という言葉、とても素敵な言葉ですよね。これから先自信を持って前に進んでいける、いつも背中を押してくれる凄いパワーが秘められた言葉だと思います。

「さやま・こどもクリニック」に通う子供たちも含めて、全ての子供たちに「あなたにはあなたにしかないものがある」と、このドラマはそう優しく語りかけてくれていたような気がします。


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