子どもの成長祝う産着などに、強さの象徴の軍事関連絵柄ー軍事と生活が一体の時代示す
メリンスなどの生地に、車や飛行機、都会の風景や子どもの遊びなど、さまざまな柄を組み込んだ「変わり柄」の布が多数作られました。主には赤ちゃんの産着や小さな子供の綿入れ、あるいは羽織の裏地にしたものもあったようです。
ここでは、戦時柄に絞って収蔵品を紹介させていただきます。戦時柄は、軍艦や爆撃機、戦車といった兵器や、武装した子供の姿をコミカルに、あるいは写実的に表現したものを指します。年代については特定できませんが、登場する兵器の種類などから、満州事変前後あたりから太平洋戦争初期ごろまでが中心だったと推測します。このころは、七五三で将校や水兵の姿で参拝し、成長を願う姿も見られています。
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こちらは、産着とみられます。綿がしっかり入っています。戦争ごっこの子ども、兵器のおもちゃ、それとよく一緒に登場する犬と、戦時柄の要素が詰まっています。
こちらも産着ですが、夏場に生まれた子供のものでしょうか。おそらく家庭にあった着物や端切れを使ったのでしょう。本体は薄手の布、そして両腕が戦時柄で、えりもとは別の柄の布です。せめて少しでも軍事色を付けて、強い子に育つようにと思いを込めたのでしょうか。
参考までに、こちらは七五三用の水兵服。作りがしっかりしており、裕福な家庭で用意した雰囲気があります。
着物の完品は数少ないですが、布地の一部は、比較的入手できます。完成品ではないので、絵柄を見るには都合が良いです。完成のイメージをしながら、こちらの2種類の端切れをみていただければ幸いです。
下写真は、戦場をイメージした戦時柄。子供の姿が出てきません。
こちらは海軍と陸軍を一緒にしたものです。描かれている軍艦は重巡洋艦「高雄型」で、1932(昭和7)年完成なのでそれ以後のものと分かります。
こちらも陸海軍を一緒にデザインしてあります。装甲車と軍艦はかなりリアルな感じです。
当時の日本は戦争で負けていない(シベリア出兵は引き揚げ)という国民の思い入れからすれば、軍隊にあやかって強い子に育つよう、親の気持ちも、身内に普通に兵隊がいたり、街中を歩いていたりした当時とすれば、当たり前のことだったでしょう。こうした環境の中にあれば、軍隊へ親しみを持ちこそすれ、反発する気は出にくかったと思われます。
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